2019年 1月 11日 VOL.127

映画『喜望峰の風に乗せて』 - 撮影監督 エリック・ゴーティエが、心を揺さぶる時代の美しさをコダック 35mmでいかに生み出したかを探る

Ⓒ StudioCanal/Blueprint Pictures/BBC Films. All rights reserved.

フランスの撮影監督 エリック・ゴーティエ(AFC)がコダック 35mmで撮影した『喜望峰の風に乗せて』は、イギリスの実業家でありアマチュアの船乗りであるドナルド・クローハーストと、彼の不運な挑戦の実話に基づく物語です。ドナルド・クローハーストは1968年、初の単独無寄港世界一周となるサンデー・タイムズのゴールデン・グローブ・ヨットレースに参戦しました。

ジェームズ・マーシュ監督によるスタジオ・カナル/BBC制作のこの低予算映画では、人知れずレースを放棄したクローハースト(コリン・ファース)が、周航を達成したように見せかけるために位置情報を偽って報告した後、壮大な航海で直面する彼の心の錯綜と葛藤を描いています。妻のクレア(レイチェル・ワイズ)と子供たちは心配しながら家で帰りを待っていたのですが、クローハーストの失踪後に発見された彼の個人的な記録から、彼の航海が精神障害と自殺で終わったことが窺えるのです。

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本作の主要な撮影はイングランドのデボン州テインマス周辺の陸地と海で行われました。また、地中海のマルタ島でも撮影が行われ、カルカラという場所にあるメディテラニアン・フィルム・スタジオのウォータータンクと外海で海のシーンが撮影されました。クローハーストの船、「テインマス・エレクトロン」と名付けられた約12メートルのトリマラン(3つの胴体を持つヨット)のレプリカが本作のために造られました。船内が狭いため、船の内部はセクションを分けて組み立てられ、アクションは西ロンドンの防音スタジオで撮影されました。ネガの現像を担当したのはロンドンのシネラボです。

「ストーリーと脚本についてジェームズ監督と話し合い、肉感が重要だということがすぐにはっきりしました」とゴーティエは言います。ゴーティエの過去のセルロイド(フィルムの意)作品には『モーターサイクル・ダイアリーズ』(ウォルター・サレス監督)、『イントゥ・ザ・ワイルド』(ショーン・ペン監督)、『インティマシー/親密』(パトリス・シェロー監督)などがあります。「私たちはこの物語で恐怖や愛、狂気といった人間の感情を感じたいと思いました。そして海と空の自然美と同時に、異なる気候条件の寒さと暑さも撮りたいと思ったのです。肌のトーンと自然が重要でした。それにはフィルムこそがふさわしく、デジタルはこういった命の宿った肉感的な視覚的要素を捉えるのには向いていないということが分かっていました」

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本作の画作りに参考にした作品の中でゴーティエが強い感銘を受けたのは、『ローカル・ヒーロー/夢に生きた男』(1983年、ビル・フォーサイス監督)の夕暮れの海辺と屋内のシーンでの、撮影監督 クリス・メンゲスによる自然光、もしくは最小限の照明の使い方だったそうです。「コントラストが強すぎたりシャープすぎたりする映像は求めていませんでした。私にとって映画撮影とは、照明の当たった美しい映像にすることではなく、むしろ撮影した映像の質感や雰囲気を通して自然主義にストーリーを語ることだったのです」

ゴーティエによれば、アスペクト比も重要な検討事項だったそうで、ツァイスの古いスフェリカル・レンズを使って本作をワイドスクリーン 2.35:1 で撮影することにしました。「この物語には圧倒的な海の力があるため、壮大さを感じるシンプルな横長のフォーマットにしたかったのですが、アナモフィックのルックの洗練された美しさは必要ありませんでした」とゴーティエは語っています。

ヘア、メーキャップ、衣装、小道具で時代設定を見せる一方、ゴーティエは35mmの独特の持ち味をレンズやソフトなフィルター、ラボでの増感・減感現像と組み合わせて用いることにもこだわりました。彼の言う「鮮やかだが褪せた」ルックを作り出し、物語を1960年代後半という時代背景に溶け込ませるためです。

