top of page

2018年 2月 22日 VOL.098

若手映画作家の発掘・育成を目的とした国家プロジェクト
『ndjc:若手映画作家育成プロジェクト 2017』
完成5作品の監督および作品のご紹介

Copyright: (C) 2018VIPO

『ndjc:若手映画作家育成プロジェクト』は、日本映画振興事業の一環として文化庁よりVIPO(映画産業振興機構)が委託を受け、優れた若手映画作家を対象に、本格的な映像制作技術と作家性を磨くために必要な知識や技術を継承するためのワークショップや製作実地研修を実施しています。さらに、新たな才能の発掘を目的として作品発表の場を提供することで若手映画作家を支援し、日本映画の活性化を目指しているプロジェクトです。2006年度から今年度まで、合計62名の若手映画作家が、このプロジェクトに参加し35mmフィルム撮影による短編映画を完成させました。

本年度も、8月に行ったワークショップから選出され、製作実地研修に進んだ5人の若手監督が講師による脚本指導を経て、各制作プロダクションの協力のもと、プロのスタッフ・キャストと共に短編映画を制作し、このたび完成いたしました。

 

『ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2017』で完成したばかりの5作品は、東京、有楽町スバル座にて2月24日~3月2日、名古屋、ミッドランドスクエア シネマにて3月10日~3月16日、大阪、シネ・リーブル梅田にて3月17日~3月23日まで期間限定で一般上映されます。各会場では連日監督ほか関係者による舞台挨拶が予定されています。

 

上映会や作品情報の詳細は、ndjc公式サイト http://www.vipo-ndjc.jp/ をご覧ください。

今回、5人の監督から、35mmフィルム撮影で作品を仕上げた感想をお寄せいただきました。本プロジェクトのスーパーバイザーを務められた土川勉氏のメッセージと合わせてご紹介いたします。(以下、敬称略)
 

 化け物と女

監督・脚本・編集・絵: 池田 暁(Akira Ikeda)

撮影: 池田直矢

照明: 加持通明

出演: 熊倉一美、きたろう、有薗芳記、芝 博文、よこえともこ

制作プロダクション: 東映東京撮影所

監督・作品の詳細はコチラ → http://www.vipo-ndjc.jp/ndjc/3802/

池田 暁 監督からのコメント

以前、映画といえばフィルムで撮って上映するものだと思っていた。またフィルムが映画を撮るうえで経済的にも技術的にも大きな壁になっていたとも思う。そこへデジタルという様々な意味で映画を撮りやすいものが現れたおかげで、僕は映画を撮れたり映画祭に行けたりした。それでもフィルムは難しいからこその憧れみたいなものがあった。今回の企画に応募する動機のひとつに35mmのフィルムで映画が撮れるというのは間違いなくあった。それが実現できたのは幸せなことだと思う。今後、常にフィルムで映画を撮れるなんて贅沢なことは思ってはいない。それでもフィルムで撮影した作品がスクリーンに写し出された時、またいつかという気持ちが湧いてきたのを忘れることはないと思う。

『化け物と女』の撮影現場 (C) 2018VIPO

 カレーライス Curry and Rice

監督・脚本: 奥野俊作(Shunsaku Okuno)

撮影: 花村也寸志

照明: 加藤桂史

出演: 井之脇海、安藤ニコ、松浦祐也、矢柴俊博、岩谷健司

制作プロダクション: 東宝映画

監督・作品の詳細はコチラ → http://www.vipo-ndjc.jp/ndjc/3803/

奥野 俊作 監督からのコメント

広告の仕事でフィルム撮影の経験はありましたが、モノクロフィルムでの撮影は初めてでした。ジャームッシュやゴダールのモノクロ作品を夢想しながら、粒子を感じる渇いた雰囲気の映像にしたいと思っていましたので、モノクロフィルムをアメリカから取り寄せて撮影させてもらえたことは本当に幸せでした。フィルムテストをして増感現像を試したら、たしか4倍?くらいでもザラつきがなく映像がクリアで、ちょっと驚きました。モノクロフィルムも進化しているのですね。撮影の花村也寸志さん、照明の加藤桂史さんをはじめスタッフのみなさんのおかげで、最近の邦画ではちょっとお目にかかれない美しいモノクロの映像が仕上がったと思います。

『 カレーライス Curry and Rice』の撮影現場 (C) 2018VIPO

 もんちゃん

監督・脚本: 金 晋弘(Jinhong Kim)

