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2016年 11月 17日 VOL.062

映画『ガール・オン・ザ・トレイン』
― 女性撮影監督シャルロッテ・ブルース・クリステンセンがモダンスリラーにフィルム撮影を選択

主演のエミリー・ブラント © DreamWorks Pictures

デンマークの女性撮影監督シャルロッテ・ブルース・クリステンセン(DFF)は、ドリームワークス社のサイコスリラー『ガール・オン・ザ・トレイン』の描写に唯一適しているのは35mmフィルム撮影だと考えました。

 

同名のポーラ・ホーキンズによる2015年のベストセラー・デビュー作に基づく『ガール・オン・ザ・トレイン』は、監督テイト・テイラー、脚本エリン・クレシダ・ウィルソン、製作ジャレッド・ルボフ、マーク・プラットによって作られました。主演にエミリー・ブラント(レイチェル)、レベッカ・ファーガソン(アナ)、そしてヘイリー・ベネット(メーガン)、共演にジャスティン・セローとルーク・エバンスを擁し、最終的に自身の人生に衝撃を与える失踪事件の捜査に巻き込まれたアルコール依存の離婚女性を追ったものです。

撮影監督 シャルロッテ・ブルース・クリステンセン(DFF)
Credit: 2016 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC

「映画『ガール・オン・ザ・トレイン』は美しい背景を伴う心地よい筋書きではありません。それは本当に乱暴で時として不快なものですが、監督とプロデューサーは最大の視覚的効果を伴う徹底した現代のスリラーとして描きたかったのです」とブルース・クリステンセンは打ち明けます。「その現代的で都会風の最新ベストセラー小説に基づくお話は、明らかに直ぐさまビデオ撮影を選択するように思われました。でも私は別の考えを持っていて、正にスタート時点から監督、そしてプロデューサー達と心を割ってそれを伝えたのです」

Credit: Barry Wetcher © DreamWorks Pictures

彼女によると「彼らは作品を通して、特にレイチェルのキャラクターへのクローズアップと共に主観的な映像を望みました。このことが意味するのは、役者に対してレンズが非常に近いところにあり、それは顔から1フィートにも満たないということです。エミリーは自然な美しさを持っていますが、この映画での彼女のルックは、やせ衰え悩み疲れ唇は荒れた、赤鼻で酒飲みのシミだらけな顔です。もちろんそのためにはメイクアップに多くを必要とすることは分かっていました。ビデオによる撮影ではセンサーによるシャープネスさが、容赦ないイメージと必要以上にくっきりした結果を生み、それがポストプロダクションにおけるかなり大きな時間的な迂回となる修復作業を生じさせます」

 

「私はフィルムこそがずっと寛大に、イメージを容易に描写できると説得しました。セルロイド(フィルム)は顔と感覚のテクスチャーを得る正攻法なよい方法で、映像的混じり気のなさがあります。光はレンズから生じ、素直な映像言語を支えます。これは映像製作の素直な要素であり、撮影したものに後からその映像品質を操作するために奮闘しなければならないという意味ではなく、自動的にフィルム撮影によって完璧なスタートポイントを得ることが出来るのです」

 

ブルース・クリステンセンは1:1.85のアスペクトレシオで、アリカムLTカメラとツアイス・マスタープライムレンズで撮影しました。「私はカメラを通した光が好きなのです。フィルムカメラを使ってアイピースを通して見た時、どのように照明が機能しているか知ることが出来ます。これはモニターや電子ビューファインダーを通して得るビデオの世界と比べて遙かに望ましいことなのです。私の照明スタイルは一つの方向を主体にしてとてもシンプルにするように心がけていて、このシンプルさによってはっきりしたキャラクターの人物像を伝えることが出来るのです」

撮影監督 シャルロッテ・ブルース・クリステンセン(DFF)

Credit: 2016 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC

彼女は4種類のコダック VISION3 フィルムを2015年から16年にかけての冬の期間、ニューヨーク市、ホワイトプレーンズ、ヘイスティングス・オン・ハドソン周辺それぞれの場所で撮影状況に合わせて選びました。

 

「日中の屋外撮影では適正な光がある限りコダック 50D 5203を使いました。それはとてもシンプルで美しく、カメラの前の状況や事実に忠実で素直なフィルムです。250D 5207はどんよりとした冬の日や特定の日中の室内で、とてもうまく表現出来ます」

スコット役を演じるルーク・エバンス © DreamWorks Pictures

「200T 5213も色の再現にとても忠実で、もちろん私のお気に入りです。電車内の暗いグリーンとブルーの蛍光灯照明や、レイチェルの家のより家庭的な色、そしてアナの家のぼんやりした暖かさのように、その違いとダイナミックなインテリアの色と幅を必要とする場合でも完璧に支えてくれます。暗闇はこの映画の大きな要素で、500T 5219はナイトシーンにおいて、フレーム内に多くの黒が占めることによってサスペンスを増大させることが出来ました。時としてこれは役者の目の中のほんのちょっとしたハイライトを残し、観客に彼らの心の中を直接見せることにもなりました」

 

ブルース・クリステンセンは映画の中で、女優達のそれぞれの状況に合うようにカメラの動きを計算しました。

Credit: Jessica Miglio © DreamWorks Pictures

「レイチェルは疲れ果て、彼女の世界は不安定です」とクリステンセンは言います。「彼女は真実や偽りが何であるかよく分からず、列車から見えた隣人に夢中で取り憑かれています。彼女の心の状態を伝えるために、ワイドレンズと手持ち撮影を多用しました。対照的にメーガンが関わるシーンではもっと柔らかです。彼女は過去から逃げ出していて、私はステディカムの流れるような世界が彼女の状況に適していると感じました。アナが小さな赤ん坊と共に室内で閉じ込められ、不幸なジレンマに身動きが取れない状況では、カメラを動かさず静止したフレームで挑みました」

 

ブルース・クリステンセンは映画『ガール・オン・ザ・トレイン』は特別な繋がりと関係性があったと言います。それはキャストとクルー、主人公の感情と思考、そして鍵となるのは全てフィルムで撮影することでした。

 

「フィルムは表現手段による描写です」と、彼女は高らかに述べます。「それは自然な柔らかさとバランスで映画的、今回のようにクローズアップが重要な意味を持ち、キャラクターを重要視する脚本には最適です。私はフィルムで戦い、そしてもっと多くの映画制作者達になぜそれがとても価値があるかを見てもらいたいのです。ありがたいことに監督のテイト、製作のジャレッドとマークは私のアプローチに賛同し、私はスクリーンでの結果に興奮しています。デンゼル・ワシントンが監督・製作・主演を務める新作『Fences(原題)』の撮影にインした時、デンゼルはすでにフィルムでの撮影について同じ認識を持っていました。でもそれはまた別の機会に話しましょう」と締めくくりました。

(2016年11月10日発信 Kodakウェブサイト InCameraより)

 

『ガール・オン・ザ・トレイン』

11月18日(金)全国ロードショー!
配給:東宝東和
​公式サイト: http://girl-train-movie.jp/
予告編

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