2017年 6月 9日 VOL.078

撮影 今井孝博氏に聞く
映画『22年目の告白-私が殺人犯です-』

サスペンスの演出として観客を混乱させる要素をフィルムとデジタルの対比で表現

(C)2017 映画「22年目の告白-私が殺人犯です-」製作委員会

「はじめまして、私が殺人犯です」
その男は、突然現れた。華々しくフラッシュを浴びて―。
時効が成立し、誰にも捕まえられないその男の、あってはならない殺人の告白が、
日本中を釘づけにして、狂わしていく。

1995年に起こった連続殺人事件の犯人を名乗り、手記『私が殺人犯です。』を発表した謎の男、曾根崎雅人を演じるのは藤原竜也。曾根崎と対峙する刑事、牧村航を演じるのは伊藤英明。原作の『殺人の告白』は2012年に韓国で劇場公開されたクライムサスペンスで、270万人を超える観客を動員。入江悠監督が約2年半の年月を費やして日本版リメイクを完成、いよいよ6月10日(土)全国公開となります。

今回は、撮影監督を務めた今井孝博氏に、過去のシーンで16mmフィルム撮影を選択された背景や撮影現場のお話などを伺いました。
 

過去を映像として作り上げる

過去のシーンで16mmフィルム撮影を選択していただきましたが、その背景についてお聞かせ下さい。

 

今井C: 入江監督とは今回初めてご一緒したのですが、実はプロデューサーからこの作品のお話を頂いて脚本を読んだ時に、過去に起こったある事件から現代へと時間が繋がっていて、この作品の根幹である過去をどう表現するかが大変重要だと感じました。当初はデジタルで撮影してくれというスタートだったのですが、海外作品などでは当たり前のように、ひとつの作品でデジタルとフィルムの両方を使い分けしている作品が多いので、日本でもそれが出来ないかというアイデアが浮びました。16mmフィルムの質感が粒状性も含めて、過去を表現するこちらの意図した画に近いだろうと考えて、監督、プロデューサーへ提案しました。ただ、22年前の一連のシークエンスを単なる過去として表現するのではなくて、ある種、映像として完全なかたちとして作り上げたいと思ったのが16mm撮影を選択した一番の理由です。本当は、22年前のシーンだけを16mmにしようとしていたのですが、監督と話していく中で、近い過去(7年前~10年前)のシーンも全てフィルムで撮影しようということになりました。ですので、結局、劇中の過去のシーンは全て16mmですね。現代のシーンは、ARRI AMIRAを使っています。撮影期間は2ヶ月だったのですが、フィルムでの撮影が1ヶ月あって、その後、現代のシーンを1ヶ月かけて撮影するというスケジュールでした。

撮影現場にて、撮影監督の今井孝博氏(左)とセカンドの佐藤光氏

“心地良い不自由さ”のある現場

撮影現場の様子はいかがでしたか?


今井C: 過去の16mmのシーンから撮影がスタートしたのですが、俳優からも「フィルムなの!」という驚きの声はありましたね。現場ではビジコンで画もモニターしていたのですが、HD出力ではなかったので最初は監督含めてスタッフも戸惑いはありました。まあ初日だけでしたけど。私自身としては、久しぶりに“心地良い不自由さ”みたいなものを感じました。撮影の行為自体はデジタルもフィルムもあまり変わらないので、特に遅くなったりはしませんでしたが、カメラの側にスタッフがよく集まっている現場だったと思います。照明はベテランの水野研一さんでした。最近だとモニターを観てライティングを作り込む照明技師さんも増えてきましたけど、水野さんはフィルム撮影の現場の経験も豊富な方でしたので、基本的に現場で演技を観て当てていくという手法でした。実は、監督にもファインダーを覗いて確認してもらってました。久しぶりでしたが、16mm撮影を十分に堪能できたと思います。

撮影監督の今井孝博氏

今回の撮影で特に工夫された点はありますか?

今井C: フィルム撮影の選択ということ以外で言えば、フレームサイズです。実は、過去、現在、テレビの画面など、スタンダード、ビスタ、16:9、シネスコとそのシーンでいろいろなフレームサイズを採用しています。物語がサスペンスですので、観客に対してちょっとした違和感を与えることが出来ればと考えてのことですが、演出的な効果と時代表現のひとつとしての効果も狙っています。テレビの素材も最初はスタンダードですが、後半は16:9になっています。ある映画で、物語の進行によってフレームサイズが変化する演出というか加工があったのですが、そのアイデアを参考にしています。


また、22年前と現代とでは、撮影現場でそれぞれフィルターワークも変えています。22年前は、私も助手でしたので、その当時によく使用していたローコンのフィルターを使用しています。ネガはVISION3 500T 7219のみを使用して、デイシーンでは1/2減感で現像しています。ナイターは光量の問題もありますが、現場で冗談みたいな話ですが、モニターに光量を取られてしまってファインダーの画が真っ暗でした(笑)。こんなに暗かったかなと思いましたけど、これも“心地良い不自由さ”のひとつですが、直感というか、感覚に頼った撮影でした。逆に、現代のデジタル撮影には最新のフィルターを使用したりと色々やってました。

サスペンスとしての虚像と実像

仕上がりについては、どうお感じですか?