撮影: 西村博光

照明: 志村昭裕

制作プロダクション: ツインズジャパン

出演: 大和田 賢、眞島秀和、平尾菜々花、榎本梨乃、中村映里子

監督・作品の詳細はコチラ → http://www.vipo-ndjc.jp/ndjc/3794/

金 晋弘 監督からのコメント

ドイツのカメラARRIFLEX535Bが美しかったです。又、操作する撮影部の姿が格好良かったです。撮影部のフィルムと向き合う緊張感が、その他の部へ、スタッフとキャストへも伝わり、デジタル撮影とは違う特別な影響が現場に於いて、ありました。百年以上に渡ってフィルム撮影が主であった映画の歴史がありますが、最近はフィルム撮影が稀有な時勢です。そのせいでこの度のフィルム撮影を、手練れたスタッフ達であっても新鮮な気持ちで取り組み、モチベーションも一味違うものと成ったと思います。監督の私にとっては有難いことで御座いました。フィルムから始まった映画史です。映画作家としてフィルムで作品を撮る体験が出来たことは幸運でした。今後の糧となりました。

『もんちゃん』の撮影現場 (C) 2018VIPO

 トーキョーカプセル

監督・脚本: 齋藤栄美(Emi Saito)

撮影: 柳島克己

照明: 根本伸一

出演: りりか、川合 諒、菅原大吉

制作プロダクション: アルタミラピクチャーズ

監督・作品の詳細はコチラ → http://www.vipo-ndjc.jp/ndjc/3796/

齋藤 栄美 監督からのコメント

カタカタカタカタ…カメラ横でフィルムが回る音を聞きながらお芝居を見つめる。とても贅沢な時間でした。「1コマ1コマに今この瞬間が焼きつけられていく。」大切に、覚悟をもって臨まなければいけないと思いました。まだ監督として未熟な私に、時には助言をしつつ、丁寧に撮影してくださったキャメラマンの柳島さん、照明の根本さん、スタッフの皆さんにとても感謝しています。今回の映画は、主人公の女の子が1日を経て少しだけ成長する映画です。彼女の「ささやかだけど大切な心の変化」を描くのに、表現力豊かなフィルムで撮影できた事は本当によかったと思います。新しい技術が急速に進化しても、フィルムにはフィルムの魅力、強さがあると思います。これからも表現方法の1つの選択肢として、フィルム撮影が存続する事を強く願います。

『トーキョーカプセル』の撮影現場 (C) 2018VIPO

 さらば、ダイヤモンド

監督・脚本: 中川和博(Kazuhiro Nakagawa)

撮影: 中坊武文

照明: 木村明生

出演: 伊藤祐輝、伊藤 毅、佐藤祐基、橋本真実

制作プロダクション: 東北新社

監督・作品の詳細はコチラ → http://www.vipo-ndjc.jp/ndjc/3798/

中川 和博 監督からのコメント

フィルムで撮影するとはどういうことなのか。少なくとも今企画においては「撮る」という行為を厳選する事だと思いました。金銭的な面からもテイクを重ねたり、抑えでカットを撮っておいたり、という行為自体をなるべく減らさなくてはいけません。いわゆる“ブン回し”などもってのほかです(いくらでもフィルムを回せる現場であれば別ですが)しかし、逆に言うと「絶対に残さなければならない物は何か」と、考えるきっかけにもなりました。その為にリハーサルから役作り、本直し、ロケハンと、入念に準備を行いました。それが結果として良かったと思います。結局、大切なのはその考え方かもしれません。フィルム撮影での大きな収穫であったと思います。

『さらば、ダイヤモンド』の撮影現場 (C) 2018VIPO

近年、邦画の公開本数は年間約600本と格段に増えてきましたが、映画製作の形態や上映の方法は時代の流れと共に急速に変化しています。しかし素晴らしい作品が生まれる現場の緊張感は、今も昔も変わらないはずです。フィルム撮影の現場はそれを象徴するもののひとつではないでしょうか?

2017年度で12年目を迎えた「ndjc」。私たちは若き監督たちの熱い思いを実現させるため、優秀なプロデューサー、制作プロダクションの方々のご協力のもと、最高の現場を用意し「新たな物語」をこれからも創出していきます。

土川 勉 氏 プロフィール(つちかわつとむ)

1989年『Aサインデイズ』(崔洋一監督)でプロデューサーデビュー。
その後、大映と角川映画にて製作畑一筋に44作品のプロデュースを担当。
主な作品は『CURE』(1997年黒沢清監督)、『回路』(1999年黒沢清監督・カンヌ国際映画祭国際批評家連盟賞受賞)、『ガメラ』、『ガメラ2』、『ガメラ3』(1995年、1996年、1999年金子修介監督)、『DEAD OR ALIVE 犯罪者』(1999年三池崇史監督)、『沈まぬ太陽』(2009年若松節郎監督・第33回日本アカデミー賞最優秀作品受賞)など。
現在はSKIPシティ国際Dシネマ映画祭ディレクター。
 

bottom of page