2018年 7月 12日 VOL.111

撮影監督リヌス・サンドグレンが、コダックフィルムと和製ヴィンテージレンズで撮影した映画『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』

ビリー・ジーン・キング役のエマ・ストーンとボビー・リッグス役のスティーブ・カレル Photo by Melinda Sue Gordon. © 2016 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved

「表現したい雰囲気を出すためには、必ず正しいツールを選ばなければいけません」と、アカデミー賞を受賞した撮影監督のリヌス・サンドグレン(FSF)は語ります。「フィルムは私的な感じがしますし、感情に強く訴えかけます。フィルムの色表現や粒子感によって、どのフレームもリアルで生き生きとしたものになります。35mmフィルムが『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』にとって正しい選択だったことは間違いありません」

ジョナサン・デイトンとヴァレリー・ファリスが監督し、サイモン・ボーフォイが脚本を執筆した『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』は、女子テニスの世界チャンピオン、ビリー・ジーン・キングと、博打好きで男性至上主義者を自認する元男子チャンピオン、ボビー・リッグスとの1973年に行われたテニスの試合を描いています。

ビリー・ジーン・キング役のエマ・ストーンとボビー・リッグス役のスティーブ・カレル Photo by Melinda Sue Gordon. © 2016 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved

「ブラックユーモアを含んだ映画である一方、『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』は、主人公の人生における公私の様々な側面を探りながら、非常に感情を揺さぶり、時には残酷なまでに悲しい物語であると言えます。ビリー・ジーンとボビー・リッグスはそれぞれテニスで名声を得ていましたが、2人の人生は完全に崩壊していました。ビリー・ジーンは、彼女を担当する女性美容師マリリン・バーネットに恋をしており、自身を溺愛する夫に頭を悩ませています。ボビーは、自分のギャンブル好きが原因で妻に出ていかれているのです」とサンドグレンは語りました。

ビリー・ジーン・キングとボビー・リッグスは、ニューヨークで開催された記者会見で、1973年7月11日にヒューストン・アストロドームで行われる試合を笑顔で宣伝した。

「また、本作の題材は、平等や多様性、男女間の政治闘争といった、より幅広く、より国際的な問題も描いています。半世紀を経た現在でも共感を呼ぶ問題です」

「こういったすべてを念頭に置き、ヴァレリーとジョナサンが作ろうとしたのは、公私の苦しみを生きるキャラクターたちと共に、本当にその場にいるような感覚になれる実際の場所、当時のファッションで撮影した、本物の没入型の映画でした。緻密な美術や衣装デザインを、フィルムの質感やダイナミックな色の表現力と合わせるのが、物語中のキャラクターとの繋がりを生み出す最高の方法であることを、私は『アメリカン・ハッスル』や『ラ・ラ・ランド』といった作品の経験を通して知っています」

ボビー・リッグス役のスティーブ・カレル Photo by Melinda Sue Gordon. © 2016 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved

感情を揺さぶる衝撃やドラマの本質的な側面を強めるため、サンドグレンは監督2人から、『フレンチ・コネクション』(1971年、撮影監督オーウェン・ロイズマン、ASC)や『コールガール』(1971年、撮影監督ゴードン・ウィリス、ASC)、『ナッシュビル』(1975年、撮影監督ポール・ローマン)といった古典スリラーの手法での映像に、ネオ・ノワール的なアプローチを取り入れるよう頼まれました。それらの映画のすべてが、フレーミングや色、トーンについて、インスピレーションの参考となることが分かりました。

サンドグレンが最初に考えたのは、本作をアナモフィックのスーパー16で撮ることでした。「粒子感が好きなのと、1970年代の設定にはそれが一番合っていると感じたからです」と彼は述べています。「16mmはきれいに仕上がりましたが、キャラクターのフレーミング上の制約と、3パーフォレーション/35mmでの撮影とを組み合わせれば、ビンテージのズームレンズを選択肢として広げられることに気が付きました。基本的な我々のルールはこうです。キャラクターが我々を人生に入り込ませてくれない時には、その分距離を取ること。個人的なことを描くシーンで、キャラクターが我々を中に入らせてくれた時は、ズームインか手持ちカメラのプライムレンズでクローズアップを撮ることです」

ビリー・ジーン・キング役のエマ・ストーン Photo by Melinda Sue Gordon. © 2016 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved

ロサンゼルスのレンタル会社キャムテックが、ARRI LTとSTの35mmカメラに加え、アンジェニュー、キヤノン、興和といったビンテージの様々なズームレンズおよびプライムレンズを供給しました。撮影はロサンゼルス近郊で2016年4月と5月に35日間にわたって行われ、サンドグレンがAカメラを、アリ・ロビンスがBカメラを操作しました。

サンドグレンは、『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』の大部分を35mmのコダック VISION3 500T カラーネガティブ フィルム 5219で撮影し、日中の屋外でのテニスの試合は250D 5207で撮影しました。「2つとも色の表現に優れたフィルムで、思った通り、この2つの粒子構造は視覚的に非常に合っていました」と彼は振り返ります。

撮影現場で35mmカメラを肩に担ぐ女優エマ・ストーンと、その背後から見守る撮影監督リヌス・サンドグレン(FSF) Photo credit: Melinda Sue Gordon.

