2019年 6月 7日 VOL.140

映画『町田くんの世界』- 撮影 柳田裕男氏インタビュー

(C)安藤ゆき/集英社 (C)2019映画『町田くんの世界』 製作委員会

『舟を編む』『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』の石井裕也監督が、「別冊マーガレット」に連載され、第20回手塚治虫文化賞で新生賞を受賞した安藤ゆきの同名コミックを実写映画化。石井監督にとっては初の少女漫画原作となり、主人公の2人には、演技経験がほとんどない新人の細田佳央太と関水渚を抜擢。撮影は、近年『ちはやふる 三部作』や『君の膵臓をたべたい』などのヒット作を数多く手がけておられる柳田裕男氏(J.S.C.)が担当。石井監督と映画で初タッグを組まれた柳田キャメラマンに、本作で35mmフィルム撮影を選択された背景や現場のお話を伺いました。

柳田裕男キャメラマン

フィルム撮影に決まるまでどのような経緯がありましたか?

柳田C: 私がこの組に参加をする前に、実は石井監督とプロデューサーが先にフィルムではどうかという話をしていて、当初はスーパー16で撮影してみてはという話が出ていたそうで、ただ今回の作品は合成カットや雨降らしなどが多くあったり、新人俳優の起用など、いくつかの理由でデジタルで撮影した方が結局は良いだろうという方向で話が決まっていました。実際に私が参加した時には、デジタル撮影の方向でロケハンなども行っていて、そのまま準備が進んでいました。ところがその後、メインスタッフだけの決起会があって、その時に美術の井上心平さんが石井監督に、「フィルムの可能性ってまだあるんですかね?」と聞いたんです。そうしたら、元々16mmの方向性もあったので、監督は「もちろんアリだよね」という話になり、私としては、フィルムで撮影するなら合成カットとの融合などを考えると、絶対に35mmの方が合っているという感覚があったので、フィルムで出来るのなら35mmでやらせて欲しいとラインプロデューサーの原田文宏さんにお願いしました。原田さんも少しだけ動揺されていましたけど、実際に予算組みをするにあたって、ラッシュプリントを焼かないとか、以前と比べるとデジタイズするためのスキャンも安価にはなってきていますし、三和映材社から3パーフォのカメラも借りられたので、結果的に35mmフィルムでいけたと思っています。実際に、監督はこれまでご自身の映画やCMでフィルム撮影の経験も豊富な方ですし、特にテイクを重ねていく監督ではないので、ネガの総量も決めて撮影に臨めました。ただ、今回、主演の2人が新人ということもあるので、そこはテイク数がいってしまう可能性はあったのですが、最終的には想定内の使用量約5万フィートで収まりました。

石井裕也監督 (C)安藤ゆき/集英社 (C)2019映画『町田くんの世界』 製作委員会

実際の撮影はどういったスタイルで臨まれたのですか?

柳田C: 今回の撮影部は、メーターは私自身が計測していたのでチーフを置かないで、セカンド吉浦正人君、サード三輪亮達君、フォース柴尾和飛君という編成です。吉浦君も三輪君も、石井監督のCMの現場で、35mmフィルム撮影の経験があったので、今回、デジタル撮影が急遽フィルム撮影に変更になった時でも柔軟に対応出来ました。もし彼らが助手でなかったら撮影部の編成として躊躇していたかも知れないですね。実際は、彼らには「フィルム撮影になったから、以上!」で済みましたけど(笑)。現場でのロールチェンジも早くて助かりました。照明の宮尾康史さんとは、もう10年以上色々な作品でご一緒しています。フィルム撮影の場合、宮尾さんが現場で照明を調整していって、私もメーターを測って確認しながら進めていくという手法でやっています。カメラの周りで全てが構築されていく感じです。デジタル撮影の場合は、監督や照明技師がモニターを観ながら演出や照明を決めたりしますが、石井監督はどちらの撮影でもモニターは全く観ない監督なので、特にいつもと変わらない現場でしたね。フィルムの現場の良さというのは、撮照のスタッフ以外の美術部やヘアメイクのスタッフ達、普段はカメラ周りにいないスタッフ達もカメラのすぐ後ろで自分たちの眼でちゃんと役者の演技を観て映画を作っていくことだと思っています。スタッフがモニターしか観ないという最近の現場と比べると、カメラ周りにスタッフがちゃんと詰めている状況に自然となるのが、フィルムの現場の醍醐味だと思います。

(C)安藤ゆき/集英社 (C)2019映画『町田くんの世界』 製作委員会

(C)安藤ゆき/集英社 (C)2019映画『町田くんの世界』 製作委員会

主演の方は演技経験がほとんど無かったそうですね。

柳田C: そうなんです。撮影期間は1ヶ月半ぐらいで、舞台は学園ものですので佐野にある中学校でロケを行いました。主演の町田くん役の細田佳央太君は、1,000人以上の中からオーディションで選ばれての今回が初主演でしたので、撮影の1ヶ月前から監督とリハーサルを何度もやっていました。基本的な役者としての考え方や、どういう風に演技をすると一生懸命な町田くんに見えるのかとか、それこそ走り方なんかも細かく指導されていました。

(C)安藤ゆき/集英社 (C)2019映画『町田くんの世界』 製作委員会

(C)安藤ゆき/集英社 (C)2019映画『町田くんの世界』 製作委員会

特に苦労されたシーンは?

