
2013年9月26日 VOL.027
2013年のトレンド
―16mmフィルムでの邦画制作本数が増加
2013年の邦画制作にはひとつの特徴的な傾向が見られます。それは、16mmフィルム使用作品の本数増加が顕著だということです。本メールマガジンでは今後、このトレンドの核となるキャメラマンの方々のコメントを中心に16mmフィルムで撮影された作品を順次ご紹介して参ります。
映画 『ぼくたちの家族』
『川の底からこんにちは』、『ハラがこれなんで』、『舟を編む』他で若手実力派監督として評価の高い石井裕也監督。新作『ぼくたちの家族』では、ある一家が“母親がガンになる”という家族にとってこれ以上ない切迫した状態から次第に希望を見出していく姿を、監督独特のコメディセンスで表現しています。

フィルムが持つ“味わい”―撮影 藤澤順一氏コメント
撮影は『舟を編む』に引き続き藤澤順一氏。撮影メディアの選定にあたり藤澤氏は、作品の台本を読んだ時に35mmではない16mmフィルムの質感で芝居を捉えたいと感じられたそうです。藤澤氏は16mmの質感について次のようにコメントしています。
「映画はその作品の持つ在り方で表現手段を選択すれば良いと思います。デジタルカメラも精度が上がり、一見フィルムと区別がつきにくいまでになり、デジタルとしての良さはあると思います。しかし、何を質感と言えば良いのか難しく、質感と言うと、従来慣れ親しんだフィルムが持つ味わいだと思います。粒状性で言えば16mmは35mmに比べ当然粗く見えるのですが、その粗さも質感の一つだと言えます。フィルムの持つ曖昧さの良さの中にある奥行き感、フィルムの持つ温かさ、それを作品の中で表現できればと考えています。

Photography © シバタスタジオ 柴田昌勝
ぼくたちの家族』の石井監督もどちらかと言えばフィルム志向だと思います。当初、監督はフィルムで撮影したものをデジタル処理で仕上げることや、DCPという上映形態について心配されていました。『ぼくたちの家族』では、フィルムを使用したのは撮影のみで、ラッシュプリント等は一切起こさず、LOGデータテレシネでデジタル化、仕上げ処理等を行いDCP化する工程を組みました。しかし、DCPでもフィルム感はしっかり残っていました。フィルム to フィルムの頃と違ってデジタルとの融合で逆に様々な選択肢が生まれたと思います。監督、プロデューサー共々、フィルムで撮影したことにこの作品の意味を見いだせたと満足されています」