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2017年 11月 15日 VOL.091

フィルムの美しさと保存に重点を置くイタリアのオーガスタス・カラー社の現像所

細心の注意と品質が求められるフィルム修復

ローマに拠点を置くラボ(現像所)、オーガスタス・カラー社は、「私たちはフィルムを信じる」を社是としています。家族経営の同社は、有名なチネチッタ・スタジオに車で短時間の距離にあるティヴォリ通りに所在し、ヨーロッパ、北アフリカ、中東の映画およびテレビ番組制作のマーケットで、常に細心の注意と品質に焦点を置きながら45年以上にわたって事業を行ってきました。

「不屈の努力と顧客サービス、フィルムへの強い情熱と共に、オーガスタス・カラーは50年近く経営を続けてきました」と、作業の流れを監督するウィーダ・スミットは言います。「不安定な業界の中で当社を支えてきたのは、品質、サービス、技術的なノウハウ、そして映画制作者のサポートをしてきた中で培った経験などです。私たちは単に存続しただけではなく、オーディオビジュアル業界で常に起こる変化に適応し、先手を打つことができたと言えます」

今日、オーガスタス・カラーは、フォトケミカルラボ、アーカイブ・修復・保存、ポストプロダクション、スタジオ運営など、多岐にわたった100名以上のチームを率いています。セルロイド(フィルム)作品の制作に対して、8ミリ、16ミリ、35ミリのカラーおよび白黒ネガティブを対象に、インターポジフィルムおよびインターネガフィルム、リリースプリント、10K解像度にまで及ぶフィルムスキャンを含む現像サービス全般を提供しています。

オーガスタス・カラーでは、サイズや規模に関係なく、全ての制作プロジェクト対し、献身的な愛情が等しく惜しみなく注がれる

これらの設備を備え、オーガスタス・カラーは定期的にイタリアやその周辺で撮影された小規模および大規模予算のハリウッド映画のサポートを行ってきました。例として、ウディ・アレン監督の『ローマでアモーレ』、ジェームズ・ボンドの『007 スペクター』、リドリー・スコット監督の『エクソダス:神と王』などに加え、他国制作のバフマン・ゴバディ監督の高く称賛された戦争映画『亀も空を飛ぶ』が挙げられます。

フィルム、デジタルを問わず、イタリアで撮影された他国制作映画を支援するため、オーガスタス・カラーはWCPメディアサービス社を通して、最速の放送用ファイルの配信やトランスコーディング、安全なクラウドアクセスによるインスタントオンライン配信を提供しています。

フィルムで撮影されたジョナス・カルピニャーノ監督の『ア・シアンブラ』は2017年カンヌ国際映画祭にて高い評価を得た

映画制作フォーマットとしてのフィルムの復活に伴い、オーガスタス・カラーは、コダックの16ミリおよび35ミリで撮影された大量の2017年公開予定の新作に対し、現像サービスを提供しました。対象作品の中にはフランスおよびモロッコ共同制作のバーリント・ケニエレス監督による『イエール』や、2017年カンヌ国際映画祭でヨーロッパ・シネマ・レーベル賞を受賞したジョナス・カルピニャーノ監督の『ア・シアンブラ』、ルカ・グァダニーノ監督によるアマゾン・スタジオの作品『サスピリア』と2017年ベルリン国際映画祭出品の『コール・ミー・バイ・ユア・ネーム』などが含まれます。さらに2017年ヴェネチア国際映画祭コンペティションで上映される『ハンナ』を含むアンドレア・パラオロ監督の複数の作品も担当しました。

フィルム撮影され、オーガスタス・カラーによって現像されたアンドレア・パラオロ監督の『ハンナ』は2017年のヴェネチア国際映画祭に出品予定

オーガスタス・カラーはイタリアにおいて、ネットフリックス社に公認された唯一の現像所であり、ネットフリックス初のイタリアのテレビシリーズで2017年の秋に配信予定の『暗黒街』のポストプロダクションを行っています。シリーズ最初の2話はヴェネチア国際映画祭においてプレミア上映される予定です。

事業の始まりは1950年代にさかのぼり、ローマの大学で化学を専攻した後に化学製造業で働いていたジャコモ・ペリッチァが、自宅のガレージで友人や地元の映画制作者のために8ミリと16ミリフィルムの現像を始めたことによります。その後、彼の妻の弟であるマウリツィオ・イアコエラが加わり、情熱的で趣味に熱中した二人はガレージでのサイドビジネスの需要を見つけだし、急成長をもたらします。これにより彼らは本職を退職し、会社が今日も所在するティヴォリ通り近くの大きな施設で店舗を開いたのです。

