2018年 6月 1日 VOL.108

祝・第71回カンヌ国際映画祭 最高賞パルムドール受賞!
祝・第42回日本アカデミー賞 最優秀作品賞・監督賞・撮影賞
ほか8冠獲得!

映画『万引き家族』

― 撮影 近藤龍人氏 インタビュー

Ⓒ2018『万引き家族』 製作委員会

第71回カンヌ国際映画祭 最高賞パルムドール受賞作品
是枝裕和監督が35mmフィルムで “家族を超えた絆を描く” 衝撃の感動作

 

今回、是枝監督と初タッグを組んだカメラマンである近藤龍人氏に、本作で35mmフィルム撮影を選択された背景や撮影現場のお話などを伺いました。

【ストーリー】

盗んだのは、絆でした。
高層マンションの谷間にポツンと取り残された今にも壊れそうな平屋に、治と信代の夫婦、息子の祥太、信代の妹の亜紀の4人が転がり込んで暮らしている。彼らの目当ては、この家の持ち主である初枝の年金だ。足りない生活費は、万引きで稼いでいた。社会という海の底を這うような家族だが、なぜかいつも笑いが絶えず、互いに口は悪いが仲よく暮らしていた。
冬のある日、近隣の団地の廊下で震えていた幼い女の子を、見かねた治が家に連れ帰る。体中傷だらけの彼女の境遇を思いやり、信代は娘として育てることにする。だが、ある事件をきっかけに家族はバラバラに引き裂かれ、それぞれが抱える秘密と切なる願いが次々と明らかになっていく──。
 
監督・脚本・編集:是枝裕和

音楽:細野晴臣(ビクターエンタテインメント)
出演:リリー・フランキー 安藤サクラ / 松岡茉優 池松壮亮 城桧吏 佐々木みゆ / 緒形直人 森口瑤子 山田裕貴 片山萌美 ・ 柄本明 / 高良健吾 池脇千鶴 ・ 樹木希林
配給:ギャガ

Ⓒ2018『万引き家族』 製作委員会

gaga.ne.jp/manbiki-kazoku
【公開日】
2018年6月8日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

運を呼び込むスタッフワークの凄さ

コダック: 是枝監督とは、今回が初めてのタッグですね?

近藤C: やっとご一緒出来たという感じですね。タイミングが合って本当に良かったです。実は何年か前からCMやPVなどでスケジュールの確認だけは頂いていたのですが、残念ながら合わなくて、今までご一緒する機会がなかったんです。今回は、夏編の撮影からスタートだったのですが、少し前からお話をいただいていたのでスケジュール調整が上手く行って実現できました。
 

是枝裕和監督(左)と近藤龍人カメラマン Ⓒ2018『万引き家族』 製作委員会

コダック: 是枝監督の作品は、これまでも35mmフィルムでの撮影が多いのですが、今回もフィルムでの撮影を選択された背景を教えて下さい。

近藤C: 是枝監督ご自身が、35mmフィルムで映画を撮るということに強いこだわりを持たれている方なので、それが正直な理由です。現状の限られた予算の中でも、フィルムでの撮影だけにはこだわりたいという、監督がこれまで培ってこられた映画製作の流れというか、現場でのロールチェンジなど、フィルムで撮影することで生じる現場の時間の流れが、監督の肌に合っているのではないかなと思いました。私も、フィルムが持っている質感がこの作品には非常に合っていると感じていました。
 

Ⓒ2018『万引き家族』 製作委員会

コダック: 初めて参加された是枝組の現場で特に印象に残っていることはありますか?

近藤C: やはり是枝監督の映画の作り方を理解し、そのやり方を大切にしているスタッフが多くいる現場ですので、そのスタッフワークの凄さには驚かされました。あるシーンでは、シナリオの上では雨のシーンだったのですが、順調にスケジュール通りに撮影が進んでいくと、ちょうど東京に大雪が降るという予報で、偶然にも、より印象に残る雪でそのシーンを撮影することができました。そういった全くの偶然にも問題なく対応していけるし、上手い時間の使い方で、「雪」という運も呼び込んで、それをものに出来るスタッフワークの良さが是枝組を支えているんだなと実感しました。

近藤龍人カメラマン Ⓒ2018『万引き家族』 製作委員会

近藤C: また、是枝監督は、作品を豊かにするために、その日撮影したシーンのビジコンの画からOKテイクを毎日編集して、次の日の撮影に臨むということをされていました。それによって、差し込みのシーンを変えたり、新たなシーンを作ったりして撮影していくという現場でした。ですので、ただ単純に台本上のシーンをこなしていくということではなくて、毎日、少しずつ作品の精度が上がっていくというか、豊かになっていくという現場でした。そういった手法で、撮影が進んでいくという現場って本当に稀だと思いますし、うらやましい現場だなと感じました(笑)。

今回、子役も含めて6人のメインのキャラクターがいるお話ですし、マルチで撮影していくシーンもあるだろうと思って監督にカメラを2台にしますか?と聞いたのですが、監督の映画は常に1台のカメラのみで撮っていくという手法だったので、それも驚きましたね。
 

Ⓒ2018『万引き家族』 製作委員会

3パーフォレーション撮影はメリットが大きい

コダック: 仕上がりについては、どうお感じですか? 

