2019年 3月 15日 VOL.136

コダックのフィルムで古きブダペストの壮麗さと、第一次世界大戦の前触れを描いた『サンセット』

ネメシュ・ラースロー監督作品『サンセット』 Image courtesy/copyright of Laokoon Filmgroup.

コダックの35mmと65mmフィルムで撮影された『サンセット』は、ハンガリーのネメシュ・ラースロー監督および長年協働してきた撮影監督 エルデーイ・マーチャーシュ(HSC)による作品で、ブダペスト、そして衰退しつつあるオーストリア=ハンガリー帝国に第一次世界大戦の影が差す時代のミステリアスで不穏な兆しを描いています。

ネメシュ監督は、アカデミー賞を受賞したホロコーストの悲劇『サウルの息子』(2015年)で高い評価を得た監督です。『サウルの息子』もエルデーイが撮影を行い、2人は35mmでポストプロダクション作業を行いました。『サウルの息子』は2016年のアカデミー賞およびゴールデン・グロープ賞の外国語映画賞に加え、数々の第一級の賞を総なめにしました。獲得した賞の中には、2015年のカンヌ国際映画祭グランプリもあり、エルデーイはブラザーズ・マナキ映画祭のゴールデン・カメラ300賞、カメリマージュのブロンズ・フロッグ賞、さらに全米撮影監督協会賞スポットライト賞を受賞し、世界の主要な映画撮影の賞で手持ちカメラによる見事な撮影を評価されました。

ネメシュ・ラースロー監督作品『サンセット』 Image courtesy/copyright of Laokoon Filmgroup.

舞台は1913年のブダペストで、ユリ・ヤカブが演じる20歳の美しい女性 イリス・レイターがウィーンからブダペストに到着します。ブダペストに来たのはレイター帽子店で仕事に就くためなのですが、そこは彼女の亡き両親が築いた名店で、ブダペストの上級階級の人々の間で人気の店でした。不運にも彼女が幼い時に両親は店で起きた大火事で命を落としており、親を亡くしたイリスはその後すぐにイタリアのトリエステに移り、帽子屋としての修業を積んだのでした。

過去に悩まされ、現在に警戒しながら、イリスは気まぐれな兄を探して生まれた場所に戻ってきたのです。イリスの兄は、無政府主義者テロリストの傾向がある悪党の一味に巻き込まれて人を殺し、支配者階級のエリート集団を転覆させようとしているという噂がありました。イリスには誰を信じるべきか、何が真実なのかも分かりません。上流階級の顧客たちのために最高の帽子を作る彼女に、闇の男の低い声が囁きます。「世界の恐怖は、こういう奇麗なものの下に隠れているのだ」

ネメシュ・ラースロー監督作品『サンセット』 Image courtesy/copyright of Laokoon Filmgroup.

600万ユーロ(約7億5千万円)の予算で製作された『サンセット』は、ブダペスト周辺のロケーションで2017年6月から9月にかけての54日間で撮影されました。ブダペストの宮殿地区で行った撮影もあり、現存する建物の中に巨大かつ精巧なセットが入念に組み立てられ、レイター帽子店やその仕事場、カフェのある街の広場、後ろに広場が見える2階建てのアパートメントに繋がる通路などとして本編に登場します。

ネメシュ監督とエルデーイは、『サウルの息子』で行ったように35mmのコダック VISION3 500T カラーネガティブ フィルム 5219で本作を撮影しました。ハンガリアン・フィルムラボのサポートによって、必然的な4K DCPの基準として完成したフィルムプリントを使用する、一貫した35mmのフォトケミカル仕上げのポストプロダクションを完了しました。

ネメシュ・ラースロー監督作品『サンセット』 Image courtesy/copyright of Laokoon Filmgroup.

ネメシュ監督とエルデーイのフィルムへの想いの強さから、戦時中の塹壕でのエピローグシーンは、65mmのコダック VISION3 500T カラーネガティブ フィルム 5219を使って撮影され、2018年ベネチア国際映画祭の初上映では、編集したカメラネガから焼き付けた35mm完成プリントで上映することができました。そして、名誉あるFIPRESCI賞を受賞したのです。

ネメシュ監督と共にテストと話し合いを重ね、エルデーイはクックS4レンズを装着したARRICAM LTカメラを用いて、500Tの35mmフィルムに4パーフォレーション、1.85:1のアスペクト比で撮影することにしました。

『サンセット』の撮影現場にて、主演のユリ・ヤカブ、ネメシュ・ラースロー監督、撮影監督 エルデーイ・マーチャーシュ(HSC) Photo by Mate Bartha, courtesy/copyright of Laokoon Filmgroup.

