2013年10月3日 VOL.028
撮影 田中一成氏に聞く― 映画『R100』
16mmカラーネガフィルムによる撮影作品
16mmフィルムで撮影する邦画作品の増加が2013年のトレンドであると前号でご紹介しましたが、今回はその第二弾として、間もなく公開される話題作、松本人志監督の『R100』をお届け致します。
2007年『大日本人』、2009年『しんぼる』、2011年『さや侍』と、独創的なストーリーと映像感覚で観客を驚きの世界へと誘う作品を発表し続けている松本監督。その第4作目となる『R100』は、絶対に開けてはいけない扉を開いて“謎のクラブ”へと入会してしまった主人公の摩
訶不思議な体験を描く究極の“未体験リアル・ファンタジー・エンターテイメント”です。
映画『R100』の撮影監督を務められたのは、『ゼブラーマン』シリーズ、『探偵はBARにいる』シリーズ、『中学生円山』等で活躍されている田中一成氏。16mmを使用した本作の撮影の背景について、田中キャメラマンに伺いました。
"あえて16mmでの撮影を選んだ"
ー 16mmでの撮影を選択された理由を教えてください。
監督との話し合いの中で、フィルムの持つ質感が欲しかったことが最大の理由です。
作品の内容から、デジタル撮影では表現が難しいかと思い、35mmでの撮影も考えましたが、DI(デジタル インターメディエイト)を通すことにより画面が綺麗になりすぎることを懸念してあえて16mmでの撮影を選びました。
フィルムが可能にする"言葉では表現できない部分の表現"
ー 撮影を終えて、16mm撮影についてどのような感想を持たれましたか?
16mmは、テレビ、ドキュメンタリー、Vシネマ等の撮影でよく使っていたこともあり、自分自身は大変自由に撮影できました。キャメラが軽量で手持ちでの撮影が楽だったこともありますが、何と言ってもフィルムの持つ質感と粒子が作品へ寄与したと思います。それは主人公の持つ人間の裏面の表現であり、時代感でもあり、言葉では表現できない部分の表現を担っていると思います。
ー 仕上がりはいかがでしたか?
今回はオリジナルネガをスキャンしてDI処理を行っていますが、従来のプリントフィルムを使用したポスプロ作業に比べると、35mmと16mmの見た感じの差が少なく、フィルムとの相性にもよるのでしょうが粒子の調節も思ったようにでき、何となくお得な気分がしました。
映画も色々な作品があり、表現によってはフィルムでの撮影も一つのチョイスだと感じさせられました。
ー ありがとうございました。公開を楽しみにしております。
第38回トロント国際映画祭、ミッドナイト・マッドネス(MIDNIGHT MADNESS)部門において正式上映された本作。この映画を観たあとは、あなたの人生が確実に変わる。ようこそ、未体験の世界へ―。映画『R100』はいよいよ10月5日(土)全国ロードショーです!
PROFILE
田中 一成(J.S.C.)
たなか かずしげ
1954年生まれ。鳥取県出身。横浜放送映画専門学校(現・日本映画大学)卒業後、田村正毅氏の助手を経て映画、テレビ、オリジナルビデオの撮影に携わる。1994年文化庁芸術家在外研修員としてアメリカ、オーストラリアに派遣。
撮影情報 (敬称略)
撮影監督: 田中 一成 (J.S.C.)
チーフ : 古長 真也
セカンド: 新島 克則
サード : 田川 雄一 廣田 恒平
Bキャメラ: 市川 修
キャメラ: ARRIFLEX 16SR3 (一部 GoPro、CineAlta F65)
レンズ : アンジェニュー11.5-138mm T2.3、アンジェニュー12-240mm T2.8、ツァイス9.5mm、12mm、16mm、25mm、35mm、50mm
フィルム: コダック VISION3 500T 7219
現 像 : IMAGICA
映写フォーマット: 1.85 : 1 (アメリカンビスタ)
企画・監督・脚本: 松本 人志
出 演: 大森 南朋、大地 真央、寺島 しのぶ、片桐 はいり、冨永 愛、佐藤 江梨子、渡辺 直美、前田 吟、YOU、西本 晴紀、松本 人志、松尾 スズキ、渡部 篤郎
製 作: 吉本興業株式会社
配 給: ワーナー・ブラザース映画
上映時間: 100分
©吉本興業株式会社
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