2017年 8月 10日 VOL.083

映画『ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦』

  ― その狙いと撮影手法

映画『ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦』のプラハでの1シーン、レンカ・ファフコバー役のアンナ・ガイスレロバー(左)とヨゼフ・ガブチーク役のキリアン・マーフィ Image courtesy of Sean Ellis / Anthropoid Productions Ltd.

「フィルムはまだまだ現役であり、素晴らしい創作手段である」
​ ― ショーン・エリス監督

1941年12月。占領下のチェコスロバキアに2人の自由の戦士がパラシュートで降り立ちました。彼らの目的は“金髪の野獣”と呼ばれたナチス親衛隊大将、ラインハルト・ハイドリヒの暗殺。ハイドリヒはヨーロッパ中のユダヤ人絶滅政策の指揮をとるナチスの有力者でした。「エンスラポイド(類人猿)作戦」が始まったのです。

綿密な計画のもと、極秘作戦は1942年5月27日にプラハにて実行されました。この作戦には、チェコが未だに連合国であることを世界に示すため、多くの期待がかかっており、また、ナチス幹部に連合国軍や現地のレジスタンスの反撃を示すことも目的としていました。

独立系劇映画の新作『ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦』は、報復する軍人のヨゼフ・ガブチークとヤン・クビシュを演じるキリアン・マーフィとジェイミー・ドーナンを主人公に、暗殺作戦の全貌を描いた作品です。

ヤン・クビシュ役を演じるジェイミー・ドーナン
Image courtesy of Sean Ellis / Anthropoid Productions Ltd.

ショーン・エリスは監督以外に、アンソニー・フルーウィンとともに共同で脚本を担当し、また撮影監督およびAカメラのオペレーターも務めました。本作は批評家たちから「観客を縮み上がらせるシーン」との賞賛をうけ、特に終盤の大聖堂地下の洪水シーンは「本年度最高と言えるリアルさと緊張感を持ったシーンだろう」と熱烈に評価されました。

緊張感に満ちた秘密任務を観客に感じさせるために、エリス監督は手持ちカメラでドキュメンタリーの撮影手法を用いました。そして、当時の外観や雰囲気を出すために、1.3のアナモフィックレンズで撮影するスーパー16を選択しました。

自由の戦士のヨゼフ・ガブチーク役を演じるキリアン・マーフィ Image courtesy of Sean Ellis / Anthropoid Productions Ltd.

監督はこう説明します。「冒頭のパラシュートが着地する瞬間から物語の終わりまで、観客が夢中で主人公たちのサスペンスとアクションに引き込まれるような作品にしたいと思いました。そして、柔らかく彩度を下げた画像を用いることで、記憶の中で起こる過去の出来事のようにしたいと考えました。デジタルで撮影された歴史ものの映画を見ると、私にはその映像がリアルに見えません。リアルすぎるのがかえってダメにしているのです。そういう作品は観客に届きません」

監督はさらにこう続けます。「この作品をフィルムで撮影する必要性は明確でした。私はスーパー16の持つ質感や粒子、そしてアナモフィックを用いたワイドスクリーンの、その美しいスタイルが大好きでした。そして、スーパー16撮影の素晴らしい点は、カメラが軽く、手持ち撮影に適していることです。私が撮りたい“その場にいるような”画を撮ることができました」

緊張感に満ちたシーン、レンカ・ファフコバー役のアンナ・ガイスレロバー(左)とヨゼフ・ガブチーク役のキリアン・マーフィ Image courtesy of Sean Ellis / Anthropoid Productions Ltd.

エリス監督が初めて「エンスラポイド作戦」に惹かれたのは、あるドキュメンタリーを2001年に見た時からだと言います。「時間をかけて調査を進め、集めた情報を“興味のあるトピックス”としてひとつのファイルに貯めていきました。5年後にCM撮影でプラハを訪れた際、ガブチークとクビシュが1942年6月18日の激しい銃撃戦の前に身を隠していた聖ツィリル・メトデイ正教大聖堂に足を運びました。ヨーロッパ史の中で、彼らの行動はほとんど忘れ去られており、この訪問をきっかけにプロジェクトを実現したいと熱意を持ったのです」

監督にとっては真実性が最も重要でした。インスピレーションを得るために戦争映画をあさって視聴し、リサーチを進め、数えきれないほど多くの当時の写真および今日の現地の写真を集めました。監督はプラハにある戦争についての博物館や国防省に保管された検死報告を見る機会に恵まれ、さらには、銃撃による穴や血が付着している、ガブチークとクビシュが亡くなった時に着用していた服を観察することもできました。「私は実際に何が起こったのか、真に洞察することができました」と述べています。

監督はこの企画に対する情熱から、個人的に2台一組のARRI416カメラを撮影用に購入しています。幅広い種類のHawk 1.3 アナモフィックプライムレンズとビデオアシストをプラハのヴァンテージ社からレンタルしました。

暗殺事件後の逃亡シーン、ヨゼフ・ガブチーク役のキリアン・マーフィ Image courtesy of Sean Ellis / Anthropoid Productions Ltd.