「私たちの当初の計画は、『サンセット』をアナモフィックでドリーかスティックから撮影するというもので、手持ちで撮影を行う予定は全くありませんでした」とエルデーイは言います。「ですが、視覚的に人の体験を届けたい、つまり、流動的なカメラワークでイリスの周囲の世界を構築し、主観的に彼女にクローズアップしたり、彼女の視点から世界を客観的に見たりするような映像にしたいというラースローの希望について良く話し合った結果、一周して、『サウルの息子』で成功したのと同じ、手持ちカメラの映像に戻ったのです」

プロダクションの規模と、たくさんあるシーンのそれぞれで大胆なカメラの動きに完璧な照明を当てなければならないということを鑑みて、エルデーイはジョルジュ・レーダーにカメラの操作を任せました。「私が長編映画でカメラを操作しなかったのは本作が初めてでしたが、ジョルジュは天才的で、私たちが求めていた通りのものを撮ってくれました」

撮影監督 エルデーイ・マーチャーシュ(HSC) Photo by Ildi Hermann, courtesy/copyright of Laokoon Filmgroup.

エルデーイによると、映像上のインスピレーションのために彼とネメシュ監督で少しずつ蓄えたものが最後には膨大な量のイメージとなったそうです。最終的に彼らのプロダクションのオフィスの壁全体、床から天井までが、歴史的なブダペストとそこにいる市民たちの写真や絵画などで覆いつくされました。彼とネメシュ監督は、F・W・ムルナウ監督による象徴的な作品『サンライズ』(1927年、撮影監督:チャールズ・ロッシャー、カール・ストラス)も参照しましたが、参考にしたのは映像よりもむしろ、予見性と人間文明の楽観主義の描写の方でした。『サンセット』が21世紀で対となる、人間の崩壊についての物語となるようにするためです。

『サンセット』の撮影現場にて、ネメシュ・ラースロー監督、主演のユリ・ヤカブ、撮影監督 エルデーイ・マーチャーシュ(HSC) Photo by Mate Bartha, courtesy/copyright of Laokoon Filmgroup.

1つのフィルムタイプのみを選択することに関して、エルデーイはこう述べています。「コダック 500Tはとにかく最高です。強い日差しの中でも夜の真っ暗な時間でも使うことができ、がっかりさせられることがありません。また、屋内と屋外、日中と夜などのどんな撮影状況にでも対応できる優れた粒子構造やコントラスト、そして彩度といった視覚的な堅牢さも500Tを使い続ける理由です。本作ではイリスがたくさん映りますが、肌のトーンの忠実な描写について言えば、私の目には500Tが一番魅力的に見えました。それに加え、1つのフィルムタイプで撮影をするのは費用面でも優れており、端尺の使用においては結果的に廃棄するフィルムが減ります」

『サンセット』の撮影現場にて Photo by Mate Bartha, courtesy/copyright of Laokoon Filmgroup.

『サンセット』は大部分が35mmに撮影されましたが、エルデーイは、戦時下の塹壕という舞台の中で副次的に起きる本編中の不穏な出来事を全く別の映像で捉えたいと強く思っていました。

「このシーンはイリスの現実の体験と想像上の体験のどちらでもありえるのですが、これについて話し合えば話し合うほど、私たちは超現実的なルック(映像の見た目)というアイデアに傾いていきました」と彼は言います。「そこでそのシーンは、戦争で荒らされた用水路の汚物や泥の悲惨さをドリーからの長回しで65mmフィルムに撮影することにしたのです。65mmを使った出来栄えは素晴らしく、細部まで予想以上のリアリズムがありました。全編65mmで作品を撮影してみたいですね。それが私の目標です」

35mmフィルムカメラを肩に担ぐ撮影監督 エルデーイ・マーチャーシュ(HSC) Photo by Mate Bartha, courtesy/copyright of Laokoon Filmgroup.

撮影された65mmのカメラネガは、ロンドンのシネラボで現像されました。

現在、イギリスでショーン・ダーキン監督の『The Nest(原題)』を35mmで撮影しているエルデーイはこう締めくくります。「『サンセット』をフィルムで撮影できたのは幸せなことです。コダックのセルロイド(フィルムの意)のおかげで、そのルックの本質が観客をその時代に引き戻してくれました。観客は戦前の華麗なプダペストに浸りながらも、間もなくやって来る暗い暴力と恐怖の影を嫌でも目にすることになるのです」

(2018年11月7日発信 Kodakウェブサイトより)

『サンセット』

 2019年3月15日(金)より
 ヒューマントラストシネマ有楽町、
​ 新宿武蔵野館ほか公開

 原 題: Napszállta
 製作国: ハンガリー・フランス合作
 配 給: ファインフィルムズ

 公式サイト:

 http://finefilms.co.jp/sunset/

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