念入りに、柔らかく現実的な現場の照明と合わせ、サンドグレンは映像に求められたネオ・ノワールの要素を、現場で1/3絞りネガをオーバー露光にし、さらにラボ(フォトケム)で増感現像することで助長しました。これらは、最終的な映像において全体のコントラストや色の彩度、粒子感を強める効果がありました。

「『ラ・ラ・ランド』では、ラボでの減感現像を選択しました。白のディテールを保つために黒を締めず、フィルムの全体的なコントラストを弱め、細かな粒子構造を得るためです。一方、ラボで私が『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』でやったような増感現像をすれば、過度の現像によってすばらしい深みのある色や強い粒子感が得られると同時に、白はより白く、黒はより黒く、映像のコントラストはより強くなります。すべてネガフィルムに自然と焼き込まれるのですが、この作品にぴったりなのはそれだと、ジョナサンとヴァレリーと私は感じました」

左から、監督のFジョナサン・デイトンとバレリー・ファリス、主演のエマ・ストーン Photo by Melinda Sue Gordon. © 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved

この手法にレンズと自然な照明を組み合わせた総合効果によって、様々な雰囲気のルックを生み出すことができました。マリリンが初めてビリー・ジーンの髪を切る時やその後の2人の情熱的なセックスシーンでのエロチックで温かく、夢のようなビジュアルなど、作中に多々ある感情的なシーンで効果を発揮しています。彼は、他のキャラクターたちの哀愁ある孤独を強調することにも成功しました。リッグスは、たびたび両端が漆黒に落ちるフレームで、離れたところから孤立して切り取られたり、自分の妻がマリリンと関係を持ったと知った後のビリー・ジーンの夫が、はっきりと名残惜しそうなシルエットでフレーミングされたりします。

Image courtesy of Fox Searchlight Pictures

「デジタルでストーリーを語るべきよほどの理由がなければ、フィルムで撮影する方がはるかに好きです。単純にフィルムは表現が豊かなのです」とサンドグレンは言います。「例えば肌のトーンを考えてみてください。フィルムだとすべての色を幅広く捉えられるのに対し、デジタルの肌のトーンはベージュがかった色です。さらに、照明に合わせてフィルムのネガを露出不足や露出過度にするのも難なくできますし、その後ラボで増感したり減感したりして、ごく簡単に違う“ルック”(映像の見た目)を作り出せます。デジタルだともっと手間がかかるうえ、思った通りの結果を得られないかも知れません。『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』のキャラクターそれぞれに異なるフィルムの表現方法を施すのは本当に楽しかったです。そしてそれが、ドラマチックなストーリーを観客に届ける基礎であると私は信じています」

撮影監督リヌス・サンドグレン(FSF) Photo by Melinda Sue Gordon.

『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』の後、サンドグレンは、E・T・A・ホフマンのファンタジー小説『くるみ割り人形とねずみの王様」の実写化をラッセ・ハルストレムが監督する『The Nutcracker and the Four Realms(原題)』を35mmと65mmの5パーフォレーションのフィルムで撮影し、色の豊かさがフィルムの大きな魅力であると証明しました。サンドグレンは現在、ニール・アームストロングの月面着陸を描いたライアン・ゴズリング主演の『First Man(原題)』に取りかかっており、再び『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼル監督とタッグを組みます。

「『First Man』はまた別の人物を描く壮大な物語で、ニール・アームストロングというキャラクターと1960年代の宇宙での冒険に観客を入り込ませるため、信ぴょう性が非常に重要となります」とサンドグレンは述べています。「皆さんを実際そこにいるかのような感覚にさせるという点において、その粒子感や質感、色彩など、フィルムはまたしても最適のツールとなるのです」

(2017年11月3日発信 Kodakウェブサイトより)

『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』

 原 題: Battle of the Sexes
 製作国: アメリカ
 配 給: 20世紀フォックス映画​

 公式サイト: http://www.foxmovies-jp.com/battleofthesexes/

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