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2019年 3月 1日 VOL.132

35mmの真剣勝負。
映画界への挑戦がここから始まる。

若手映画作家の発掘・育成を目的とした国家プロジェクト『ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2018』完成5作品および監督のご紹介

(C) 2019 VIPO

『ndjc:若手映画作家育成プロジェクト』は、日本映画振興事業の一環として文化庁よりVIPO(映像産業振興機構)が委託を受け、優れた若手映画作家を対象に、本格的な映像制作技術と作家性を磨くために必要な知識や技術を継承するためのワークショップや製作実地研修を実施しています。新たな才能の発掘を目的として作品発表の場を提供することで若手映画作家を支援し、日本映画の活性化を目指しているプロジェクトです。2006年度から今年度まで、合計67名の若手映画作家が、このプロジェクトに参加し短編映画を完成させました。

本年度も8月に行ったワークショップから選出され、製作実地研修に進んだ5人の若手監督が、講師による脚本指導を経て、各制作プロダクションのご協力のもと、プロのスタッフ・キャストと共に35mmフィルム撮影による短編映画を制作し、このたび完成いたしました。

『ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2018』完成5作品は、東京が有楽町スバル座にて3月2日(土)~3月8日(金)、名古屋がミッドランドスクエア シネマ2にて3月8日(金)~3月14日(木)、大阪がシネ・リーブル梅田にて3月16日(土)~3月21日(木)に期間限定で劇場公開されます。各会場では連日監督ほか関係者による舞台挨拶が予定されています。(上映会や作品情報の詳細はndjc公式サイトhttp://www.vipo-ndjc.jp/ をご覧ください)

今回、5人の監督から、35mmフィルム撮影で作品を仕上げた感想をお寄せいただきました。本プロジェクトのスーパーバイザーを務められた土川勉氏のメッセージと合わせてご紹介いたします。

くもり ときどき 晴れ

監督・脚本: 板橋基之(いたばし もとゆき)
撮影: 大内 泰
照明: 福島拓矢
制作プロダクション: ブースタープロジェクト 
出演: MEGUMI 浅田美代子 水橋研二 有福正志 
監督・作品の詳細はコチラ → http://www.vipo-ndjc.jp/ndjc/4257/

板橋 基之 監督からのコメント

35mmフィルムでの撮影は初体験でした。限られた予算の中でのフィルム撮影はスリルがあってゾクゾクします。演技を細かく詰めて、完璧に整ってからの本番。回りだしてからピーと鳴る立ち上がりの合図。本番中のフィルム回転音。取り換えのきかないシーンを焼き付けている、という実感があり、ワクワクドキドキ、楽しくて仕方がありませんでした。
フィルムで、機材が大きくて重くて不自由で…そういう撮影現場というものは、瞬間瞬間の集中力を高めてくれて、映画に責任を持つ、という感覚を芽生えさせてくれた、と思います。チャンスがあれば、またフィルムで映画を撮りたい!そう思っています。

『くもり ときどき 晴れ』の撮影現場 (C) 2019 VIPO

はずれ家族のサーヤ

監督・脚本: 岡本未樹子(おかもと みきこ)
撮影: 加藤航平
照明: 水瀬貴寛
制作プロダクション: テレビマンユニオン
出演: 横溝菜帆 黒川芽以 増子倭文江 田村泰二郎 森優理斗 
監督・作品の詳細はコチラ → http://www.vipo-ndjc.jp/ndjc/4255/

岡本 未樹子 監督からのコメント

カメラテストの際の話です。スタッフがフィルムで撮影できる事に目を輝かせていた時、子役の女の子が言いました。「フィルムってなに?」。私達の映画撮影はここから始まりました。私が今回のフィルム撮影によって得られたものは“覚悟”との出会いだった様に思います。フィルムを使用する事により制限される時間やカット数。只々自分にあったのは“1カットにかける想い”。これだけです。お芝居、カメラワーク、天候、風も、全てをこの1カットに…!撮影最終日に「なんかすごく緊張する」と子役の子が言いました。ふと周りを見ると、そこにはスタッフ皆の熱い表情が見えました。フィルムで映画を撮影するってこういう事なのかもしれません。

『はずれ家族のサーヤ』の撮影現場 (C) 2019 VIPO

最後の審判

監督・脚本: 川上信也(かわかみ しんや)
撮影: 田中智仁
照明: 根岸 謙
制作プロダクション: ジャンゴフィルム 
出演: 須藤 蓮 永瀬未留 黒沢あすか 荒谷清水 
監督・作品の詳細はコチラ → http://www.vipo-ndjc.jp/ndjc/4253/