撮影チームは、第一撮影助手のラデック・スカデゥナのアシストで、Bカメラのステディカムをデレク・ウォーカーが担当し、エリスは第一撮影助手のキルスティ・アバネシーのアシストでAカメラを担当しました。照明技師はマーティン・グラニラで、現像とワンライト・ラッシュはロンドンのアイ・デイリーズ社が担当しました。

「ラボのチームを含め、私は素晴らしいメンバーに恵まれました」と監督は振り返ります。「この映画は真のインディペンデント映画であり、全員がとても熱心に参加してくれました。アンソニー・フルーウィンは脚本を手伝ってくれましたし、素晴らしいプロデューサーのミッキー・リデルとピート・シレイモンは、私のためにどんなことでもしてくれました。彼らなしに、この作品の完成はありえなかったでしょう」

本作の主な撮影は2015年7月13日に始まり、40日の撮影を経て9月に終了しました。撮影の多くは、ゲシュタポの本部があったぺチェック・パレスなどを含む、実際に「エンスラポイド作戦」が行われた場所を使って行われました。そして背景の撮影にも、プラハ城やカレル橋が使われています。バランドフ撮影所では、ナチス軍が洪水を使ってガブチークとクビシュを外に出そうとした大聖堂地下のセットが用意され、ステージ8に13週間かけて実物大の聖ツィリル・メトデイ正教大聖堂のレプリカが製作されました。

「当時を再現するために、たくさんの時間と労力をかけました。1941年および1942年に実際に計画が実行された場所をできるかぎり用い、服装やメイク、雰囲気には細心の注意を払いました」とエリス監督は言います。「この作品を当時の雰囲気にしたかったので、カメラにタバコフィルターを用いて撮影することで、現像されるフィルムに直に色調を持たせることにしました。デジタル撮影では、臆病になりすぎたり、怠けてしまったりして、決定を後へと延ばしてしまいます。十分に準備をし、自分の欲しいものを明確にしていたので、デジタルインターメディエイトにおける最終仕上げでは、それほど多くの手間を必要としないと理解していました」

監督は、野外撮影にはコダック VISION3 250D 7207、室内には500T 7219を用いました。「これらのフィルムには粒子が見られ、理想的なきめの粗さを画像に加えることができます」と説明します。「500Tは、ダイナミックな照明の地下室のシーンでフィルムの価値を示しました。このシーンでは、部屋の奥から差し込む窓の隙間の明かりだけが主な光源であり、私たちはそこに、いくつかのオレンジフィルターをかけた暗めの照明でキャンドルの光をまねて、さりげなく明かりを加えました。セットが水浸しになると光は完全に吸収されてしまいました。この撮影では、多様なハイライトとシャドウを補正するために、F1.3 からF8の間で露光を調整しました。現像されたラッシュは素晴らしく、雰囲気とディテールが豊かに表現されていました」

監督は、カンパニー・スリー社でカラリストのグレッグ・フィッシャーとデジタルインターメディエイトを仕上げました。「他のスタッフと同様、グレッグも終始、この作品に熱心に取り組んでくれました。最初のカメラテストの手伝いから、制作過程でのワンライト・ラッシュを常にチェックし、彼ならではの美的感覚でフィードバックをくれました。最終的なデジタルインターメディエイトではそれほど多くの作業を必要としていませんでしたが、それでもグレッグはネガですでに完成されている画をいっそう良くする素晴らしい仕事をし、作品に最後の磨きをかけました」

最後に監督はこう述べています。「コダックがロンドンのアイ・デイリーズ社を買収したと聞いて、本当にうれしく思いました。このことは、フィルムがまだまだ現役であり、素晴らしい創作手段であるということを新進気鋭の映画制作者たちに伝えました。フィルムでの映像制作は、デジタルにはない作法と規律、技巧を含んでいます。私は、フィルム撮影のメリットについてプロデューサーたちと議論する用意があるすべての年代の監督たちにお会いしたいと思っています。そこでは芸術とビジネスが正面からぶつかり合うことでしょう」

(2016年9月14日発信 Kodakウェブサイトより)

『ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦』
​ 8月12日(土)新宿武蔵野館ほか全国順次公開!

 原題   : Anthropoid
 製作国  : チェコ・イギリス・フランス合作

 配給   : アンプラグド

 公式サイト: http://shoot-heydrich.com/

 予告編

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