2015年12月5日 VOL.042
映画『SAINT LAURENT サンローラン』
長年コンビを組む監督と撮影監督が創造する絢爛豪華な映像美
2014年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門で上映され、セザール賞・最優秀衣装デザイン賞を獲得した映画『SAINT LAURENT サンローラン』は、 イブ・サンローランの生涯のうち30歳から始まる10年間を描いています。彼のたぐいまれな才能のみならず、影の部分にもスポットが当てられています。フランスのヨーロッパ・コープ社とマンダリン・シネマ社の共同製作により、撮影監督のジョゼ・デエーと脚本・監督のベルトラン・ボネロの名コンビが再結成しました。
デエーはカナダのモントリオール出身で、フランス人監督であるボネロの1996年の作品『Qui je suis』で最初の撮影監督の仕事を務めました。以後、『Something Organic』、『The Pornographer』、『On War』、 『Tiresia』、 『メゾン ある娼館の記憶(原題:House of Tolerance)』など、高い評価を得た5本の劇映画とともに18年以上におよぶ二人の協力関係が続きます。
以下は、『SAINT LAURENT サンローラン』の制作および成功を収めているボネロ監督との協力関係について、撮影監督のデエーにインタビューした内容からの抜粋です。
― この作品のために創りたかった全体的なルックとは?
この作品はファッション業界が舞台となっていますが、ファッション業界ではない人物の物語でもあります。物語を進行させていくにつれ、暗い世界になって いきます。冒頭では、サンローランの仕事場での日中のシーンが中心となります。彼は主に単彩の白と黒の服を制作しますが、工房は白、仕事着さえも白黒の基調です。そして1970年代を描いた二章目に入り、サンローランの世界はあふれんばかりの色、ドラマチックな映像、光と影の強いコントラストに満ち、悪びれることのない絢爛豪華なバロック様式の世界となります。 そして最終的に、生涯の終りでサンローランは孤立し、アルコールと薬物乱用に苦しんでいる場面では全体のルックを非常に暗く、多分、“暗すぎる”くらいにしました。
― セルロイド(フィルム)はこの物語にとって正しい選択でしたか?
フィルムは、デジタルでは成し得ない遥かにすばらしいフェイストーンを再現でき、特に肌のトーンが秀逸です。俳優のこめかみの青い静脈や頬の独特なピンク色などが再現できるのも魅力です。デジタルはそれ自身では持っていない映像を再現しようとする、・・・つまり、デジタルカメラで撮影した映像を銀塩(フィルム)のルックに一致させようとしているのです。どうしてそんなことをするのかしら?なぜそのまま使わないの?と思ってしまいます。
ある写真展で気が付いたのですが、私はデジタルの写真よりも銀塩の写真の方により多くの観賞時間を割いていたのです。それは偶然的なことでななく、また、理路整然とした理論から生まれたものでもありません。まさに人間が何かを好むといった自然な感覚や、あるいは本質的に伝わってくる何かを受け止めようという気持ちの問題なのです。
― 今回の作品ではどのフィルムを使いましたか?
屋外とデーライトの室内のシーンにはコダック VISION3 200T 5213を、それ以外のシーンにはコダック VISION3 500T 5219を選択しました。また、この作品ではフィルターを多用しています。若干映像ににごりが生じてもデジタルのポスプロで修正できると判っていましたが、これほど多くのフィルターを使用したことはかつてないと思います。5213と5219をデーライトの室内で切り替えたのは被写界深度の理由からです。
― ボネロ監督との関係について教えてください。
同じ撮影監督と多くの作品で仕事をすると、監督自身がより深く、早く、もっと先へ進むことができるようになります。脚本の草稿段階というプロジェクトの非常に早い時期からベルトランとは関わっています。そして私は、彼が物語を書く手助けだけではなく、各シーンの発端から映画的な感覚を想起させる手助けや、映像化の最も初期の段階で彼にイメージを吹き込む手助けなどをしています。
私たちは、どのようにすれば脚本上の言葉を最高の映像に変換できるのか、文字で書かれている感情を十分描き出せるのか、という同じ質問をいつも自分たちに問いかけています。 私にとって脚本は、製作が進行するにつれて様々な要素が加わったり除かれたりしながら変化する重要なロードマップです。それはキャスティング上の役柄でさえ変えてしまいます。ベルトランと早い段階から共同作業することで、私の視覚的な見通しが早い段階から製作上の検討材料に活かされるという最高の協力関係を築けています。
(2014年4月発行 Kodak IN CAMERA より)
© 2014 MANDARIN CINEMA - EUROPACORP - ORANGE STUDIO - ARTE FRANCE CINEMA - SCOPE PICTURES / CAROLE BETHUEL
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