2015年12月18日 VOL.043

撮影 近森眞史氏に聞く ー 映画『母と暮せば』

フルDIでデジタルの力とフィルムの持つ圧倒的な表現力を融合

大ヒット公開中の山田洋次監督最新作『母と暮せば』。作家・井上ひさしが原爆投下後の広島を舞台に描いた「父と暮せば」と対になる作品を、もうひとつの被爆地・長崎を舞台に作りたいと願っていたことを知った山田監督が、終戦70年の節目に映画化を実現。監督が初めて手掛ける、やさしく泣けるファンタジー作品として大きな反響を呼んでいます。今回は、2010年公開の『おとうと』以降、山田監督作品の撮影をすべて担当されている近森眞史氏にお話を伺いました。

 

ー 今回はフィルム撮影でいかれないのかと心配していました(笑)

 

合成が多いということで最初はデジタルも意識していたんですけど、結局は山田さんから「近森君、どお?君も慣れてないんだろう?」ってかるく言われてしまって…(笑)。やはり使い慣れているキャメラ、使い慣れているフィルムを使ってという風に、自然と流れていったんです。大きくデジタルに固執したわけではなかったですね。

 

モノクロのシーンから始まりますね。

 

この映画業界から本物のモノクロフィルムの感じが消えていくのが怖くて、それでモノクロフィルムで撮影することにこだわっていたんです。しかし、いろんなことを考えるとお金がかかりすぎるっていうことで、カラーネガフィルムで撮って、テレシネで簡易的なモノクロのラッシュをあげることにしました。最終的にはラッキーなことにフルDIで仕上げるお許しが出たので、思ったような感じには近づいたとは思うんです。でもモノクロフィルムでの撮影は絶対にやりたかった。というのは、やはり白黒特有の整色性です。つまり光の波長問題ですよね。“ラッテン3N5”とか“15”とか、そういうフィルターワークがもう世の中から消えつつあるので、今やらないといけないなとずっと思っていたんです。そうでないと、これからの撮影部が全く判らないなんてことになるので・・・。かろうじて白黒を知っている最後の世代としてどうしてもやりたかったんですが、今回は残念でした。

 

今回の撮影ではどのようなことにご苦労されましたか?

 

昔の裸電球のワット数は小さくてそんな明るい世界ではなく侘しい世界だったはずです。今回はすごく侘しい世界を描きたかったのですが、それでも人間は浮いて見えるように、明るく見えるようにしたい。それは本当に難しくてライティングを工夫しなくてはならなかったですね。

 

作品の持つ世界観の表現ですね。

 

画作りに関しては、今回は結構変えたつもりです。レンズの選択もそうですし、カメラテストの時から照明部の猛反対を受けても暗部は潰して、映ってなくてもいいくらいのつもりで撮ったんです。映っているのは人間だけでいいというくらいの気持ちで臨んでね。いらないものは映したくない。周りのみんなには申し訳なかったですけどね。今回の作品ではどんどんいろんなものが邪魔に見えてきてね。ファンタジーと言いつつ、情念の世界なんですよね。リアルなものが映ってくるとすごく邪魔に見えてきて、大事なものは限られたものだけと思えてきたんです。背景に死んだ息子の写真が写り込んだりしなければいけない時もある、そのような大事なポイントは見えるようにしなければならないんだけど、なるべくそれ以外は出なくていいぐらいで、ある意味出たとこ勝負の感じでした。

 

昨年のちょうど今頃ですが、『晩春』(1949年、小津安二郎監督)の4K修復でニューヨークのシネリック社でグレーディングの監修をする機会がありました。これまでカラー、モノクロの小津作品の微妙な調子を順次フルDIで修復していく一方で、なかなか山田さんの新作をフルDIで仕上げるチャンスがなかったんです。今回、デジタルの力とフィルムの持つ圧倒的な表現力がマッチしたものができて本当に満足しています。

 

難しかったシーンは?

 

12ページある長い1シーンがあり、それをどう撮るかが大変でしたね。長いからカットを割らなければならないけど、どう割るかがね。実は、この作品をやる話は2年前の夏に山田さんから話があって、『父と暮せば』(2004年、黒木和雄監督)は見たかいと聞かれて。その時すでに山田さんは溝口さんを意識されていたんですね。『雨月物語』(1953年、溝口健二監督)を参考試写したりしてね。

最初は1シーン1カットでいきたいというくらいの勢いだったんです。現実的には無理なんですけど、なるべくカットを割らない、行きつくところまでは割らないで行きたいというのが基本にあったから、なるべくカット数を少なくするつもりで現場に臨みました。『雨月物語』を見て、僕も普段は動かないところを今回は動いています。この辺はいつもとだいぶ変わったところかもしれないですね。12ページで45カット、山田さんとしては少ないと思いますよ。でもまあ長いのは大変でした。

 

仕上がりはいかがでしたか?

 

今回はDCP初号を見た後でフィルムプリントの初号をしたんですけで、ホントにみんな口々にフィルムの良さを言っていました。山田さんも見た後、直ぐに僕の所へ来て「いいわ、フィルムはすごいいい!」って。また音もいいんですよね。なにか柔らかく感じるし、全然違うってみんなも言っていました。画も納得のいくタイミングがとれて、納得のいく本当に正しい映写条件でやるとこんなにフィルムは良いのかということですね。

だから丸の内ピカデリーでフィルムプリントの上映をやりたいということになったんだと思いますよ。(→ 詳しくはこちら)

 

山田監督は完成披露試写会でもフィルムへの思いをコメントされていましたね。(→ 詳しくはこちら

 

プロデューサーの考え方や会社としての考えなどもありますが、今後も予算が合えばフィルムで撮影をしたいですね。ただ山田さんは次もフィルムを選択されると思いますね。

 

(2015年12月取材)

 

 PROFILE  

近森 眞史

ちかもり まさし

 

1958年生まれ、高知県出身。松竹大船撮影所にて川又昂、高羽哲夫両キャメラマンに師事し、『疑惑』(1982年、野村芳太郎監督)。『黒い雨』(89年、今村昌平監督)、『息子』(91年、山田洋次監督)など数多くの作品に携わる。以後、『釣りバカ日誌14』~『釣りバカ日誌20』(03~09年、朝原雄三監督)、『おとうと』(10年、山田洋次監督)、『京都太秦物語』(10年、阿部勉・山田洋次監督)、『東京家族』(13年、山田洋次監督)『ひまわりと子犬の7日間』(13年、平松恵美子監督)、『小さいおうち』(14年、山田洋次監督)などを手がける。最新作は『家族はつらいよ』(16年、山田洋次監督)

 

 撮影情報  (敬称略)

撮 影:近森眞史

チーフ:下田麻実

VFX担当:中島美緒

フォーカスプラー:田中平太

フィルムローダー:近藤和峰

 

キャメラ:ARRIFREX535B

レンズ :ツァイスウルトラプライム

フィルム:コダック VISION3 500T 5219

現像・DI:東京現像所

 

松竹120周年記念映画

『母と暮せば』

 

吉永小百合 二宮和也

黒木華 浅野忠信 加藤健一

 

監督/山田洋次

脚本/山田洋次・平松恵美子

企画/井上麻矢(こまつ座)プロデューサー/榎望

撮影/近森眞史 美術/出川三男 照明/渡邊孝一 編集/石井巌 録音/岸田和美

製作/「母と暮せば」製作委員会 制作・配給/松竹株式会社

©2015「母と暮せば」製作委員会

2015年12月12日(土) 全国ロードショー

公式サイト http://hahatokuraseba.jp/

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