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2013年10月15日 VOL.029

撮影 板倉 陽子氏に聞く― 映画 『陽だまりの彼女』

回想シーンに 16mmを活用

大ヒット作『ソラニン』(2010年)、『僕等がいた(前篇・後篇)』(2012年)を手掛けた恋愛青春映画の名手・三木孝浩監督が、累計発行部数100万部を超える越谷オサムの大ベストセラー小説『陽だまりの彼女』(新潮文庫刊)を映画化。郷愁を誘うようなノスタルジックな空気感が見事に表現され、懐かしさと切ない気持がこみ上げてくる原風景シーンの数々に感情が揺さぶられます。この話題作の一部のシーンでは、表現上の狙いとして16mmフィルムのルックが活用されています。

 

映画『陽だまりの彼女』の撮影を担当されたのは、『セイジ 陸の魚』(2011年 伊勢谷友介監督)、『王様とボク』(2012年 前田哲監督)等で活躍されている板倉陽子キャメラマン。今回の作品では、板倉キャメラマンのデビュー作を観てその映像を気に入っていた三木監督から直接指名を受けました。本作の回想シーンとフラッシュバックシーン合わせて十数分間に16mmのネガ・ポジを使用した板倉キャメラマンにお話を伺いました。

 

 

作品のトーンに合ったルックを求めて

ー 一部のシーンで16mmフィルムを使用された理由を教えてください。

 

カラコレでのアプローチに、プラス、何か今回の作品のイメージに合うトーンを加えたかったからです。16mmプリントの映写の再撮という方法をテストして、気に入ったので使用しました。

 

ー 再撮と言いますと?

 

VISION3 250Dカラーネガで撮影した素材をノーマル現像と増感現像でテストしました。

それを16mmのプリントフィルムに焼いて東京現像所の試写室で映写したんです。それをメインのデジタルカメラで再撮影しました。カメラポジションをスクリーンに対して真正面に据えたり、斜めに据えたり、さらにドリーで左右に移動しながらの撮影を試し、カットを選んで本編に使用しています。

 

最新の解像度や階調幅だけにとらわれたくない

ー このスクリーン映写の再撮というアプローチを思いつかれたきっかけは何でしょうか?

 

フィルムをスキャンして映写した画がどんなものかは今まで観てきた映像で知っていたので、最近のデジタル映像の画調に混ぜるとしたら、どんな画が良いかな・・・と、普段から考えて映画館で映画を観たりしていたので、その中のひとつとしてたどりついたという感じですかね。

 

ー この手法について三木監督の反応はいかがでしたか?

 

監督は最初から大変興味を示して下さいました。コスト面などについては、テストをして実際に作品に必要なルックを観てもらうと、特に言われることはありませんでした。

 

ー 撮影を終えて、16mmについてどのような感想を持たれましたか?

 

デジタル撮影の素材をカラコレで16mmフィルムの持つトーンらしくというところまでは追い込めると思いますが、やはり、あくまでも擬似という感じを自分で払拭できないのを感じていました。16mmを間近に見て来た自分にとって、本当に欲しい16mmの感じと擬似の間にはまだズレがあると感じます。ですから、その作品にぴったりのトーンを実現できるのが16mmなのであれば、最新の解像度や階調の幅だけにとらわれることなく、これからもどんどん活用していきたいと思います。

 

 PROFILE  

板倉 陽子

いたくら ようこ

東京都出身、青山学院大学卒、JSC青年部。(株)ナック イメージテクノロジー レンタル部の研修員修了後、キャメラマンの小林逹比古氏、蔦井孝洋氏に師事し、市川準監督、犬童一心監督作品に多く関わる。さらに村川聡氏に師事し、特撮作品を数多く経験する。『セイジ 陸の魚』(伊勢谷友介監督)で撮影初担当。その後、『王様とボク』(前田哲監督)、『陽だまりの彼女』(三木孝浩監督)、『家路』(久保田直監督 2014年公開予定)、『パズル』(内藤瑛亮監督・山田悠介原作 2014年公開予定)がある。

 

 

 撮影情報  (敬称略)

撮 影 : 板倉 陽子

チーフ : 福島 圭悟

セカンド: 金 芳明

サード : 滝澤 智志

 

(フィルムパート)

キャメラ: ARRIFLEX 16SR3

レンズ : ツァイス10×11 バリオゾナー

フィルム: コダック VISION3 250D 7207

現 像 : 東京現像所

 

デジタルカメラ: RED EPIC

レンズ : ツァイス ウルトラプライム 単玉、アンジェニュー HR 25-250 ズーム

映写フォーマット: 1.85 : 1 (アメリカンビスタ)

 

監 督 : 三木 孝浩

出 演 : 松本潤 上野樹里 玉山鉄二 大倉孝二 谷村美月 菅田将暉 塩見三省 夏木マリ

制作プロダクション:アスミック・エース

制作協力: 東宝映画 ブリッジヘッド ドラゴンフライ

配 給 : 東宝=アスミック・エース

©2013『陽だまりの彼女』製作委員会

10月12日(土) 全国東宝系ロードショー

 www.hidamari-movie.com/

 

映画『陽だまりの彼女』WEB版予告編

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