2017年 10月 6日 VOL.089

映画『アウトレイジ 最終章』

 ― 撮影 柳島克己氏 インタビュー

©2017『アウトレイジ 最終章』製作委員会

前作から5年。遂に全面戦争勃発!!
果たしてどんな決着を見せるのか?
全員暴走の最終章!

北野武監督・主演で裏社会に生きる男たちの抗争を壮絶に描いたバイオレンス映画『アウトレイジ』。大ヒットシリーズの完結編『アウトレイジ 最終章』がついに完成。10月7日(土)より全国で公開されます。今回は、このシリーズだけでなく北野監督作品の多くを手掛けられている撮影監督の柳島克己氏に、本作で35mmフィルム撮影を選択された背景や撮影現場のお話などを伺いました。
 

北野作品にマッチするフィルム撮影

北野武監督の作品は、これまで全て35mmフィルムで撮影されていますが、その理由をお聞かせ下さい。

 

柳島C: 一番の理由は、北野作品にフィルムの画が一番マッチしているからだと思います。メディアの選択については監督というよりも、プロデューサーの森昌行さんや吉田多喜男さんたちから「フィルムだよね?」というお話が必ず最初にあります。プロデューサー陣がフィルム撮影についてとても理解して頂いているのは本当にありがたいです。監督は、デジタルで撮影されたご自身の作品を観たことがないので、監督の中では判断しようがないでしょうし、照明の髙屋齋さんを含めて技術面については我々を全面的に信頼して頂いているので、そこは任せてもらっています。ある時監督に、常にフィルムで映画を撮っている方というのは、日本では本当に何人もいないんですよというお話をしたら、「ふーん、そうなんだ」ぐらいの反応でした(笑)。

撮影監督 柳島克己氏(J.S.C.)
©2017『アウトレイジ 最終章』製作委員会

柳島C: 北野作品になぜフィルムが合っているかというと、現場で何度もテイクを重ねないので、ほとんどフィルムが回らないというのも理由のひとつです。何か特別なアクシデントがない限り、1テイクでOKですし、そのため役者、スタッフの現場での緊張感が違います。フィルム撮影とデジタル撮影を単純に比較するべきではないと思っていますが、物理的に限られた中で撮影していくというのは、1テイクの重みが違います。

©2017『アウトレイジ 最終章』製作委員会

制限があるからこそ広がる表現

柳島C: 北野監督の演出で言えることは、その緊張感をプラスの要素としてうまく使っていることだと思います。確かにデジタル撮影は便利かもしれませんが、フィルムでやる北野作品は逆に、不便だからこそ良いと思っています。一般的に人は便利なものを求めていきますが、私は映画というものは表現ですから逆だと思っています。ある種の制限があるからこそ、色々なアイデアが出てきますし、その中で試行錯誤を繰り返していった方が、表現の幅は広がっていくと思っています。例えば、学生によく言うのですが、絵画を描こうとしたときに、全部の色を使って描こうとすると実は色が氾濫してしまって、描き辛かったりします。そこで2色とか3色、極端に言えば1色の墨絵などにすれば、そこにはテクニックだったりアイデアだったりが必要で、当然色々なものが生まれてきます。映画の世界観というのは、その過程で創られていくものだと思いますし、フィルム撮影ってそういうことだと思います。北野作品にはそれが非常にマッチしていると思います。

©2017『アウトレイジ 最終章』製作委員会

実際に現場で苦労された点などありますか?また印象に残っているシーンは?

 

柳島C: 北野監督の現場は本当にいつも楽しいです。苦労するということは、ほぼないです。例えあったとしても、すぐに監督のギャグで茶化されて笑いが起こるという感じです。気にいっているシーンをあげるのであれば、今回は、外でのオープンの撮影がほとんどなかったので、外で撮影しているシーンはどれも気に入っています。北野作品のタッチがインドアのシーンよりも出ていると思います。ちょっとネタバレになりますが、キャストの方々に高齢の方が多いので、座っているシーンが多いんですよ。高齢のヤクザ映画で、監督は「リハビリ映画」なんて言ってましたね。「公開する時には誰かいなくなっているんじゃない?」なんておっしゃってました(笑)。

©2017『アウトレイジ 最終章』製作委員会

本編の一部は、デジタルで撮影されていますね?

