2020年 1月 21日 VOL.148

35mmフィルムだけが成し得たNetflixオリジナル映画『マリッジ・ストーリー』

35mm撮影のノア・バームバック監督作『マリッジ・ストーリー』より、地下鉄でのワンシーン  Image courtesy of Netflix.

コダックの35mmフィルムで撮影されたノア・バームバック監督の悲喜劇『マリッジ・ストーリー』は、2020年の賞シーズンにおいて、撮影監督のロビー・ライアン(BSC、ISC)を含め、様々な部門でノミネートされるであろうと予想されています。

バームバック監督による繊細で、鋭くウィットに富んだ物語の核となるのは、結婚生活が破綻していながらも共に生活を続ける家族です。本作は、演出家のチャーリーと、その妻で女優のニコールを描いています。夫婦は長年の結婚生活の間、ニューヨークの前衛劇団で一緒に仕事をしており、8歳になる息子のヘンリーを育ててきました。しかし2人は、家庭の調和の亀裂に直面していたのです。ニコールがTVのパイロット版の役を受け、ロサンゼルスでの撮影にヘンリーを一緒に連れていったのをきっかけに、衝突していた夫婦は離婚への舵を切り始め、息子の親権争いが始まります。

この製作費1,800万ドルのNetflix作品には、主要キャストのスカーレット・ヨハンソンとアダム・ドライバーに加え、ローラ・ダーン、アラン・アルダ、レイ・リオッタ、アジー・ロバートソン、ジュリー・ハガティ、メリット・ウェヴァーも出演しています。本作の楽曲はランディ・ニューマンが作曲しました。

35mmフィルムカメラでレストランのシーンを撮影中の撮影監督 ロビー・ライアン(BSC、ISC)と、チャーリー役のアダム・ドライバー(左)、ヘンリー役のアジー・ロバートソン Photo by Wilson Webb. Image courtesy of Netflix.

『マリッジ・ストーリー』は、2019年のベネチア国際映画祭で世界初上映された後、トロント、ニューヨーク、ロンドンなどの映画祭を巡り注目を集めました。離婚の痛みと混乱、そして、代理人たちには報酬をもたらしつつ、主人公たちが互いを憎み合っていくようにできている制度についての鋭く観察的なユーモアを、胸が張り裂けるような描き方で見せ、各映画祭で絶賛されました。

35mmでの主要な撮影は、撮影監督のロビー・ライアン(BSC、ISC)の指揮の下、2018年1月15日に開始され、4月までの47日間にわたり、ロサンゼルスとニューヨーク市で行われました。ライアンは35mmや16mmの作品で、セルロイド(フィルムの意)に重きを置く監督たちと定期的に仕事をしている撮影監督です。過去には、同じくNetflix向けのバームバック監督作『マイヤーウィッツ家の人々』(2017)を撮影したほかに、『天使の分け前』(2012)、『ジミー、野を駆ける伝説』(2014)、『わたしは、ダニエル・ブレイク』(2016)、『家族を想うとき』(2019)の撮影でケン・ローチ監督と、『フィッシュ・タンク』(2009)や、同じくコダックのフィルムを用いた『Wuthering Heights(原題)』(2011)の撮影でアンドレア・アーノルド監督とも頻繁に協働しています。高い評価を得たヨルゴス・ランティモス監督作『女王陛下のお気に入り』(2018)の撮影もライアンが担当しました。

左から主演女優スカーレット・ヨハンソン、撮影監督 ロビー・ライアン(BSC、ISC)、ノア・バームバック監督 Photo by Wilson Webb. Image courtesy of Netflix.

「デジタルを使うことにも申し分なく満足していますが、機会に恵まれフィルムで撮影できる時は毎回、大変な幸せを感じますし、幸いにも過去10年でアナログでの製作を大切にしている監督たちの作品を多数、フィルムで撮影できました」とライアンは言います。「一生フィルムでしか撮影できないとしたら、私はとても幸福な人間でしょうね。ですから、ノアが『マリッジ・ストーリー』を35mmで撮影したいと思っていると知った時は、胸が躍りました」

ライアンは、『マリッジ・ストーリー』の視覚的な言語についてバームバック監督と初期段階で話したことをこう振り返ります。「ノアは、それぞれの映画プロジェクトがどこへ向かっていくのかを理解しているすばらしい共同作業者なのです。彼の脚本では、1つのシーンとその次のシーン間で書かれていることが、どう編集されてスクリーンに映されるのかが本質的にわかるような、優れた直線的なテンプレートを与えてくれました」

