2019年 7月 8日 VOL.141

映画『ペトラは静かに対峙する』- ハイメ・ロサレス監督が35mmフィルムでの制作と仕上げに全力で取り組くんだ力強いファミリードラマ

ハイメ・ロサレス監督作品『ペトラは静かに対峙する』の1シーン Image copyright and courtesy of Quim Vives.

コダックの35mmフィルムに撮影された、スペイン出身のハイメ・ロサレス監督作品『ペトラは静かに対峙する』が、2018年カンヌ国際映画祭の監督週間で上映されました。時系列が前後するストーリー展開で構成された強烈な物語が観客を惹きつけますが、1台のフィルムカメラと1本のレンズ、ステディカムの動きだけを使い、35mmフィルムで仕上げるポストプロダクションといった、本作の制作にまつわる話も同じくらい注目に値するものです。

『ペトラは静かに対峙する』のプロットは、複雑に絡み合った秘密や暴力、怒りにとらわれていく、ある家族の衝突を描いています。ペトラの父親の正体は、生まれてからずっと彼女には秘密にされてきました。母親が亡くなり、父親を探し始めたペトラは、裕福で著名な彫刻家にして無慈悲な権力者であるジャウメに行きつきます。真実を探る中で、ペトラはジャウメの妻マリサ、夫婦の息子ルカスと出会います。これらの登場人物たちの物語が、恨みや家族の秘密、残忍さという感情の中で徐々に結びついていくのです。ですが、残酷な運命のロジックは、希望と救済への道を開くねじれによって狂わされます。

ハイメ・ロサレス監督作品『ペトラは静かに対峙する』の1シーン Image copyright and courtesy of Quim Vives.

本作は、ロサレス監督による6作目の長編映画で、主要キャストとしてバルバラ・レニーとアレックス・ブレンデミュールが出演しています。ロサレス監督のオリジナルストーリーで、クララ・ロケットと監督のミシェル・ガスタンビデと共同で脚本を執筆しました。

本作は2017年4月、5月に36日間をかけてスペインで撮影され、撮影場所にはマドリードの屋内と屋外のロケーションや、スペインとフランスの国境近くの北東の田園部が選ばれました。

ハイメ・ロサレス監督作品『ペトラは静かに対峙する』の1シーン Image copyright and courtesy of Quim Vives.

「私はデジタルで撮影したことがありません。フィルムで撮影する方が、単純に理にかなっているんです」とロサレス監督は言います。「映画は超越的なものになり得ます。現代の観客に理解されるべきだというだけでなく、未来の世代のためにも守っていくべきです。だから映画は我々の時代や人間の有りようを反映できるのです。そのために技術的かつ美学的に最も力を貸してくれるのがセルロイド(フィルムの意)です。セルロイドには技巧が必要であり、鑑賞すると美しく、ずっとずっと先の未来まで作品を維持し保管することが可能です」

脚本を大きなスクリーンに描き出すため、ロサレス監督はフランスの撮影監督 エレーヌ・ルヴァール(AFC)の手腕に頼りました。「エレーヌと私は考え方が合うんです」と彼は言います。「彼女の作品はシンプルで現実的で、美しく自然であり、策略で大げさにしたりしません。完全に私が好きな映画撮影の形なのです。ですから、私たちが本作の仕上がりのルック(映像の見た目)について話し合う必要はあまりありませんでした。それより重要だったのはカメラワークと、どういう演出がこのストーリーを語る助けになるかということでした」

現場でメーターを読む撮影監督 エレーヌ・ルヴァール(AFC) Image copyright: Quim Vives.

ロサレス監督の主な目標の1つは、全編を通して常にフレーム内に登場人物たちがいて、カメラの動きが語りの時間軸を支えつつ、同時に、どの瞬間でも登場人物の感情や意識も描写しているということでした。また、カットせず長回しにしたいとも思っていました。

これを念頭に置き、ルヴァールとロサレス監督は、4パーフォレーションのワイドスクリーン2.39:1のアスペクト比で35mmにアクションを撮影する、ただし使うレンズはクックのアナモフィック50mmの1本のみ、というような実際の撮影方法をまとめていきました。また、ステディカムだけを使って全編を撮影することも決めました。

撮影現場でショットを練るハイメ・ロサレス監督と撮影監督 エレーヌ・ルヴァール(AFC) Image copyright: Quim Vives.

ルヴァールはこう説明します。「アナモフィックを使っていろんな方法で撮影することができます。1人の人物をスクリーンの中央、あるいは端の方に据えた、大胆で感情に訴えかけるフレーミングに向いていますし、ツーショットや複数の俳優たちを映す際には、違う手法で構図を作り、フォーカスを使うことができます。そして風景を撮っても毎回素晴らしいのです。クックの50mmアナモフィックには人を惹きつける柔らかさがあり、本作における日が差す屋外では、コダックフィルムと合わせるとコントラストのバランスが取れる良い組み合わせになるとわかっていました」

ハイメ・ロサレス監督作品『ペトラは静かに対峙する』の1シーン Image copyright and courtesy of Quim Vives.

