2020年 5月 13日 VOL.156

HBO製作の超大作TVドラマシリーズ『ウエストワールド シーズン3』で一人二役をこなした撮影監督ポール・キャメロン

『ウエストワールド シーズン3』エピソード4(監督:ポール・キャメロン)より、アーロン・ポール(左)とエヴァン・レイチェル・ウッド Image courtesy of HBO.

『ウエストワールド』のプロデューサー、ジョナサン・ノーラン(クリストファー・ノーラン監督の弟、『ダークナイト』や『インターステラー』の脚本を担当)とその妻のリサ・ジョイ(『バーン・ノーティス 元スパイの逆襲』)は、テーマパークの出資者たちに逆襲するアンドロイドたちを描いたマイケル・クライトン原作の古典SFスリラーを翻案し、複数の時系列を越えて起こる出来事の中で、人間とテクノロジーの複雑な関係を探っていきます。HBOが製作する本シリーズのパイロット版を撮影する際、ノーランはポール・キャメロン(ASC)(『コラテラル』)とタッグを組み、結果的にプライムタイム・エミー賞や全米撮影監督協会賞にノミネートされることになります。残酷で操作的な人間たちに対してアンドロイドのドロレス・アバーナシー(エヴァン・レイチェル・ウッド)が報復を企てる現実世界へとアクションが移行するシーズン3において、キャメロンは撮影監督として同シリーズに復帰し、かつ今回初めてエピソード監督も務めています。

キャメロンはこう語っています。「2015年にこの番組を作った時、共同制作者のジョナサン・ノーラン、プロダクションデザイナーのネイサン・クロウリーと私は、メロディ・ランチの西部劇セットからユタ州モアブの広大な風景まで、様々なロケーションに挑むという難関に直面しました。パークの本部はグランドキャニオン・タイプのセットであるデッドホースポイントに置きました。シーズン3の舞台は2058年のロサンゼルスです。過去シーズンのクラシックな撮影の仕方を維持しつつも新しいビジョンが必要でした。ジョナサンとプロダクションデザイナーのハワード・カミングスと私は、最も未来的な都市を求めて世界中を探しました。私たちが強く引かれたのはシンガポールと、そこのすっきりと直立した建築的特色でした。各階に複数の階層に連なる堂々とした緑樹がある公園があり、そこに心を奪われたのです。私たちは、ロサンゼルスをシンガポールとどう結びつけるか、そしてシンガポールで何を撮影するかの計画を立てました。スペインのユニットは、第二次世界大戦の映像の大部分をベサルーで、アンゲロン・セラック(ヴァンサン・カッセル)の敷地をバルセロナ郊外で、そしてデロス社の屋内外をバレンシアで撮影しました。私とジョン・グリロとゾーイ・ホワイトは、そのどちらのユニットへも撮影監督として参加しました。私たちはそれぞれの国で5日間、時間をずらしてシフトを組み、24時間仕事をしました。私はシーズン3のエピソード4の監督も2日間行ったので、1日中撮影監督の仕事をした後で、夜通し監督の仕事をする日もありました」

撮影監督ポール・キャメロンは、種々の35mmフィルムのテストを5分間の映像にまとめ、照明や好みを網羅した“ルックブック” (映像の見た目の見本)を作成した。 Photo by John P. Johnson courtesy of HBO.

キャメロンはこのドラマのルック(映像の見た目)を、あらかじめロサンゼルスで行った35mmフィルムの初期テストを基に決めました。5分の映像を編集し、照明や好みを網羅した“ルックブック”(映像の見た目の見本)として提供したのです。「私たちは、他の撮影監督や監督たちが、この番組の表現方法をはみ出ることなく、もっと進化させられるようなトーンを設定しようとしています。日中の屋内と屋外はコダック VISION3 50D カラーネガティブ フィルム 5203で撮影し、他はすべて500T 5219と250D 5207で撮影しました。「私は長年500Tを使用しており、それを1/2段増感します。自分の目に被写体が映っている時に、何が表現され、どの色が薄れていくのかが私には分かるんです。50Dは粒子がほとんどなく、今まで作られたフィルムの中で最も完璧なフィルムの1つです。肌のトーンの色表現やコントラストが最高に素晴らしいのです。250Dは他の2つのフィルムとはかなり違う感じがするので、私たちは250Dをあまり使い過ぎないようにしました。4パーフォ/16:9で撮影したのですが、この番組の中には、2.39:1のアスペクト比で撮影した違うタイムラインのシーンもあり、それらのシーンは3パーフォでの撮影でした」

本作のカメラはARRICAM LTおよびARRICAM STが使われました。「大体は3~4台のカメラを持ち出し、2台のカメラでほぼすべてを撮影しました」とキャメロンは述べます。「レンズは主にARRIのマスタープライムを使用し、27mmと65mmを好んで使いました。また、ツァイスの8mmレクチリニアも好んで使いました。このレンズは魚眼レンズに似ているのですが、パースペクティブの補正でこういった超広角のショットにすることも可能なのです。ソニーのVENICEについては、21mmから100mmのツァイスのスプリームプライムレンズを組み合わせたのですが、本作では特に夜間のワイドショットに使っていたので、主に使用したのは21mmと29mmでした」。特殊なショットは従来の方法で行われました。「シーズン3のエピソード1で、ドロレスが3人の男たちを殺して前の座席に移動する時、私たちは車内にいました。車後方にバックアップのカメラを乗せ、それを徐々に近づけていって、このシーン全体の展開を見るんです。後部のARRICAMのスライダーに乗せた、昔ながらのセンチュリー・プレシジョンのシュノーケル・ストレートのアタッチメントを使い、登場人物の間を正確に通り抜けました」

『ウエストワールド シーズン3』より、バーナード・ロウ役を演じるジェフリー・ライト Courtesy of HBO.