「『マイヤーウィッツ家の人々』の撮影中、カメラを常に動かすのがノアの好みだと分かったので、その効果を出すためにドリーの動きを多く取り入れました。しかし、『マリッジ・ストーリー』は必ずしも同じではありませんでした。多くのテイクが弁護士のオフィスという場所に設定されています。法律事務所という空間は性質上、堅苦しく、それほど大きくもなく、視覚的に面白くもありません。私たちはあまりカメラを動かすことができなかったのです。ですから、フレーミングはむしろ、満足のいく構図と、地味で人間味のない弁護士の世界にいるキャラクターたちの、より静的な肖像画を作り上げることの方に注力しました。もちろん、ロサンゼルスでのニコールの華やかな生活を撮影する際は、対照的にカメラをドリーに乗せて自由に動かすことができました。ですが基本的に私たちのアプローチは元からあったものを活かし、自然なルックを保つというものでした」

ニューヨークロケ中の撮影監督 ロビー・ライアン(左)とノア・バームバック監督 Photo by Wilson Webb. Image courtesy of Netflix.

このことを念頭に置き、ライアンはバームバック監督から聞いた数々の参考作品に没頭しました。それらの中には、お互いの顔が対角線上にあったり遮り合ったりする構図的な手法を参考にしたイングマール・ベルイマン監督の『仮面/ペルソナ』(1966、撮影監督:スヴェン・ニクヴィスト(FSF、ASC))と、女性主人公を映すスポットライトを参考にしたマイク・ニコルズ監督の『愛の狩人』(1971、撮影監督:ジュゼッペ・ロトゥンノ(AIC、ASC))がありました。『マリッジ・ストーリー』では、ニューマンの力強い音楽が流れ、引き込まれるような最初のモンタージュ、つまりニコールが暗いところからフレームの中央に現れるという冒頭のシーンでこの技法が効果的に使われています。他の参考作品には、『叫びとささやき』(1972、監督:イングマール・ベルイマン、撮影監督・スヴェン・ニクヴィスト(FSF、ASC))などがあり、観察的なカメラのスタイルと趣ある自然光の使い方の参考にしました。

ライアンはアリカムSTカメラとパナビジョンのプリモプライムレンズを活用して、『マリッジ・ストーリー』を1.66:1のアスペクト比のフレームに収め、心揺さぶるストーリーテリングの中でバームバック監督が求めていた、私的な肖像画を作りました。

家族のシーンを撮影中の撮影監督 ロビー・ライアン(BSC、ISC) Photo by Wilson Webb. Image courtesy of Netflix.

自然なルックにしたいというバームバック監督の要望を満たすため、ライアンは本作の夜間の屋外および屋内のシーンにはコダック VISION3 500T カラーネガティブ フィルム 5219を選択し、日中の屋内のシーンには200T 5213を選んで、LED照明をうまく活用しながら本物に近い美しさを作り出しました。フィルムの現像はロサンゼルスのフォトケムで行われました。

「フィルムが持つ紛れもない価値は、常にカメラに映るそのままの、揺るぎのない、美的に心地良い映像を届けてくれることです」とライアンは言います。「相性のいい500Tと200Tのタングステンフィルムが持つ自然なカラーパレットと質感が、私はとても好きなのです。これらのフィルムの色の見事な表現、特に肌のトーンの表現を上回るものはまだありません」とライアンは続けます。「また、これらのフィルムのどちらにも、明るいハイライトと暗い影の中のディテールの両方を映すシーンのダイナミックレンジを楽に処理できるだけのラチチュードが備わっています。『マリッジ・ストーリー』にはこういうシーンがたくさんありました。今の発達したLED照明システムと合わせると効果的で、心地良い豊かな色を出せるのです」

ロサンゼルスで屋外シーンを撮影中のロビー・ライアン(BSC、ISC) Photo by Wilson Webb. Image courtesy of Netflix.

「デジタルだと、フィルムっぽい仕上がりに近づけるだけでも、照明や露光、LUT、仕上げのグレーディングなど、やらなければならないことがたくさんあります。フィルム的なルックに仕上げたいなら、初めからフィルムでやった方がはるかに簡単です」

最後に彼はこう締めくくります。「『マリッジ・ストーリー』をコダックの乳剤で撮影したことで達成できた、自然で映画的な仕上がりをとても誇りに思っています。この作品はとても感情に訴えかけるドラマなので、ご覧になった方はきっと心から入り込めると思います」

(2019年11月26日発信 Kodakウェブサイトより)

『マリッジ・ストーリー』

 2019年11月29日から一部劇場にて公開、12月6日から配信開始

 原 題: Marriage Story
 製作国: アメリカ
 配 給: Netflix

 公式サイト: https://www.netflix.com/title/80223779

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