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2015年12月25日 VOL.044

撮影監督 ダン・ミンデルが語る

― 映画『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』

“The Force is With Film!”

The Force is With Film! Dan Mindel on Star Wars: The Force Awakens | Graphic Communications

Star Wars: The Force Awakens. L to R: Chewbacca (Peter Mayhew) and Han Solo (Harrison Ford). Ph: Film Frame ©Lucasfilm 2015

「スター・ウォーズ」シリーズというポップカルチャーの巨獣を引き受けるうえで、監督のJ・J・エイブラムスと撮影監督のダン・ミンデル(ASC、BSC)は、シリーズの最初の3作品、『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(1977年、撮影ギルバート・テイラー BSC)『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』(1980年、撮影ピーター・サシツキー ASC、BSC)『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』(1983年、撮影アラン・ヒューム BSC)と調和した作品を作り上げたいと考えました。

 

Director JJ Abrams and Dan Mindel, ASC, BSC on the set of Star Wars: The Force Awakens ©Lucasfilm 2015

 

エイブラムス監督と2009年に「スター・トレック」シリーズを成功裏に復活させたミンデルは、「ギル・テイラーは非常にフォーマルな英国スタイルのアプローチを最初の作品で定めました」と語ります。「J.J.は、もし可能なら初期のレンズを探し出せないかとさえ私に聞きました。明らかにフィルムストックは変わっていますし、デジタル インターメディエイト(DI)は進歩しています。最初の3作品のルックや感覚を踏襲するため、私はパナビジョンを訪ねて、我々の設計したスペックのレンズセットを製造するように頼みました」

 

大規模なテストで、彼らは正しい“レシピ”を開発しました。それはコダックのフィルムストックと組み立てなおした古いアナモフィックのガラスが主要な“原材料”となったのです。

 

「ちょうどその映像を初めて見たところです。ファンタスティックな仕上がりでした」とミンデルは語ります。「フィルムの表現をフル解像度で見ることは信じがたいほど素晴らしいことです。私は最近、他の作品をデジタルで撮影しましたが、それとフィルムとではできることに非常に大きな違いがあります。フィルムは今の基準に照らしてみても非常に高度な技術だと言えます。私の目が見た通りに映像を捉えますが、それはデジタルカメラでは非常に難しい何かなのです。フィルムはより多くのものを見ています。私にとってそれはゴージャスで驚異的なものです」

 

状況に応じてミンデルは、コダック VISION3 500T カラーネガティブフィルム 5219、250D 5207、50D 5203の3タイプのいずれかを使用しました。例えばアブダビの砂漠ではほとんどを250Dか50Dで撮影し、また、イギリスの曇った屋外では500Tを使用しました。

 

Cinematographer Dan Mindel, ASC, BSC on the set of Star Wars: The Force Awakens ©Lucasfilm 2015

 

「初期の作品を作った時、撮影監督たちが常に戦っていたものはコントラストでした」とミンデルは語ります。「フィルムの寛容度も狭かったし、黒かそうでないかのどちらかで、ローコントラストフィルターが流行っていました。我々が今使っているフィルムはDIに向けて特別に設計されたストックで、明るいところから暗いところまで広大なレンジがあり、シャドウから多くの情報が引き出せます。超軟調なライティングでハイコントラストのルックを作り出すという、かつて彼らが行っていた方法を模倣しようと思ったのです。イギリスでの撮影では、この軟調なライティングを熟知したイギリス人の照明技術者がいたので非常にうまくいきました」

 

Star Wars: The Force Awakens. Ph: Film Frame ©Lucasfilm 2015

 

ミンデルは作品を二つのはっきりしたセクションに分割しました。英雄の反逆者に注視したシーンでは、レトロCシリーズのレンズで撮影し、ほぼ組み込まれているディフィージョンで温かくソフトな感じを表現しました。極悪の新秩序のシーンはパナビジョンのプリモで撮影し、より硬く、冷たく、寛容のないルックを作り出しました。いくつかのシーンを構成する砂漠の屋外のシーンやプレートの撮影はIMAXフォーマットで行われました。最終的なアスペクト比は全編2.39:1です。

 

Star Wars: The Force Awakens. Ph: Film Frame ©Lucasfilm 2015

 

フィルムメーカーたちは、代わりの人形やロボットが使えたり実物が使える場合、また、カメラ内での視覚効果が可能な場合などはCGによる視覚効果を避けました。「我々の素朴なライティングの技術やフィルムが持つテクスチャーによって、人物や傷のついた物体のクローズアップを撮影でき、それらが素晴らしく滑らかな仕上がりとなります」とミンデルは語ります。「多くのフィルムメーカーがこの映画を観ると思いますが、電子的なスタイルではない、より職人的で似たような何かを成し遂げたいと思うはずです。私には、それはとても長い間失われていたものだと思います」

 

「我々は多くを物理的に行い、フィルムがそれを保証しました」と付け加えます。「長い歴史を持ち、膨大なファンが存在するこのような映画を製作する者に課せられた責任の一部だと思っています。シリーズの完全性を維持することはまさにJ.J.からの指令だったのです」

 

ポストプロダクションでミンデルは、FotoKemとCompany3とともに仕事をしました。DIはステファン・ソネンフェルドが担当しました。「過去25年間、FotoKemと仕事をしています。1ショットが犠牲になるような事故やラボの問題はかつてありません」とミンデルは述べます。「総じてディリーはおよそ3日間で完了していました」

 

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撮影セットからの露光されたネガはロンドンのCompany 3に送られ、デジタル化されたディリーが作成され、パインウッドに送り返されました。朝、ミンデルは映写された映像を見てカラリストと話し合いました。クルーが撮影を再開するまでに映像は色補正され、編集のためAvidにロードされました。「私にとっては効率的なワークフローでしたし、フィルムで撮影して、効率的にデジタルのパートから映像を取り出せることが実証できました」とミンデルは語ります。

 

ミンデルは、フィルムの将来について次のように見解を述べています。「間違いなくルネッサンス(復興)が起こると感じています。コダックは自ら組織再編していますし、これからよりたくさんのフィルムを販売するつもりだと思います。離れ過ぎた人々は引き返して、このフォーマットで仕事を続けることに非常に興味を持っています。我々の責任は、若い世代のフィルムメーカーにどう使いこなせばいいかを教えることです」

 

(12月11日発信 Kodakウェブサイトより)

 

『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』

 公式サイト:http://starwars.disney.co.jp/movie/force.html

 予告映像

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