 

柳田C: それはやはり、クライマックスのシーンですね。雨降らしから始まって操演があって、CG撮影へとなっていくシーンがあるのですが、1日で全て撮りきらないといけなかったのでスケジュール的には非常に大変でした。CGカットでは、一部デジタルでも撮影しています。

(C)安藤ゆき/集英社 (C)2019映画『町田くんの世界』 製作委員会

現像から仕上げまでのフローはどのようにされましたか?

柳田C: ネガは高感度の VISION3 500T 5219 のみを使用しています。ラボはIMAGICA Lab.で、大阪で現像して五反田でグレーディングです。スキャンはネガからのダイレクトスキャンを4Kで、Cine Vivoを使用しています。現像については、昼間のシーンはノーマルと1/2減感、夜のシーンは2倍増感で現像しています。

(C)安藤ゆき/集英社 (C)2019映画『町田くんの世界』 製作委員会

どのような画のトーンを目指されましたか?

柳田C: 少女漫画が原作なのですが、監督とはそういった感じに意図的にならないトーンにしようというお話をしました。つまり、韓国映画みたいなヒューマンドラマのような感じで、話の作りはファンタジーなのですが現実の人間味のあるトーンの画にしようという方向です。演出も含めてですが、その方がクライマックスのファンタジー感が対照的で、効果が出てくる構成になっていると思いました。また、フィルム撮影ですので、フィルムの質感、粒子感にもこだわりました。粒子を目立たせ過ぎるトーンだと、もしかしたら若い観客はついて来られないかもと思ったので、感じの良いところの寸止めを目指しました。一歩手前ですね。イマジカのカラリストの高田淳さんとは、その辺りの微妙な感じのトーンを上手く表現していく方向でグレーディングしました。

(C)安藤ゆき/集英社 (C)2019映画『町田くんの世界』 製作委員会

仕上がりについて石井監督の感想はいかがでしたか?

柳田C: 監督は、ダビング後の試写を観て連絡をいただいたのですが、「傑作が出来た」とおっしゃっていました。非常に嬉しかったです。フィルムにこだわった質感の画にも非常に満足してもらっていましたし、映画らしい映画を作ることが出来て良かったと思います。監督としては初めての漫画原作作品です。設定は原作の内容に準じていますが、脚本は監督のオリジナルな要素が詰まっています。特にクライマックスのシーンは完全に石井監督のオリジナルで原作には無いシーンです。ぜひ劇場でご覧になっていただきたいです。

(C)安藤ゆき/集英社 (C)2019映画『町田くんの世界』 製作委員会

最後に、今後もフィルム撮影は選択肢となりえるでしょうか?

柳田C:  もちろんフィルムは今後も劇映画でもCMでも使っていきたいです。企画の段階で、この作品にはフィルムのトーンが合っていて、スタッフの間でもそういった雰囲気があるなと感じたら、フィルム撮影を提案することもあります。最近でも、あるウェブのドラマ撮影の打ち合わせの時に、監督が求める画のトーンなどニュアンスを聞いていると、フィルムで撮っていったら完全にそのイメージの世界観になるなと思うことがありました。そういった作品って本当に多いと思いますし、色々な要因でメディアの選択は決まっていきますけど、フィルム撮影の選択肢は今後も変わらず持っておきたいです。

(インタビュー:2019年 4月)

 PROFILE  

柳田 裕男

やなぎだ ひろお

1964年生まれ。兵庫県西宮市出身。中央大学文学部卒業。『Departure』(2000年/中川陽介監督)で長編映画デビュー。

以降、『ベロニカは死ぬことにした』(2005年/堀江慶監督)、『RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ』(2011年/蔵方政俊監督)、『ちはやふる 上の句・下の句』(2016年/小泉徳宏監督)、『君の膵臓をたべたい』(2017年/月川翔監督)などの劇映画で撮影を担当、テレビドラマ『沈まぬ太陽』(2016年 WOWOW)、『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』(2017年 カンテレ)、『ミス・シャーロック』(2018年 Hulu)など多数の連続ドラマ作品の撮影を手掛ける。

 撮影情報  (敬称略)

『町田くんの世界』

 

監 督  : 石井 裕也

撮 影  : 柳田 裕男(J.S.C.)

セカンド : 吉浦 正人
サード  : 三輪 亮達
フォース : 柴尾 和飛
照 明  : 宮尾 康史
 

キャメラ : ARRICAM LT
レンズ  : ARRI / ZEISS Ultra Prime
フィルム : コダック VISION3 500T 5219
機材   : 三和映材社

現像・仕上: IMAGICA Lab.

制作プロダクション: CREDEUS

出 演 : 細田 佳央太 関水 渚
      岩田 剛典 高畑 充希 / 前田 敦子 太賀
      池松 壮亮 戸田 恵梨香 
      佐藤 浩市 
      北村 有起哉 松嶋 菜々子
主題歌 : 「いてもたっても」 平井 堅(アリオラジャパン)
原 作 : 安藤ゆき「町田くんの世界」(集英社マーガレットコミックス刊)
製作幹事: 日本テレビ放送網
配 給 : ワーナー・ブラザース映画
(C)安藤ゆき/集英社 (C)2019映画『町田くんの世界』 製作委員会
公式サイト: http://wwws.warnerbros.co.jp/machidakun-movie/ 

2019年6月7日(金)丸の内ピカデリーほか全国公開
 

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