本作には必要最小限のデジタル映像が含まれています。キャメロンはこう説明しています。「先ほど、今回は前の2つのシーズンにはなかった夜間の撮影がたくさんあったという話をしましたが、高感度ISO 2500で撮影できるソニーのVENICEを使うというアイデアが浮かびました。常にワイドで開けて撮影しているわけではないので、フォーカスが合っていない素材が減るのです。クリエイティブ面で一番重要だったのは、夜間の街中でデジタル撮影を行うと、その場の照明環境の中で、より明るく、未来的な感じがそのシーンに生まれたことです。しかし、私たちは一貫して、クローズアップでは毎回フィルムに戻しました。1つルールがあるとすれば、撮影監督たちは極端なワイドショットにはソニーのVENICEを使ってもいいが、それ以外はフィルムで撮影するということでした」。デジタルで撮影した映像はLiveGrainというソフトを使い、フィルムと溶け込むように加工されました。

照明はLEDとタングステンが組み合わされました。「私は、夜間のタングステンとコンドルが好きなんですが、ジェルフィルターがより多く必要です。私と他の撮影監督たちは、セットでスカイパネルとLEDの技術を活用する傾向にありました。私はロケーションの準備をするのが結構好きなので、フレネル、もしくは軽量のワイヤレスLEDを使うんです。夜間の照明の一部では白色光を使う必要がありました。私たちはみんな、こういうオレンジと緑の夜景を見て育ちましたが、この作品にそれは必要ありませんでした」。シンガポールの夜間撮影をロサンゼルスと調和させるのははるかに簡単でした。「シンガポールの天気はハワイのように終始変化するのですが、その日はうまくいきました。シャーロット・ヘイル(テッサ・トンプソン)がスペインのバレンシアにある芸術科学都市でドローンを降りて、通路を通り庭を抜けて、ロサンゼルスのステージ上にある会議室に入る時などは、いくつか大きな課題がありました。観ている人は色温度と光の雰囲気を介して繋がりを感じているのです。間違いなく照明が正しい方向から来るようにしたかったので、スペインでの主要な撮影を完了した時、私はそのまま滞在して自分で会議室のプレートを撮影しました」

『ウエストワールド シーズン3』の1シーン Courtesy of HBO.

「ロサンゼルスのこの未来的な世界には、カラーパレットをシンプルに保ちたいという強い思いがあり、明るい原色をあまり使わないように努めました。テーマ的に、登場人物やストーリー上の何かに関連する色はありません。あるのはナイトクラブの屋外や、色のある看板からの光などです。本作の中で実際の色は使いませんでした。都市の風景は色が少なくなりがちなので自然とそうなったのです。シンガポールでは、ちょうどいい未来的な外観をした階段状の通路が存在し、その中にこういった色彩的な背景があったのですが、それと同様の、色に関する素敵なサプライズもいくつかあったため、問題ないと判断しました。もう1つは、赤いLEDの光で縁取られた橋の上にいる時にケイレブ・ニコルス(アーロン・ポール)が電話を受けて友人を放置するシーンです。色が行き交うのですが、私たちは自然に任せました」

好まれたのは、グリーンスクリーンよりもLEDスクリーンでした。「具体的に言うと、こういう現代的な漆黒ができるんです。ハワード・カミングスが建てたセットはとても美しく、非常に大がかりな内部でした。昼も夜も実写プレートを映したLEDスクリーンを使って撮影されました。それは大きな挑戦でしたね。それから、ドローンの映像も主にLEDスクリーンを背景に行われたので、ガラスに自然な反射が生まれました。本作には、大部分を360度のLED環境の中で行った『マンダロリアン』(2019年制作のTVシリーズ)のような作品で使用された新しい技術が含まれており、私たちは『ウエストワールド』でも巨大なLEDスクリーンをいくつか使用しました。私とジョナサンで、そういう技術を使うことを推奨したんです。何人かの撮影監督は、何度かグリーンスクリーンに頼らなければなりませんでした」

『ウエストワールド シーズン3』の1シーン Courtesy of HBO.

キャメロンは、シーズン3のエピソード4で監督を務める機会を得ました。「短いあらすじから自分のエピソードがどうなっていくのかを考えていたのですが、初稿を手にした時は顔から血の気が引きましたね! カーチェイスや狂気を含むこのエピソードを担当することになるだろうとは思っていたものの、重要なプロットと登場人物が明らかになる、劇的なシーンに10人の俳優たちが全員出てくるのです! この回は、ルックや登場人物を固める回なんです。私はその一部をずっと担ってきました。撮影監督としての自信を監督の体験に取り入れたのが役立ちました。他の撮影監督と一緒に仕事をする上で一番難しかったのは、撮影監督ジョン・グリロに、彼の意見とビジョンをこのエピソードに入れさせてあげることでした。できるだけ努力した、というのが現実ですね。実際には、時間が足りなくなった時があったのですが、撮影監督として、1つのシーンの照明や撮影にどれくらい時間を使えるかが自分には分かるので、要点を絞らなければならなかったのです。いい経験ができました」

(2020年4月20日発信 Kodakウェブサイトより)

『ウエストワールド シーズン3』(全8話)

 Amazon Prime Videoチャンネル

 「スターチャンネルEX -DRAMA & CLASSICS-」にて配信中

 原 題: Westworld

 製作国: アメリカ​

コダック合同会社

エンタテインメント イメージング本部

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