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2016年5月31日 VOL.053 

コダック映画用フィルムの復興を示したカンヌ2016

国際的なアーティストや映像業界の投資が

古典的メディアに新しい命を吹き込む

第69回カンヌ国際映画祭が5月22日(現地時間)に閉幕しました。フィルムで撮影された作品が主要部門を軒並み受賞し、フィルムの復興が顕著に目立った結果となりました。

最高賞のパルムドールにはケン・ローチ監督の『I, Daniel Blake』(撮影:ロビー・ライアン、35mm撮影)、グランプリにはグザビエ・ドラン監督の『It's Only the End of the World』(撮影:アンドレ・ターピン、35mm撮影)、審査員賞にアンドレア・アーノルド監督の『American Honey』(撮影:ロビー・ライアン、最高賞とダブル受賞、一部35mm撮影)、監督賞にオリビエ・アサイヤス監督の『Personal Shopper』(撮影:ヨリック・ル・ソー、35mm撮影)が輝きました。また、批評家週間の長編コンペ部門作品賞『Mimosas』と2位の『Albüm』も、それぞれスーパー16と35mmで撮影された作品でした。 

この映画祭期間中にコダックがリリースを発行しましたので、以下にその抄訳をお届けします。

カンヌ発、2016年5月18日 ― 真のフィルムの復活です。フィルムで製作する作品への投資が増加したのみならず、2016年度カンヌ国際映画祭ではコンペティション部門の4作品を含む複数のプレミア作品がコダックフィルムで撮影されており、フィルムが現在も有効なクリエィティブの選択肢であるだけではなく、再び繁栄しだしたかのような瞬間を記録しました。

米国アカデミー賞受賞監督であり、2016年カンヌ映画祭の審査員でもあるネメシュ・ラースロー氏(『サウルの息子』、コダック35mm映画用フィルムで撮影)は、「映画のマジックは職人的な技にかかっています。真のフィルムは心を動かし、観客にマジックをもたらしますが、デジタルビデオではそうはいきません。逆行するステップなのです。私は新しい世代がフィルムで撮影することの意味を理解しているのか確認したいのです」と語りました。

また、高い評価を受けている監督、ジェフ・ニコルス氏は、コダックの35mmフィルムで撮影した『LOVING』のプレミアで7分間のスタンディングオベーションを受けましたが、「私は、コダックが存在してフィルムに全力を傾けていることを非常に嬉しく思います。フィルムで撮影することは、私の知る映画を作る最良の方法です」と語りました。

ニコルス氏に加え、今年のコンペティションには、オリビエ・アサヤス氏、グザビエ・ドラン氏、是枝裕和氏、ケン・ローチ氏など、コダックフィルムで撮影された著名監督の新作が出品されました。

コダックのコンシューマー&フィルム事業部プレジデントであるスティーブ・オバーマンはこう述べています。「我々の戦略の最初のフェーズは、メジャースタジオからフィルムを使用するという確約を取りつけること、フィルムが持つユニークなマジックを伝えるうえで先進のクリエィティブな才能と関わること、業界の主要なベンダーと提携すること、という3つからなるものでした。そしてそれは見事に機能しました。我々は上手く軌道に乗ったのです。ヨーロッパ単独で見ると、35mm映画用フィルムの売り上げはここ12ヶ月で倍増となっています」

 

一方、コダック映画部門のバイスプレジデント、アニー・ハッベルはこう語ります。「コダックは映画業界に対して責任を持っていると自覚しています。とりわけ芸術分野にいるアーティスト達に対してです。我々が優先すべきことは、フィルムで撮影することが容易であり、そのオプションをすぐに利用できる環境を確実なものにすることです。それは、ハリウッドから独立プロ、学校、芸術機関に至るまで、国際的なインフラを包括的にサポートすることを意味しています」

 

インフラへの投資

コダックは、映像製作環境や主要マーケットにおける一貫した高品質のフィルムサービスを提供するために戦略的な投資を行っています。今年後半、コダックは、35mm、スーパー16、スーパー8のフィルム現像とスキャニングサービスを提供する映画用フィルムラボ(現像所)をニューヨーク市に開設・操業する予定です。

 

また、世界各地で映画用フィルムの現像を維持できるようにパートナーと協業しています。ロンドンでは、メジャーによるフィルム製作の大幅な増加が見込まれる地域をカバーできるよう、65mmのフィルム現像にも対応できる設備に投資を行っています。昨今ヨーロッパは、スター・ウォーズシリーズの製作が行われている英国をはじめ、35mmや16mmのほかに65mmを加えた様々なフィルムフォーマットでメジャー作品の撮影が盛んに行われています。

 

成長の動き

これらの動きは、音楽のレコードや紙に印刷された本、撮影フィルムに至る、“レトロテック”なメディアの復活、つまり、世界的なアナログ・ルネッサンスへの寄与を意味しています。

 

2015年には約100本のメジャー作品がフィルムで撮影されました。(『さざなみ』、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』、『マネー・ショート 華麗なる大逆転』、『ブリッジ・オブ・スパイ』、『キャロル』、『ヘイル、シーザー!』、『ヘイトフル・エイト』、『JOY』、『007 スペクター』、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』、『スティーブ・ジョブズ』、『ジュラシック・ワールド』、『Trainwreck』の他多数)

また最近では、フィルムで撮影された超低予算映画の目覚ましい復活も見受けられます。サンダンス映画祭での傑作、JT・モルナー監督の『OUTLAWS AND ANGELS』、デニース・ホーク監督の『TOO LATE』、テッド・マーカス監督の『LIKE LAMBS』、これら3作品はフィルムで撮影され、プリントフィルムで上映されました。ジョン・トラボルタ、イーサン・ホーク出演のタイ・ウエスト監督の『IN A VALLEY OF VIOLENCE』もフィルムで撮影され、サウス・バイ・サウスウエスト映画祭で大ヒットとなりました。

TVシリーズの『ウォーキング・デッド』はスーパー16で撮影されており、2015年にケーブルTV、ソーシャルメディアで最も人気のあった作品です。また、アデルの記録破りのミュージックビデオ『HELLO』、ビヨンセのビジュアルアルバム『LEMONADE』の多くがフィルムで撮影されたように、メジャーなアーティストもフィルムに乗り換えています。先月、ポール・トーマス・アンダーソンが監督したレディオヘッドの新しいMV『Daydreaming』は、世界中の劇場で上映するためにその35mmプリントが搬送されました。

最近のコダックとキックスターター(クラウドファンディングによる資金調達手段を提供している米国の民間サイト)とのパートナーシップは、フィルムで作品を撮りたい新進の映画アーティスト達からわずか2週間で300を超えるリアクションを獲得し、今年のスラムダンス映画祭と連動したスーパー8の映画祭では550作品の応募がありました。

国際的なスーパー8のコンペティション「Straight8」は、5月18日にカンヌ映画祭の一環としてシネマ・レザルカドで上映され、6月にはロンドンでも上映されます。今年1月に行われたコダックの新しいスーパー8カメラのアナウンスは、業界だけではなく一般消費者の琴線にも触れるものとなり、ラスベガスで開催されたCES(コンシューマー エレクトロニクスショー)での発表初日には、ソーシャルメディア上でコダックのスーパー8カメラがイベント自体を凌駕することとなり、5000人以上が事前購入予約に登録しました。

 

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