イタリア映画が全盛期を迎える中、テクニカラー社の近くに所在したおかげで、瞬く間にテクニカラーが抱えきれなかった大量の仕事を集め始めます。その素晴らしいサービスと技術によって、カンフーやホラー、アダルト映画などを制作するあらゆる類のインディペンデント映画制作者の発注先になりました。ジャコモは、現在の社長であるオーガストとシニアカラリストであるアレッサンドロの2人の息子たちを、急成長するビジネスに参加するように促し、1972年にオーガスタス・カラーを正式に設立しました。

2017年カンヌ国際映画祭のイタリアパピリオンで開催されたオーガスタス・カラー主催のスペシャルトークショーにて、CEO オーガスト・ ペリッチァ(右)

「高い水準と早い作業時間、丁寧なクライアントの世話で評判を得て、会社は彼らの予想を上回る成長を遂げ、扱える量を超える程の仕事がありました」とスミットは言います。「家族は最新のフィルム機材と熟練の技術者たちに投資を続け、生来のフィルムに対する情熱を注ぎ続けました。父親から息子たち、叔父たち、叔母たち、姪や甥たちへと、フィルムの色と質に魅せられた職人たちによって会社は運営されてきました。それは今日まで、変わらずに続いています。品質と環境への気配りと共に作られた素晴らしい商品と、粗雑な大量生産品には違いがあります。いつ、何を大切にするのか。オーガスタス・カラーが目指すのは、最高のものであって、最新のものではありません。私たちは長期的な視野を好むのです」

フィルムビジネス業界で50年近く存続し、オーガスタス・カラーは6000本以上に及ぶ作品に携わってきました。1930年代にさかのぼる作品の中にはナイトレートフィルムも含まれ、ローマ郊外にある温度管理された専門の施設に収められています。

オーガスタス・カラーは現代の映画制作者の要望に最新の現像技術で応えている

そして最新の現像技術と共に、フィルムの修復と保存は会社の事業の中で重要な部門になりつつあり、フィルムに基づく経験をデジタルの分野へ応用しています。

スミットは強調します。「私たちは銀塩やアナログのカラーサイエンスで培った何世代にもわたる知識を持っており、コミュニケーションを通して、その知識をデジタルの業務に応用しています」

イタリア、北アフリカ、地中海に面する国々の国有フィルムアーカイブのために、繊細なフィルム素材のクリーニングから2K及び4Kの最終デジタルマスター製作まで、フィルム修復の細心の工程が専門の技術者によって監督されています。

オーガスタス・カラーが慎重に修復したクラシック映画の数々:


・『刑事』(1959)ピエトロ・ジェルミ監督
・『殺しが静かにやって来る』(1968)
・『わが青春のフロレンス』(1970)マウロ・ボロニーニ監督
・『セブン・ビューティーズ』(1975)リナ・ウェルトミューラー監督
・『アイ・アム・セルフ・サフィシェント』(1976)ナンニ・モレッティ監督
・『赤いシュート』(1989)ナンニ・モレッティ監督
 

オーガスタス・カラーはデジタル時代を完全に受け入れており、保有するアナログやフィルムに関する設備と技術が、デジタルラッシュ、編集、カラーグレーディング、グラフィックス、VFX、CGIレンダリング、音声、マスタリングおよびバージョニングなどの重要なポストプロダクション事業を支えています。加えてオーガスタス・カラー・スタジオは、衣装部屋、プロダクションオフィスと工房を備えた二つの大きな撮影スタジオを提供しています。

オーガスタス・カラーが保有する二つの撮影スタジオの一つ

保存メディアとしてのフィルムという信念を掲げ、オーガスタス・カラーは近ごろ、長期デジタルデータの保存にコダックのフィルムを利用するPIQL社のサービスを開始しました。PIQLの技術を用いて、データはバイナリと人が読めるフォーマットに書き換えられ、オフラインで保存される前に、コダック高解像度フィルムへと記録されます。フィルム上のデータはすべて検索可能であり、将来的にどのようにデータを復元するかという説明は、読み取り可能なテキストデータでフィルムに記載されています。

フィルム撮影されたフランスおよびモロッコ共同制作のバーリント・ ケニエレス監督による『イエール』はローマのオーガスタス・カラーによって現像された

「フィルムはデジタルデータの保管のために最も耐久性のあるメディアです」とスミットは言います。「フィルムはデジタル分野におけるアーカイブメディアであり、将来もそうあり続けるでしょう」

スミットは次のように締めくくります。「伝統と情熱、そしてイノベーションを基本理念として、オーガスタス・カラーはこれほど長い間、事業を継続することが出来ました。私たちはフィルムの美しさを信じており、作品をフィルムで撮影及び保存するという選択肢をお客様に提供できて嬉しく思います。ここでは常に、規模の大小にかかわらず、すべてのプロジェクトに対して同等の献身的な愛情が惜しみなく注がれるのです」

(2017年8月17日発信 Kodakウェブサイトより)

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