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2019年 9月 6日 VOL.143

コダックの35mmフィルムで撮影されたタランティーノ監督の最新作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』より、主演のレオナルド・ディカプリオ (C) 2018 CTMG, Inc. All Rights Reserved. PROPERTY OF SONY PICTURES ENTERTAINMENT INC.

コダックの35mmフィルムで撮影されたクエンティン・タランティーノ監督の待望の新作、マンソン事件の時代を描いたドラマ『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』が、2019年カンヌ国際映画祭でワールドプレミア上映され5つ星の評価を受けました。1960年代後半のロサンゼルスを“眩しく”、“華やか”に描いたと賞賛を浴びた本作の撮影監督は、アカデミー賞受賞者のロバート・リチャードソン(ASC)で、タランティーノ監督とはこれが6作目の共同長編製作となりました。

およそ1億ドルの予算が投じられた本作では、かつてテレビ西部劇で人気を博した俳優リック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)と、リックのスタントマンを務める親友のクリフ・ブース(ブラッド・ピット)が、ハリウッド黄金時代の最後の時に、映画業界で再び名声と成功をつかみ取ろうと奮闘します。

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』より、主演のレオナルド・ディカプリオとブラッド・ピット  (C) 2018 CTMG, Inc. All Rights Reserved. Property of Sony Pictures Entertainment Inc.

しかし、タランティーノ監督作品らしく、物語は思わぬ方向へ。1969年、リックの隣人で妊娠中だった有名女優シャロン・テート(マーゴット・ロビー)が、夫であるロマン・ポランスキー監督と暮らしていたロサンゼルス、ベネディクト・キャニオンのシエロ・ドライブの自宅で殺害されます。他に4人が同時期にマンソン・ファミリーによって殺害されました。

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』の撮影現場にて、レオナルド・ディカプリオとクエンティン・タランティーノ監督 (C) 2018 CTMG, Inc. All Rights Reserved. Property of Sony Pictures Entertainment Inc.

「『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』は簡単には説明できません。とても斬新で、ユーモアと深刻さが不気味なストーリーラインの間を揺れ動きます。しかし、彼にとって非常に個人的である注目すべき独白と挿話で、すごくすごくすごくクエンティンらしい作品なのです」と『JFK』(1991年)、『アビエイター』(2004年)、『ヒューゴの不思議な発明』(2011年)でアカデミー撮影賞を受賞し、2019年撮影監督協会賞(ASC)で生涯功労賞(Lifetime Achievement Award)を受賞した撮影監督、リチャードソンは語ります。

「クエンティンが、ハリウッド黄金時代を描くプロジェクトに取り組んでいるという話は聞いていました。『ドリトル先生不思議な旅』が、『俺たちに明日はない』、『卒業』、『冷血』、『招かれざる客』、『爆走!ヘルズ・エンジェルス』といった映画に取って代わられた時代です」とリチャードソンは振り返ります。

 

「でも、具体的なストーリーについては何も知りませんでした。クエンティンの家に招かれ、キッチンに座って脚本を読みました。すばらしい脚本なのですが、最終幕は読ませてもらえなかったので、もどかしかったですね」

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』の視覚的な美について初めてクエンティン監督と語った時のことを振り返り、リチャードソンは語ります。「クエンティンは、ズームやリッチで血気盛んな色彩であるテクニカラー(ダイ・トランスファー)のルックを使った、リック・ダルトンのテレビ西部劇からのシーンやより古い時代とも調和する1969年当時を思わせる映像を求めていました」

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』より、主演のレオナルド・ディカプリオ (C) 2018 CTMG, Inc. All Rights Reserved. Property of Sony Pictures Entertainment Inc.

