2016年2月12日 VOL.048

スーパー16で撮影された映画『キャロル』

表情の下に秘められた感情の視覚化

テレーズ役のルーニー・マーラ(左)とキャロル役のケイト・ブランシェット

ⓒ2015 The Weinstein Company. All rights reserved.

シネマトグラファーのエド・ラックマン(ASC)と監督のトッド・ヘインズは、二人の特色であるこだわった質感や感情の表現性を『キャロル』に織り込むのに、スーパー16が最適のメディアだということが判っていました。デジタルもしくは35mmでは思うようながうまくできないだろうと考えたからです。コダック 16mmフィルムを選択したことによって、まるで生きて呼吸しているかのようなフィルムの粒子構造がキャラクターの表情の下に秘められた感情を描き出し、作品に美的感覚を付け加えています。ラックマンとヘインズにとって『キャロル』は、『エデンより彼方に』(2002年)、『アイム・ノット・ゼア』(2007年)、そして『ミルドレッド・ピアース 幸せの代償』(2011年)に続く4度目の共同作業となりました。

 

撮影監督エド・ラックマン(ASC)

Photo by: Wilson Webb ⓒ2015 The Weinstein Company. All Rights Reserved.

多くの映画批評家から称賛を得た『キャロル』は、犯罪小説家パトリシア・ハイスミスの『The Price of Salt』(1952年出版)が原作で、恋に落ちた時の感情的な孤立感やなまめかしい気持ちを女同士の恋という設定で描いています。ケイト・ブランシェットが演じるキャロルは不幸な結婚をした女性で、ルーニー・マーラが演じる若いデパート店員テレーズと関係を深めて行くことになります。最初、この設定は犯罪小説のジャンルからかけ離れているように思えますが、ハイスミスは同性愛の愛情そのものを罪であるかのように捉え、その欲望を一種の犯罪行為のように描いています。

 

「我々は、第二次世界大戦以降となる40年代後半から50年代初期にかけて展開された自然主義写真の重苦しくて、汚れていて、抑圧されたルックを見ました。また、の映画だけではなく、世紀半ば当時のフォトジャーナリストも見ました」とラックマンは説明します。「映画を通して過去を過度に美化するつもりはありません。その時代のフォトジャーナリスト、芸術写真家による考証文献を通して、当時を眺めたのです」 

 

ⓒ2015 The Weinstein Company. All rights reserved.

鍵となる視覚的なリファレンスとして、二人は、コダックフィルムを使った当時のフォトジャーナリストに注目しました。「彼らは都会の風景を記録し、初期のカラー写真を試しました。その多くは女性で、エスター・バブリー、ヘレン・レヴィット、ルース・オーキン、そして後にビビアン・メアーが続きました」とラックマンは語ります。これらの写真家は、カラーが“芸術的な”メディアと捉えられなかった時代に、コダックのエクタクロームフィルムで撮影をしていました。 

 

写真はまた、本作のストーリー展開の一部にもなっています。「テレーズは新進の写真家です。私たちは、犯罪者が抱くような内省的でなまめかしい彼女の気持ちを表現しました。彼女のすべての身振りや様子から、彼女なりの愛の運命を読み取れることでしょう」と述べています。「我々は彼女の映像を通して、広がっていく彼女の世界を垣間見ます。私たちのアプローチは、誰かが恋に落ちるという内省的な視点を、キャロルに熱をあげる彼女の変化として取り入れることでした」 

 

ラックマンとヘインズは、HBOのTVミニシリーズ『ミルドレッド・ピアース幸せの代償』(2011)でスーパー16を経験していました。ラックマンはこう振り返ります。「我々は『ミルドレッド・ピアース』をヴェネツィア国際映画祭で上映することになりました。40年代の写真からフィルムが映像をどう捉えるかという感じをつかんで、DIを通したフィルムの粒子構造を感覚的に得ることができました。 

 

ⓒ2015 The Weinstein Company. All rights reserved.

ラックマンは、観客がフィルム粒子のテクスチャーを通してキャラクターの感情を見ているのだと説明します。はっきりと何かが映されているわけではなく、キャラクターの感情の起伏を見て感じ取っているのです。「エクタクロームが寒色に見える傾向を持っていたことが判りました。それでエクタクロームのカラーパレットの中で寒色と暖色、マゼンタとグリーン、イエローとブルー、その他色味を弱めるために対比する色を取り揃えて使いました」と語ります。「ネガフィルムの色はデジタルにはないクロスオーバーや混色を持っていることも判りました。デジタルはひとつの面に画素が固定され、フィルムで得られるような粒子構造による色の混合がありません。フィルムではハイライトは細かな粒子ですし、シャドウのディテールはより大きな粒子で、それらがある種の情緒的性質をもたらすのです」 

 

ラックマンは、50D 7203、250D 7207、200T 7213、そして500T 7219とさまざまなコダック VISION3 カラーネガティブフィルムで撮影しました。フィルムは閉鎖される前のニューヨーク・フィルム・ラボ社で現像され、ゴールドクレスト社でデジタル インターメディエイトが行われました。「私は色温度を変えたり、時々、屋外を200Tで撮影して、後で完全には色補正しなかったりしました。また、16mmの粒子と彩度を緩和するために少なくとも 1/2 もしくは1絞りオーバー露光しました」と述べています。

 

撮影監督エド・ラックマン(ASC)とケイト・ブランシェット

ⓒ2015 The Weinstein Company. All Rights Reserved.

撮影にはクック S2 スピードパンクロなどの35mm用のレンズと2台のアリ416が使われました。35mm用のレンズは、硝材の最適な場所を用いることでより“フィルムらしい画質”をもたらしました。また、アリのツァイス16.5 - 110mmマスターズームや、クックのスーパー16 10 - 30mm バロパンクロなどのズームも使われました。 

 

ラックマンは、レンズフィルターの使用を控えました。その代わりにクルマ、食堂、アパート、ドアなどの窓越しのショットを組み合わせ、その窓には雨粒が飛び散っていたり、通りからの反射が映りこんでいたり、冬の夜の結露、都会の蒸気などが付いているようにしました。これは観客の視線を塞いで遮るだけではなく、外を見ているキャラクター自身の視線でもあるのです。「私たちは、抽象物で遮られ、反射物を通して見る層状の構成を生み出したストリートとアートの写真家であるソール・ライターの手法を参考にしました」とラックマンは語ります。「世界の表象的な見方だけではなく、誰かが恋に落ちるという心理的な見方、なまめかしい気持ちや官能性をもたらすものです」

 

ラックマンは、こういったスタイルをうまく創り出せたのはコダックのフィルムストックのおかげだと思っています。完璧な例として、キャロルが朝、テレグラムを取りにホテルのオフィスに入る1シーンを引き合いに出します。「彼女がロビーに入り、デスクに近づいてテレグラムを受け取る、それを彼女の夫が見張っていることが判るというドーリーのショットです。窓には強い屋外からの反射があり、屋内に対してどのくらいの情報が得られるか不確かなシーンでした。

 

トッド・ヘインズ監督(左)とケイト・ブランシェット

ⓒ2015 The Weinstein Company. All rights reserved.

非常に露光のコントラストがありましたが、『ミルドレッド・ピアース 幸せの代償』の経験から、屋外でも屋内でもディテールが得られると直感的に分かりました。コントラストのある反射でもフィルムだとディテールを得ることができましたが、デジタルで同じようにできた経験はありません」 

(2015年12月18日発信 Kodakウェブサイトより)

 

『キャロル』2016年2月11日 全国公開

 公式サイト:http://carol-movie.com

 予告映像

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