川上 信也 監督からのコメント

私はCMディレクターをやってきましたので、フィルム撮影自体は経験積みでしたが、近年デジタルで撮影する事が主流で役者の演技を長回ししたり、テイクを重ねる事に慣れていましたので、久しぶりのフィルム撮影には緊張がはしりました。しかもさまざまな制約の中での撮影でしたので、ほとんどのテイクを1テイクOKで進めていく必要がありました。これは例えるなら柔道や剣道の様な一本勝負のスポーツに挑むような物です。これまでの経験や、事前の綿密な準備、そういった私の全てを総動員して焼き付けられたフィルムには理屈を超えた力があるなと感じました。この経験は今後、私が映画を撮っていく上でかけがえのない財産になっていくと思います。

『最後の審判』の撮影現場 (C) 2019 VIPO

サヨナラ家族

監督・脚本: 眞田康平(さなだ こうへい)
撮影: 田島 茂
照明: 古橋孝映
制作プロダクション: スタジオブルー 
出演: 石田法嗣 根岸季衣 村田 唯 土居志央梨 佐野和宏 斎藤洋介 
監督・作品の詳細はコチラ → http://www.vipo-ndjc.jp/ndjc/4251/

眞田 康平 監督からのコメント

フィルムの質感に一番感動を覚えたのはテスト撮影の時だった。その後は正直、この映画が成り立つのか、演出はこれでいいのか、ひたすらそっちに集中していたので、あっという間にフィルムを使い果たし、それでもなんとか撮り終わって、現像から上がってきたのは、その時の自分たちがそのまま映ったなんとも不恰好なフィルムだった。撮影前に想像していた事なんて一網打尽にされ、私たちがやろうとした片鱗や実際に現場で起こったことが、直にフィルムに写し取られている。フィルムはなんとも残酷だった。しかしそれが映画の根本、何かを『撮る』という根本なのだとも感じた。この映画で少しだけ、その撮るという行為に向き合えたような気がする。

『サヨナラ家族』の撮影現場 (C) 2019 VIPO

うちうちの面達(つらたち)は。

監督・脚本: 山元 環(やまもと かん)
撮影: 今泉尚亮
照明: 守利賢一
制作プロダクション: シネムーブ 
出演: 田中奏生 田口浩正 濱田マリ 小川未祐 山元 駿 
監督・作品の詳細はコチラ → http://www.vipo-ndjc.jp/ndjc/4249/

山元 環 監督からのコメント

映画史に残る方々もフィルムで撮っていたのかと思うと、自分の力量のなさを痛感するば かりです。人が生きる様をフィルムに焼き付けるというシンプルさ。そのシンプルさに改めてもの凄いロマンを感じました。現場で監督はしているものの、フィルムに焼き付けられる実際の美しい映像はファインダーを覗いている撮影監督しか見えていない。どんな映像が上がってくるのか、楽しみでもあり、怖い。自分の想像力をフル活用して撮影していく実感こそ映画監督の醍醐味でした。シンプルに人を写すフィルム。人に対しての感動と情熱を、1コマ1コマに込める監督になりたいと強く思いました。自分の視座を強制的に見せる映画だからこそ、映画を観ただけで山元環という監督に出逢って良かったと思ってもらえるように。

『うちうちの面達(つらたち)は。』の撮影現場 (C) 2019 VIPO

07 土川さん.jpg

近年、邦画の公開本数は年間約600本と格段に増えてきましたが、映画製作の形態や上映の方法は時代の流れと共に急速に変化しています。しかし素晴らしい作品が生まれる現場の緊張感は、今も昔も変わらないはずです。フィルム撮影の現場はそれを象徴するもののひとつではないでしょうか?
2018年度で13年目を迎えた「ndjc」。私たちは若き監督たちの熱い思いを実現させるため、優秀なプロデューサー、制作プロダクションの方々のご協力のもと、最高の現場を用意し「新たな物語」をこれからも創出していきます。

土川 勉 氏 プロフィール(つちかわつとむ)

1989年『Aサインデイズ』(崔洋一監督)でプロデューサーデビュー。
その後、大映と角川映画にて製作畑一筋に44作品のプロデュースを担当。
主な作品は『CURE』(1997年黒沢清監督)、『回路』(1999年黒沢清監督・カンヌ国際映画祭国際批評家連盟賞受賞)、『ガメラ』、『ガメラ2』、『ガメラ3』(1995年、1996年、1999年金子修介監督)、『DEAD OR ALIVE 犯罪者』(1999年三池崇史監督)、『沈まぬ太陽』(2009年若松節郎監督・第33回日本アカデミー賞最優秀作品受賞)など。
現在はSKIPシティ国際Dシネマ映画祭ディレクター。
 

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