「フィルムかデジタルかという議論はありませんでした。デジタルという言葉は、クエンティンの辞書にはありません。彼との共作はすべてコダックフィルムで撮影しています」。2人がこれまでに35mmフィルムで撮影した作品は、『キル・ビル』、『キル・ビル Vol.2』(2003年)、『イングロリアス・バスターズ』(2009年)、『ジャンゴ 繋がれざる者』(2012年)があり、『ヘイトフル・エイト』は65mmフィルムで撮影されました。

「かなり早い段階から、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のフォーマットは、ワイドスクリーンと決まっていました。35mmのアナモフィックです。リック・ダルトンのテレビ西部劇シリーズだけは、35mmの白黒フィルムを使い、スフェリカルのズームレンズでほぼすべて1:1.33で撮影しています。また、シャロン・テートとロマン・ポランスキー夫妻の自宅での2シーンは、コダック エクタクロームで撮影し、一方は16mmでもう一方はスーパー8です」

物語に必要な異なる時代に自分自身を没入させるため、リチャードソンは、主に作品を見ることで膨大なリサーチを行いましたが、ロマン・ポランスキー監督の『吸血鬼』(1967年)、『ローズマリーの赤ちゃん』(1968年)をはじめ、『片目のジャック』(1961年)、『大脱走』(1963年)、『俺たちに明日はない』(1967年)、『卒業』(1967年)、『特攻大作戦』(1967年)、『哀愁の花びら』(1967年)、『白昼の幻想』(1967年)、『華麗なる賭け』(1968年)、『ブリット』(1968年)、『荒鷲の要塞』(1968年)などの長編映画、昔のテレビシリーズでは『西部二人組』、『マーベリック』、『拳銃無宿』、『ライフルマン』などを参考にしました。

カメラでマーゴット・ロビーを追う撮影監督 ロバート・リチャードソン(ASC) (C) 2018 CTMG, Inc. All Rights Reserved. Property of Sony Pictures Entertainment Inc.

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』の主要部分の撮影は、2018年6月に始まり、90日におよぶ撮影を経て11月後半に終了。シエロ・ドライブ、ハリウッド大通り、サンセット大通り、バーバンク、LAのフリーウェイおよびハリウッドのスタジオなど、ロサンゼルス周辺の複数のロケーションで行われました。

リチャードソンは、コダック VISION3 500T カラーネガティブ フィルム 5219と200T 5213を製作の主要なカラーフィルムとして選択しました。露光を1/2段から1段増やして、通りやロケーションが自然に見えるようする一方でワイドオープンでの撮影を避けて絞りを入れたりすることもありました。

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』より、シャロン・テート役のマーゴット・ロビー (C) 2018 CTMG, Inc. All Rights Reserved. Property of Sony Pictures Entertainment Inc.

「多くの理由でフィルムが好きなのですが、特に肌の捉え方が良いんです。デジタルでは得難い柔らかさがあります。コダックは長年、その工夫を重ねているので、それは間違いなく強みになっていますね」

ネガ現像とラッシュプリントは、すべてフォトケムが担当しました。「そう、ラッシュプリントを焼いたんです」とリチャードソンは言います。「すべてのセレクトをプリントし、仮設の試写室が作られたオフィスに集まって、クエンティンと一緒に見るため皆を招きました。その時のロケーションの都合によっては、フォトケムでラッシュプリントを見ることもありました」

リチャードソンによると、35mmフィルムで撮影するにあたり、パナビジョン社のダン・ササキ氏によって近接のフォーカスが調整された、より古いセットのパナビジョンCとEシリーズのアナモフィックレンズを使用し、プロダクション・デザイナーのバーバラ・リン、衣装デザイナーのアリアンヌ・フィリップス、ヘア、メークアップのチームの仕事が組み合わさり、すべてが1960年代後半と物語にとって重要な他の時代との違いを想起させる手助けとなったということです。

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』より、クリフ・ブース役のブラッド・ピット (C) 2018 CTMG, Inc. All Rights Reserved. Property of Sony Pictures Entertainment Inc.

リチャードソンは最後にこう述べています。「この作品の規模は、その要求内容において壮大であり、これまで私が撮影した中で最も複雑な作品のひとつとなりました。常にプレッシャーを感じていました。白黒とカラーでニセの西部劇を再現することから、テレビのダンスシーンや暗い夜のシーンまで実に多様なシーンがあります。この作品は、新手のユニークで素晴らしい作品となることでしょう。皆さんが気に入ると確信しています」

(2019年5月17日発信 Kodakウェブサイトより)

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』

 2019年8月30日(金)より全国公開

 原 題: Once Upon a Time... in Hollywood
 製作国: アメリカ
 配 給: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

 公式サイト: http://www.onceinhollywood.jp/

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