柳島C: 冒頭のタイトルまでのシーンと、あと一部の車内のシーンをALEXA Miniで撮影しています。デジタルでの撮影は、実は本編の5%もないと思います。冒頭のシーンは韓国ロケです。ネオン街を車が走っているシーンで、俯瞰で走行中の車全体を撮影するカットでは、カメラの重量などを考えると小さなカメラでないと撮影できなかったのでデジタルを使用しています。その後のシーンの繋がりがあるので、日本からベンツをわざわざ持ってきて、その車体の屋根にポールを立てて真上から撮影しました。韓国ロケは、助監督と撮影部数名という少人数で3日間というタイトなスケジュールでした。

©2017『アウトレイジ 最終章』製作委員会

グレーディングはこだわらない

仕上がりについては、どうお感じですか?

柳島C: 現像と仕上げは東京現像所です。仕上げについては、グレーディング作業は3日もかけていません。フィルムで撮ってグレーディングに時間をかけるってあまり意味がないと思っています。最初のカメラテストの段階で色のトーンを作っておいて、それをグレーディングする前に反映してもらって作業しています。現場で撮った画を後で極端にいじることは、ほとんどないです。グレーディングにこだわる方も多いと思うのですが、私はグレーディングについてはこだわりがないということがこだわりです(笑)。グレーディングに時間をかけることを否定しているわけではなくて、映画にはこだわりがあることは必要なことですので、それで作品が面白くなれば良いと思っています。フィルムで撮った画に関していえば、黒の落ち方がデジタルと比べると全然違いますよね。あの黒の落ち方をデジタルで表現しようとすると結構面倒ですし、フィルムの特性が持っている力だと思います。デジタルの方が感度もあるし便利だとは思いますが、幅のないところでどう表現していくかを考えるのが大事なんですよ。

©2017『アウトレイジ 最終章』製作委員会

アーカイブとしてのフィルム撮影

柳島C: 北野組をフィルムで撮影する理由のひとつに北野作品をずっと残したいという想いがあります。10年後、20年後、極端にいって50年後、100年後でもネガさえ残っていれば、その時の技術でスキャンすればまた観れますから。フィルムで作品を撮れるという環境は、日本は非常に整っていると思いますし、良い作品はフィルムで残しておいた方が良いと思います。何度も言いますが、不便だからこそ、作品の表現としてフィルム撮影の良さがあると思いますし、シンプルだからこそ、映画の世界観を作れるということを私たちフィルムで育ってきた世代がもっと伝えていきたいです。北野組はプロデューサーもそういった点を良く理解してくれていると思います。

(インタビュー:2017年9月)

 PROFILE  

柳島 克己
やなぎじま かつみ

1950年生まれ。岐阜県出身。仙元誠三氏に師事。1987年ドラマ「あぶない刑事」で撮影監督デビュー。1989年『cfガール』(橋本以蔵監督)で劇場作品デビュー。その後『3-4X10月』(1990年)から本作まで16作品の北野武監督作品で撮影監督を務める。2002年、『GO』(行定勲監督)で第25回日本アカデミー賞最優秀撮影賞を受賞、2004年、『座頭市』(北野武監督)で第27回日本アカデミー賞最優秀撮影賞を受賞。2011年、東京藝術大学大学院映像研究科(映画専攻)の教授に就任。

 撮影情報  (敬称略)

『アウトレイジ 最終章』

監 督 :北野武
撮 影 :柳島克己(J.S.C.)
チーフ :吉田真二
セカンド:大和太

サード :藤井良介

フォース:森田亮
照 明 :髙屋齋
キャメラ:ARRICAM ST & LT、ALEXA Mini
レンズ :ZEISS Master Anamorphic 35/40/50/65/75/100/135mm
フィルム:コダック VISION3 50D 5203、VISION3 500T 5219
ラ ボ :東京現像所
制 作 :オフィス北野
配 給 :ワーナー・ブラザース映画/オフィス北野
製 作 :「アウトレイジ 最終章」製作委員会
公式サイト: http://outrage-movie.jp/
映画『アウトレイジ 最終章』本予告

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