近藤C: 仕上がりについては、フィルムってやはりいいね、ということで監督にも満足していただいていると思います。やり切った感はありますね。フィルムタイプは色々な状況も考えてVISION3 500T 5219のみで、3パーフォレーションで撮影しています。国内の映画製作でフィルム撮影を考えた時に、3パーフォレーションで撮影するメリットは大きいです。現像はIMAGICAウェストで、仕上げはIMAGICAです。夏の海のシーンから撮影が始まったのですが、その時はまだシナリオも完成していない状態で、ルックの方向性も決め切れていなかったのです。監督の過去の作品はどちらかというとすっきりとした画のイメージがあるので、それを踏襲していくべきか、それとも今回は貧困とか犯罪とか、ごちゃっとしたイメージがあるお話なので、彩度を少しだけ誇張させた画にした方が良いのか悩みました。ただ、監督から「青」という色を印象的に組み込んでいきたいというお話がありました。例えば家族の住む家を囲うトタンの色など、ロケハンの最中に監督が見つけられた要素、世界観から膨らませて作品のルックを決めていきました。縁側で6人が花火を見上げるシーンは、初めて6人が揃っているカットなのですが、海の底から魚が覗いているイメージで監督が俯瞰にこだわったシーンです。海の底のイメージも青いですよね。
 

Ⓒ2018『万引き家族』 製作委員会

​近藤C: ネガからのスキャンは、IMAGICAウェストでCine Vivoを使用しています。Scanityとの2択だったのですが、画を観たときに、Cine Vivoの方が若干ですが柔らかい画だったので、今回の作品の質感に合うなと感じました。本当は、せっかくフィルムで撮影しているので、プリントで完成したかったのですが、全体的な予算を考えると難しかったですね。
 

是枝裕和監督(手前)と近藤龍人カメラマン Ⓒ2018『万引き家族』 製作委員会

人の記憶の中にある色を表現するフィルム撮影

近藤C: ある撮影監督の方がフィルムの色は「記憶色」で、人の記憶の中にある色をフィルムは表現できるとおっしゃっていたのですが、私も本当にそう思います。フィルムでしか表現できない色ってあると思いますし、そういったある種の世界観をフィルムの質感は構築できると思っています。今回、最高の栄誉であるパルムドールをいただいた作品に携わることが出来て、非常に光栄に思っていますし、それに恥じないようこれからも精進していきたいです。また、賞をいただいたことによって、より多くの方にこの作品を観ていただけると思いますし、観ていただいた方にフィルムの何かが伝わってくれるといいなと思います。

(インタビュー2018年5月)

 PROFILE  

近藤 龍人
こんどう りゅうと

1976年生まれ、愛知県出身。大阪芸術大学映像学科在学中、熊切和嘉監督の卒業制作『鬼畜大宴会』(1997)に参加。以降、『海炭市叙景』(2010/第65回毎日映画コンクール撮影賞受賞)、『私の男』(2014)、『武曲 MUKOKU』(2017)など多くの熊切作品の撮影を手がける。

また、大学同期の山下敦弘監督作品は初期から、『天然コケッコー』(2007)、『マイ・バック・ページ』(2011)、『オーバー・フェンス』(2016)に至るまで、多くの撮影を担当。その他手がける映画作品に『ソラニン』(2010)、『パーマネント野ばら』(2010/第54回日本映画撮影監督協会新人賞受賞)、『桐島、部活やめるってよ』(2012/第34回ヨコハマ映画祭撮影賞受賞)、『横道世之介』(2013)、『そこのみにて光輝く』(2014)、『美しい星』(2016)などがある。

 撮影情報  (敬称略)

『万引き家族』

監 督 :是枝 裕和
撮 影 :近藤 龍人(J.S.C)
チーフ :小林 拓
セカンド:大和 太
サード :和田 笑美加
フォース:熊﨑 杏奈
照 明 :藤井 勇


キャメラ:
【夏編】ARRI ARRIFLEX 535B、ALEXA Mini(一部使用)
【本編】ARRI ARRICAM ST
レンズ:
【夏編】ARRI Ultra Prime 20, 28, 40, 65, 85, 100, 180mm、ARRI/FUJION ALURA 30-80mm、CANON K-35 25-120mm
【本編】Leica Summicron-C 18, 21, 29, 40, 75, 135mm、Angénieux OPTIMO 24-290mm
フィルム:コダック VISION3 500T 5219
現 像 :IMAGICAウェスト
機 材 :三和映材社
仕上げ :IMAGICA
制 作 :AOI Pro.
配 給 :ギャガ
製 作 :「万引き家族」製作委員会

http://gaga.ne.jp/manbiki-kazoku/

コダック合同会社

エンタテインメント イメージング本部

メールマガジン事務局 
〒140-0002

東京都品川区東品川4-10-13  KDX東品川ビル 
TEL:050-3819-1470   FAX:03-6863-8357

 

・メールでのお問い合わせは こちら

・メルマガのバックナンバーはこちら

・配信登録を解除されたい方はこちら

・新規で配信登録されたい方はこちら

 ※設定変更を反映するまでにお時間がかかる場合がございますのでご了承ください。

・コダック個人情報保護方針はこちら

 

本メールはメルマガ配信登録された方および名刺を交換していただいた方や弊社イベントに参加された方にお送りしています。

本メールに掲載されている内容を許可なく複製・転載することを禁じます。

 

Copyright (C) 2013 - 2020 Kodak Japan Ltd. All Rights Reserved.

 

  • Facebook - Black Circle
  • Twitter - Black Circle
  • YouTube - Black Circle
  • Instagram - Black Circle