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2020年 2月 26日 VOL.150

35mmの真剣勝負。
映画界への挑戦がここから始まる。

若手映画作家の発掘・育成を目的とした文化庁委託事業『ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2019』完成3作品および監督のご紹介

(C) 2020 VIPO

『ndjc:若手映画作家育成プロジェクト』は、日本映画振興事業の一環として文化庁よりVIPO(映画産業振興機構)が委託を受け、優れた若手映画作家を対象に、本格的な映像制作技術と作家性を磨くために必要な知識や技術を継承するためのワークショップや製作実地研修を実施しています。新たな才能の発掘を目的として作品発表の場を提供することで若手映画作家を支援し、日本映画の活性化を目指しているプロジェクトです。2006年度から今年度まで、合計70名の若手映画作家が、このプロジェクトに参加し短編映画を完成させました。

本年度も各映像関連団体から多くの作家が推薦され、ワークショップから製作実地研修に進んだ3人の若手監督が、講師による脚本指導を経て、各制作プロダクションの協力のもと、プロのスタッフ・キャストと共に35mmフィルム撮影による短編映画を制作し、このたび完成いたしました。

『ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2019』完成3作品の上映会は、東京が角川シネマ有楽町にて2月21日~2月27日、名古屋はミッドランドスクエア シネマにて3月6日~3月12日、大阪はシネ・リーブル梅田にて3月13日~3月19日に劇場公開されます。公開期間中、監督ほか関係者による舞台挨拶(東京では連日、名古屋は3月7日(土)、大阪は3月14日(土))が予定されています。(上映や作品情報の詳細はndjc公式サイト http://www.vipo-ndjc.jp/ をご覧ください)

今回、3人の監督から、35mmフィルム撮影で作品を仕上げた感想をお寄せいただきました。本プロジェクトのスーパーバイザーを務められた香月純一氏のメッセージと合わせてご紹介いたします。

あなたみたいに、なりたくない。

監督: 川崎 僚(かわさき りょう)
撮影: 西村博光
照明: 金子康博
制作プロダクション: ダブ
出演: 阿部純子 小島聖 鳥谷宏之 吉倉あおい 藤田真澄 
監督・作品の詳細はコチラ → http://www.vipo-ndjc.jp/ndjc/4661/

川崎 僚 監督からのコメント

フィルム独特のカラカラという音、そして一発でオッケーを目指す緊張感はとても心地よかったです。スタッフ全員が一体になる熱量をヒシヒシと感じました。現場に入る前から、如何に無駄無く的確なカットを積み重ねられるかを考え、現場でも念入りにテストを重ねての撮影でした。ラストカットでは、俳優部の感情作りとフィルムの残量のどちらにも注意をし、芝居の途中からカメラを回す等工夫を凝らして撮影しました。尊敬する映画監督の先輩方はこれを当たり前にやっていたのかと思うと、今までの自分の心構えはまだまだ未熟だったと感じました。今回の撮影で体験できた緊張感を忘れずに、これからも映画を撮り続けていきたいと思います。

『あなたみたいに、なりたくない。』の撮影現場 (C) 2020 VIPO

Le Cerveau - セルヴォ -

監督: 島田欣征(しまだ よしゆき)
撮影: 朝倉義人
照明: 東田勇児
制作プロダクション: 東映京都撮影所
出演: 田中沙依 藤崎絢己 南岐佐 八田浩司 上瀧昇一郎 
監督・作品の詳細はコチラ → http://www.vipo-ndjc.jp/ndjc/4660/

島田 欣征 監督からのコメント

学生の頃からフィルムで写真を撮るのが趣味で、初の自主映画も全編8mm (Super8)で撮った作品というのもあり、かねてから憧れだった35mmフィルムでの映画制作は高揚する日々でした。ファインダーを覗いた時、カラカラと周る音、ロールチェンジ、現像待ちはそわそわして、ラッシュを観て安堵し、画は独特の質感・空気感に感動しました。程よい緊張感から現場の集中力が高まり、撮れ高に直結する手応えも感じました。フィルムの長所短所、全てひっくるめて、愛おしかったです。現場の機動力と、CG作業との相性には不安があったものの思いのほか現実的で安心しました。露出や構図、尺の感覚など等、基本の大事さを痛感し映画というものを改めて考えさせてくれました。 “また映画を撮りたい”と衝き動かされる、不思議な魅力がフィルムにはあると思います。

『Le Cerveau - セルヴォ -』の撮影現場 (C) 2020 VIPO

魚座どうし

監督: 山中瑶子(やまなか ようこ)
撮影: 中瀬 慧
照明: 秋山恵二郎
制作プロダクション: オフィス・シロウズ 
出演: 根本真陽 外川 燎 山田キヌヲ 伊東沙保 カトウシンスケ 
監督・作品の詳細はコチラ → http://www.vipo-ndjc.jp/ndjc/4658/

山中 瑶子 監督からのコメント

事前に何人かの方から、「カメラからね、フィルムがカタカタ回る音が聞こえるんだよ〜。それはもうドキドキするんだよ」というようなことを言われていたので、肩に力が入りつつも、それも楽しむことができたらと現場へ向かいました。しかし、今回使用したカメラが新しいものだったので、その音色を聞くことは叶わず…。すこし残念でしたが、おかげで程よくリラックスでき、フィルム撮影に対する余計な畏敬を抱かずにいれたのは良かったです。もちろん、普段と変わらぬ緊張感で取り組みました。
クランクアップ後の、「棒焼きラッシュ」約2時間が特に素晴らしい体験でした。フィルムに焼き付けられた、映画になるのを待っている素材たちを永遠に見ていたかったです。

『魚座どうし』の撮影現場 (C) 2020 VIPO

「ここがロドスだ、ここで跳べ!」
「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」はセミナーのように椅子に座って講師の話を聴く“座学”ではありません。ワークショップでの編集指導、その後の脚本指導、そして撮影(製作実地研修)に携わるのはこの道のプロフェッショナルの面々です。つまりプロとの真剣勝負ができるのです。
さらに完成した作品は劇場で一般公開されます。映画は撮影されただけではただのフィルムだが、観客に観られて初めて「映画」になると言います。製作実地研修はまさに「映画を産み出す」ことができるのです。
今年度の新しい3人の才能に、ぜひご期待ください!

香月 純一氏 プロフィール(かづき じゅんいち)

1958年生まれ。1982年東京大学卒業後、東映株式会社入社。
テレビ企画営業第一部に配属され、数多くのTVドラマをプロデュース。2005年(映画)企画製作部に異動し映画をプロデュース。2010年企画製作部長。2012年東映衛星放送株式会社代表取締役社長(現任)。主な作品は、TV『相棒』、『はみだし刑事 情熱系』、土曜ワイド『西村京太郎トラベルミステリー』、WOWOW版『月はどっちに出ている』『リョーコ!!』、映画『相棒 -劇場版-』、『相棒 -劇場版II-』、『鑑識米沢守の事件簿』、『相棒シリーズ X DAY』、『アキハバラ@DEEP』、『さまよう刃』、『苦役列車』など。

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