2017年 5月 2日 VOL.074

シルクのような柔らかさで描き出すアデルのミュージックビデオ『Hello』

35mmに加え、65mm IMAXフォーマットも採用

アデルのミュージックビデオ『Hello』より

<本記事は2016年3月にコダック社が発信した記事の翻訳です>

今年2月に開催されたアメリカ音楽界最高の栄誉とされるグラミー賞において、主要3部門を含む5冠達成という快挙を果たした英国の歌手アデルのサードアルバム「25」は、2015年11月の発売にもかかわらず、その年の他のどのアーティスト達よりも多くのアルバムを売り上げ、ニールセン・ミュージックによるとその数は800万枚を超えました。(注:2017年現在のワールドセールスは2000万枚以上)同アルバムの収録曲『Hello』のミュージックビデオは、公開初日に動画サイトVevoの視聴数2770万回ビュー以上で新記録を樹立、これまでに8億回視聴されています。(注:2017年4月末現在およそ19億5千万回)

 

このビデオは、カナダ・ケベック州出身のグザビエ・ドラン監督(『Mommy マミー』(2015年)、『トム・アット・ザ・ファーム』(2014年))によって、2015年9月に、監督の故郷の小さな農場周辺で数日間かけて撮影されました。彼は長年の協力者で、それまでにドランの3つの作品、『Mommy マミー』、『トム・アット・ザ・ファーム』、フランスのロックバンド、アンドシーヌのミュージックビデオ『カレッジ・ボーイ』(2013年)を撮影しているシネマトグラファーのアンドレ・ターピンを起用しました。

撮影現場のグザビエ・ドラン監督とシネマトグラファーのアンドレ・ターピン

IMAXフォーマットを試したいという思いから、映像クリエイター達はいくつかのシーンを大型フォーマットで撮影しましたが、『Hello』のほとんどは35mmのコダックフィルムで撮影されました。ターピンは、彼らと組んだすべての作品がフィルムで撮影されていますので、撮影フォーマットを決めることは気にならなかったと言います。

プリプロダクションの段階で、ターピンとドランは65mmフィルムで撮影するアイデアを思いつきましたが、「私たちのフレームは1.66のアスペクトレシオだったので、通常の65mm撮影よりもIMAXフォーマットの方がより面白くなると思い決めたのです。65mmの2.35アスペクトレシオを1.66にカットするのはちょっと馬鹿げているので、1.43のアスペクトレシオのIMAXで撮影することにしたのです」と説明します。

IMAXカメラを構えるシネマトグラファーのアンドレ・ターピン

最終的には、最後の2つのシーンがIMAXで撮影されました。ひとつ目はアデルが目を開けた顔のクローズアップと、ふたつ目は池で彼女の周りに吹く葉のショットです。

ビデオの中の豊かなセピア色と白黒のルックは、ドランとターピンが20世紀初頭の写真から刺激を受けたことによるもので、灰色の色調とちょっとグリーンな色合いを持つ鮮明なコントラストのルックにしたいと望んでいました。ターピンは2タイプのコダックフィルム、VISION3 500Tカラーネガティブフィルム5219とVISION3 200Tカラーネガティブフィルム5213で撮影しました。ほとんどのシーンは5213で撮影しましたが、森のシーンでは木々が覆いかぶさることで多少の光量不足になることから5219を使いました。「私は本当に5219が大好きなのです」とターピンは説明します。「私にとってはコダックの最高の功績のひとつです。19は非常に柔らかなルックですが、13よりはまだ少し粒子が粗いと思っています。13で撮影することは今までなかったのですが、テストをしてみたところ、ラッシュを見たとたんにその違いを認識出来ました。私にとっては、5219は5213を一絞り増感したような感じなのです」

アデルのミュージックビデオ『Hello』より

ターピンは5213をフランス語で“ベルーテ”と言っており、彼曰く、それはビロードのようなという意味だそうです。白黒の場合でも、彼はDIプロセス後にオリジナルネガと同じように見えると感じています。「私はその理由を正確に説明することが出来ませんが、5213の粒子はより細かく、そして彩度の点でより豊かなネガフィルムで、それ以上に‘シルクのような’ルックに思えるのです」

 

IMAXカメラに加えて、ターピンはARRICAM LT、435、そして235フィルムカメラで撮影しました。レンズは3本のHawk Vantage One T1レンズセットとマスタープライムのセットも使いました。彼は5.6か8のTストップで露光するのが好きですが、ドランは浅い被写界深度が大好きなので、基本的にはT1.3から2.8辺りで撮影しました。「Hawkレンズはスーパーシルキーですが、それは決して硬くはありません」とターピンは振り返ります。「それはディフュージョンのような方法による柔らかさではなく、もっと優雅で上品です。最終的に白黒の映像では見られませんでしたが、IMAXのラッシュを私たちが見た時には色がとても豊かで鮮明で、ほんの少し四隅にはケラレもありました。それには本当に感動しました。私のiPhoneで見ても35mmより際立っていたのですから」

ターピンは、自身の劇映画はすべてフィルムで撮影してきましたが、コマーシャル撮影は主にARRI ALEXAでした。フィルム撮影で出来てデジタルでは出来ないことは何かという問いに対して、ターピンはこう言います。「それはとても主観的ですが、感じ取ることは出来るはずです。それを言葉で表すならば、フィルムはより広いラチチュードを得られると言えるでしょうし、それは古典的な感覚だけでなくDIにおけるラチチュードでも同様です。極端な撮影条件で撮りたいと思ったら、フィルムはデジタルでは撮れない所でも行けるのです。例えば、フィルムは7から8絞りも吹き飛んでしまった空や窓や、コントロールすることが出来ないような極端なライティングの状態でも機能します。7絞りオーバーの飛んでしまっている窓外でも、それはとても良い感じで見ることができ、そして美しい再現になるでしょう。デジタルでの7または8絞りオーバーは、とても厳しいものになります。さらにデジタルでの映像制作では、ほとんど被写界深度が得られないような作業を余儀なくされるので、芸術的なアプローチを損なうことになります」

アデルのミュージックビデオ『Hello』より

ライティングについてターピンは、家の外からクレーンに乗せた18Kのタングステンライトと基本的なキノフロ・キットという控えめな組み合わせを用いました。彼は自分のよく使うライトであるK5600ジョーカー・バグとETCソースフォー・レコライト、別名ジョー・レコを使い分けました。「これは私がメインに使用しているライトです。なぜなら、あらゆる所でバウンスライトを使うのが大好きだからなんですが、レコと共にジョーカー・バグを気に入っているのは、望むサイズのバウンスサイズにカットするだけだからです」と彼は説明します。「フラッグを使う必要がなく、どこにでもバウンスカードが使えるのです」

 

『Hello』のポストプロダクションはモントリオールのMels Studios Et社で行われました。フィルムは2K解像度でスキャンされ、ターピンによれば、白黒でグレーディングされているためDIには8〜10時間しかからず、カラリストがコントラストやパワーウインドウを使った陰影の調整を行い、アデルの目と顔の作業を行ったくらいのものでした。その後、ドランが来て数時間かけてグリーンのレベル調整を作り上げました。

 

ターピンは、「26才のこの監督が、フィルムをとても愛していることに本当に胸が高鳴ります。今年、私たちは別の劇映画を撮影し、彼はフィルムでの撮影を望んでいて、心から彼が本当に素晴らしい感覚でフィルムとデジタルの違いを認識しているのだなと感動しています」と締めくくりました。

(2016年3月4日発信 Kodakウェブサイトより)

アデル『Hello』

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