「しかし、この物語が時系列で展開していくわけではないことを考えると、観客に対して視覚的に何を伝えるべきかについては、とても慎重にならなければならないことに気づきました。観客に多くを伝えすぎてしまうとストーリーが読めてしまうかもしれません。とは言え、情報が足りないと、難しすぎて観客がついていけないかもしれません。ですから我々は、観客を入り込ませておくために刺激的な均衡を探らなければならず、ステディカムがその答えをくれると感じたのです」

ハイメ・ロサレス監督作品『ペトラは静かに対峙する』の1シーン Image copyright and courtesy of Quim Vives.

実際問題として、ルヴァールの言う通り、このことは、カメラの動きとフレーミングが非常に滑らかかつ正確でなければならないということを意味しました。「使っていたレンズが1種類だけだったので、ワイドショットにするために物理的にカメラを後ろに動かしたり、クローズアップにするために前に行ったりしなければなりませんでした。中にはリバースショットが含まれるシーンがあるかもしれません。なので、長回しをやる際には登場人物の周りのカメラの動きにもかなりの時間をかけ、ストーリーの核と繋がるようにしつつ、物語の多くを明らかにしすぎないよう絶えず気を配りました。私たちは三脚もドリーも使わず、ペケ・グリフィンが操作するステディカムだけで、同じARRICAM LTカメラと同じ50mmアナモフィックレンズで撮影しました」

屋内の照明を考える撮影監督 エレーヌ・ルヴァール(AFC) Image copyright: Quim Vives.

フィルムについて、ルヴァールは本作にコダック VISION3 250D カラーネガティブ フィルムと500T 5219を選びました。「この2タイプは両方ともコントラストが強すぎず、肌のトーンをきれいに写し、お互いに相性がいいのです」と彼女は語ります。「250Dは屋外、特にスペインの強い日差しの中で撮影すると非常に素晴らしいんです。とても自然かつ正確にカメラの前にあるものを捉えてくれて、それこそ私たちがこの作品で求めていたものでした」

ハイメ・ロサレス監督作品『ペトラは静かに対峙する』の1シーン Image copyright and courtesy of Quim Vives.

「500Tは屋内と夜間のシーンの撮影に優れています。最も深い影の部分のニュアンスのあるディテールを維持し、同じ映像の中のハイライトを優しく処理できるラチチュードが備わっています。まさに多彩なルックを作り出してくれるのです。シーンに合わせ、少し冷たいルックは補正せずに撮影したり、映像を若干暖かくしたい時には様々なレベルで補正を加えたりします。シーン次第ですね」

ネガフィルムは、パリのハイヴェンティで現像されました。フィルムは両タイプとも0.5から1絞りという若干の減感現像を行って、日差しの強い日中の屋外や窓から照らされる屋内のコントラストを和らげました。

屋内の照明について話し合うハイメ・ロサレス監督と撮影監督 エレーヌ・ルヴァール(AFC) Image copyright: Quim Vives.

「フィルムの良いところは、ラッシュを見た時に嬉しい驚きという要素が毎回あるという点です」とルヴァールは語ります。「セットでの露出や照明に気を配り、制御しなければならないのですが、色、コントラスト、ハイライト、暗部がどんな風に描写されるか正確に知ることはできません。しかし、フィルムは寛容で、有機的なルックを作ってくれ、観客の皆さんがこの作品でそれを感じてくれるだろうと私は信じています」

ロサレス監督は35mmでの撮影が好きなだけでなく、フィルムで編集することも好み、ハイヴェンティが『ペトラは静かに対峙する』の35mmフォトケミカルのポストプロダクションのワークフローをすべてサポートしました。ラッシュプリントからテイクが選ばれると、ロサレス監督はすぐにネガ編集に入り、その後ハイヴェンティの協力のもと、カラータイミングを行って、35mmの最終プリントを作りました。デジタルプリントが必要な上映にのみ、ロサレス監督は作品のDCPを作成しました。ハイヴェンティでカラリストのジェローム・ビグールが35mmプリントと視覚的に一致していることを確認しながら、DCPを作成しました。

照明をチェックする撮影監督 エレーヌ・ルヴァール(AFC)と、俳優のアレックス・ブレンデミュールと話し合うハイメ・ロサレス監督 Image copyright: Quim Vives.

「おもしろい話ですが、フィルムのポストプロダクションのワークフローを行う方が(デジタルより)安価なのです。デジタルとはフローが違うだけなのです。私がやった手法のように管理できるのであれば、費用は非常に手ごろですよ」と監督は言います。

ロサレス監督は自分の作品でセルロイドを望む一方で、他の映画製作者たちにもぜひフィルムでの制作を選んで欲しいと考えています。

ハイメ・ロサレス監督作品『ペトラは静かに対峙する』のカチンコ Image copyright: Quim Vives.

「映画を作る時には、時間を超越するような濃密な映像を作り出す必要があります」と彼は言います。「その濃密さは、監督や俳優、スタッフ、演出によって生み出される人間らしい中身、そして映像を捉えるメディアから出てくるのです。セルロイドはその性質によって、デジタルの映像よりも濃密で、途端に映像に価値が生まれます。私はもっと多くの監督にフィルムを選ぶよう推奨しています。フィルムは時を超えるのです」

(2018年5月9日発信 Kodakウェブサイトより)

『ペトラは静かに対峙する』

 2019年6月29日(土)より新宿武蔵野館、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開

 原 題: Petra
 製作国: スペイン・フランス・デンマーク合作
 配 給: サンリス

 公式サイト: http://www.senlis.co.jp/petra/

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