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「その時代のエッセンスを捉えるため、2パーフォレーションのスーパー35で撮影しました。2パーフォレーションのフレームの高さは当時の16mmのニュースやドキュメンタリーの素材に近く、その時代のフィルムストックの粒子、質感、ルックに似せるため、露出とラボでの現像で全体のルックを調整することができます。2パーフォレーションには経済的であるという利点もあります」と彼は説明します。「古いツァイスのレンズは、海や太陽からのフレアに対しても敏感でありつつ、私が引き立てたかった柔らかくミルキーな黒を持つ繊細な質感をもたらします。ハイライトをソフトにするのにグリマーグラスを、クローズアップにクラシックソフトを使い、少しだけ映像にディフューズをかけました」

撮影は主にコンパクトなアトーン・ペネロープ 35mmカメラの手持ち撮影で行われました。2パーフォレーション向けに特別に設計された最初のカメラです。ゴーティエは撮影のほとんどに感度の高い2タイプのフィルムを使い、彼が求めていた、鮮やかだが褪せたルックを強調するために、両方ともラボで減感現像しました。基本的には、日中のキャビン内部のクローハーストのショットと夜間のシーンではコダック VISION3 500T カラーネガティブ フィルム 5219が使われ、日中の屋外、とりわけ案ずるクローハーストの家族のショットにはコダック VISION3 250D カラーネガティブ フィルム 5207が使われました。

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「500T 5219と250D 5207は共に全体的なコントラストと色味がすばらしく、それらが互いにうまく調和しています。ラボで少し現像不足にして、私が求めていたような褪せた、自然主義の仕上がりが得られました」と彼は述べています。

しかし、大海でどんどん絶望的になっていくクローハーストの状況を描くために、ゴーティエは別の方法も用いたのです。彼はこう説明しています。「巨大な海のど真ん中でさまよいながらも、何とかレースに勝とうとするクローハーストの精神は、別のところに飛んでいました。強まっていくクローハーストの妄想、つまり、彼が感じ始めた海や空、宇宙との奇妙な繋がりを、陸地にいる彼の家族の自然主義なシーンに挿入するといっそう力強くなるであろう、より強調されたルックで表現しようと決めました」

「そこで他のフィルムよりも自然な鮮やかさと強いコントラストが得られるコダック VISION3 50D カラーネガティブ フィルム 5203を使ってこれらのシーンを撮影しました。ここでは物語の進行に合わせて、ラボで1絞り、続いて2絞り増感した連続するテイクにしました。このネガの過度な現像は、彩度やコントラストの斬新的増加、これまで以上の極彩色、黒味はより黒く、青空はより深く、そしてより粒子感の強いシャープな映像となりました。もちろん、これらはすべてデジタルで試すこともできますが、狙い通りにするのは難しいでしょうし、見苦しい仕上がりになると思います。フィルムは非常におもしろく、納得のいくものなのです」

彼はこう締めくくります。「この作品においてフィルムは見事だったと思います。フィルムによって、きれいで幅広い色のパレットが得られ、クローズアップの親密さや肌のトーンの表現、自然の海や空の描写について言えば、繊細さに優れています。デジタルでフィルムのようなルックを作ろうとすると、いつもがっかりさせられます。ですので最初からフィルムで始めるのは非常に理にかなったことなのです」

「フィルムを選んで良かったと思っていますし、コダックが映像制作者をサポートしてくれることもうれしく思います。私たちみんなのためにフィルムを残していけるよう、もっと多くの監督、プロデューサー、撮影監督にも積極的にフィルムを使って欲しいですね」

(2018年1月2日発信 Kodakウェブサイトより)

『喜望峰の風に乗せて』

 原 題: The Mercy
 製作国: イギリス
 配 給: キノフィルムズ

 公式サイト: http://kibouhou-movie.jp/

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