 

今井C: 現像はIMAGICAウェストで、仕上げはIMAGICAです。16mmのスキャンはSCANITYを使用しています。先にも述べましたが、22年前のシーンはフィルムだから古い画ということではなくて、過去の表現として完成したある種の美しい画にしたいということをラボの方にも納得して頂いて、ログテレシネではなくSCANITYにしてもらいました。そういったことも含めて、現場でもやり切った感はあります。監督がこの作品のテーマとして、虚像と実像にこだわりたいとおっしゃっていました。サスペンスですので、表と裏があるのですが、フィルムとデジタルの対比もそうですし、その他のメディアで撮影したもの、テレビ画面の画や家庭用ビデオの素材、iPhoneで撮った素材などは加工しないでそのまま使用しています。それらリアルすぎるリアルなものの画と本編の映画のトーンで作った画の対比などで、サスペンスの演出として観客を混乱させる要素を映画の中に盛り込んでいけたと思います。

牧村航刑事役の伊藤英明氏(左)と入江悠監督

メディアとして自由に選択していきたい

今後のご自身の作品でのフィルム撮影については、どのようにお考えでしょうか?

 

今井C: フィルム撮影の面白いところは、扱い方を間違えるとそのままの画が表現されることだと思っています。今までの経験値があるので、それを制御することも可能ですし、逆に限界まで攻めることができるのも面白いです。デジタル撮影だと、微妙なラインを狙ったものだと、こちらの意図が上手く表現されなかったり、かといって極端なことをやり過ぎると元に戻らなかったり。実は、昔からの夢なのですが、いつかは65mmで撮影してみたいです。現実的には、日本でもデジタル撮影とフィルム撮影を両方使用する作品がもっと増えれば面白いと思っていますし、そうすることによって発想が広がり、技術も上がっていきますし、映画を観る人の眼も養われると思っています。もっと自由な発想で、これからも映画を撮影していきたいです。

(インタビュー:2017年5月)

 PROFILE  

今井 孝博
いまい たかひろ
1970年生まれ。東京都出身。日本映画撮影監督協会会員。日本映画学校卒業。たむらまさき氏、藤石修氏に師事。2008年『R246 STORY』で撮影監督デビュー。『eatrip』(2009年、16mm、野村友里監督)、『南の島のフリムン』(2009年、ゴリ監督)、『東京プレイボールクラブ』(2011年、奥田康介監督)、『おとぎ話みたい』(2013年、山戸結希監督)、『共喰い』(2013年、青山真治監督)、『凶悪』(2013年、白石和彌監督)、『ピンクとグレー』(2016年、行定勲監督)、『日本で一番悪い奴ら』(2016年、白石和彌監督)など数々の作品で撮影監督を務める。日本映画撮影監督協会 2013年 第57回三浦賞受賞。第68回毎日映画コンクール撮影賞受賞。

 撮影情報  (敬称略)

『22年目の告白-私が殺人犯です-』
2017年6月10日(土)全国ロードショー

 

監 督 : 入江悠 
撮 影 : 今井孝博(J.S.C)
チーフ : 田島茂(Bキャメ兼)
セカンド: 佐藤光
サード : 橘佑樹
フォース: 藤原健太郎
照 明 : 水野研一
キャメラ: ARRI AMIRA、ALEXA Mini、ARRI 16SR3 HS Advance他
レンズ : Panavision PrimoZoom24-275、
PrimoPrime14.5/17.5/21/27/35/50/75/100/150

〔16mm〕ZeissZoom11-110、Zeiss Prime 9.5/12/16/25/35/50/85 Optex 8

フィルム: コダックVISION3 500T 7219
現 像 : IMAGICAウェスト
仕上げ : IMAGICA
制 作 : ROBOT
配 給 : ワーナー・ブラザース映画
製 作 : 2017 映画「22年目の告白-私が殺人犯です-」製作委員会
http://wwws.warnerbros.co.jp/22-kokuhaku/

『22年目の告白-私が殺人犯です-』予告映像

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