2020年 3月 14日 VOL.151

サフディ兄弟の監督作『アンカット・ダイヤモンド』を、撮影監督ダリウス・コンジ(AFC、ASC)が35mmで眩いばかりに仕上げる

(左から)ケビン・ガーネット、ラキース・スタンフィールド、アダム・サンドラー  Photo by Wally McGrady. Image courtesy of A24.

主にコダックの35mmフィルムで撮影された『アンカット・ダイヤモンド』は、ベニー・サフディ監督とジョシュ・サフディ監督によるイチかバチかの不安を煽るスリラーで、A24によって2019年12月に劇場公開された後、批評家の称賛を浴び数々の賞に輝きました。脚本、演出、編集、そして、本作の核となる、ニューヨークの宝石商ハワード・ラトナーを演じるアダム・サンドラーの演技に加え、撮影監督 ダリウス・コンジ(AFC、ASC)のセルロイド(フィルムの意)を用いた撮影による目のくらむような緊迫感でも多くの称賛を得ました。

本作は、ニューヨーク市のカリスマ的な宝石商で、ギャンブル中毒者ハワードの物語を描いています。彼は、いつでも次の大当たりに目を光らせている男です。珍しいブラックオパールが手元にやって来ると、微妙な家庭事情と憤慨した敵の一団との間でバランスを取るという綱渡りのような危険な行為もこなしつつ、一攫千金に繋がるかもしれない、リスクの高い取引に次々と手を出します。

イディナ・メンゼル Image courtesy of A24.

製作費約2,000万ドルの本作は、アダム・サンドラーに加え、ラキース・スタンフィールド、ジュリア・フォックス、マイク・フランセサ、イディナ・メンゼル、エリック・ボゴシアらが主要キャストとして出演しており、カナダのシンガー・ソングライターのザ・ウィークエンドが本人役で登場するのに加え、元プロバスケットボール選手のケビン・ガーネットがフィクション上の本人役を演じています。

『アンカット・ダイヤモンド』は2019年のナショナル・ボード・オブ・レビューの優秀作品10本に選ばれ、アダム・サンドラーが主演男優賞を獲得しました。また、本作は、A24で最も売り上げが高い作品の1つとなり、興行収入4,770万ドルを稼ぎ出した後、アメリカを除く全世界にNetflixで配信されました。

「ジョシュとベニーによる脚本のクレイジーさと緊張感と心理的エネルギー、そしてハワードの辛辣な性格に関する観察がとても気に入りました」と撮影監督のダリウス・コンジは述べています。彼を最初に本作の監督サフディ兄弟に紹介したのは、2人が監督した2014年の映画『神様なんかくそくらえ』のアソシエイト・プロデューサーを務めた、コンジの娘のマリエ=ルイーズでした。この繋がりがきっかけで、コンジはジェイ・Zの『マーシー・ミー』のミュージックビデオでサフディ兄弟と協働し、その後、2人に『アンカット・ダイヤモンド』の撮影を依頼されました。

撮影監督 ダリウス・コンジ(AFC、ASC) Photo by Julieta Cervantes. Image courtesy of A24.

「この作品は、ニューヨークという大都市で冷酷なまでにクレイジーな存在として生きる、ある男の壮大な物語でした」とコンジは言います。「ベニーとジョシュはフィルムでの撮影を望んでいたのですが、私もそれが好きなんです。ですから楽勝でしたね。ですが、2人はロバート・アルトマン監督のようなフィルムメーカーたちの動きのある撮影や、私がむしろ不格好だと思うような街中にあるポストモダン建築に映像的な影響を受け、『アンカット・ダイヤモンド』では派手でザラザラしたルックでニューヨークの現実を映したいとも思っていました。私は魅惑的でワクワクするような映像を目指したいと考えるようになり、2人の求めるものがこぎれいな仕上がりではないのだということをすぐに理解しました」

「さらに、超長焦点レンズや、それを用いたトラッキングショット、さらにはズームを使って本作を撮影して欲しいという彼らの望むやり方でやるのは、すなわち、私は初っ端から自分が楽に撮影できる領域をはみ出していたということでした。そういう仕事をすることは他のフィルムメーカーには絶対にお勧めしません。ですが、経験したことのないやり方に押し込まれることが私は好きなんですよ。ですから、彼らの熱意を受け入れましたし、彼らが望むやり方で、彼らが望むものを撮影させてあげるというのが私の方法論でした」

ジュリア・フォックス (中央左)とシンガー・ソングライターのザ・ウィークエンド Photo by Julieta Cervantes. Image courtesy of A24.

主要な撮影は2018年9月にニューヨーク市で始まり、11月後半に29日におよぶ撮影を終了しました。ニューヨークの47丁目にある有名なダイヤモンド・ディストリクト周辺の屋外および屋内で撮影が行われたのですが、コンジはその場の光を使ったり、正面と上からの光でフレームをいっぱいにしたりして、シンプルさを保ちました。シアン、グリーン、ピンク、明るい白といった独特の派手な色使いを必要とする、明るく照らされた環境のハワードの宝石店は、ロングアイランドのゴールドコースト・スタジオに建てられて、撮影されました。

コンジは、広範囲にわたる35mmフィルムのテストを経て、75mm、180mm、250mm、360mmの焦点距離を含むパナビジョンCシリーズのアナモフィックレンズを、ARRICAM ST および LT カメラに装着して使い、本作の演技をワイドスクリーン2.40:1のアスペクト比で撮影しました。彼が選んだフィルムは、コダック VISION3 500T カラーネガティブ フィルム 5219の1タイプだけで、映像の粒子感を強めるためにコダック・フィルム・ラボ・ニューヨークで1段増感しました。

(左から)ベニー・サフディ監督、ジョシュ・サフディ監督、アダム・サンドラー Photo by Julieta Cervantes. Image courtesy of A24.

「アナモフィックという選択は、私たちで一緒に決めたことでした」と彼は言います。「脚本を読み、ジョシュとベニーがアダムのキャラクターに求めている存在感についての話を聞いた後、我々は、アダムを背景の壁紙から浮かせて孤立させ、彼のクローズアップのルックを力強く見せるのがいいだろうと考えました」

「もちろん、ワイドスクリーンは物語の壮大さを伝えるのに使えますが、アナモフィックも拡大鏡のような働きをすることができます。ジョシュとベニーは、キャラクターにクローズアップして物語を語るのが好きなんです。彼らは、長焦点距離のアナモフィックレンズによる俳優の顔の捉え方が好きで、それがハワードにぴったりだと考えました」

数多くあるカメラの流動的な動きにおいて、映像の鮮明さに大きく寄与したのは、カメラオペレーターのマセオ・ビショップとフォーカス担当のクリス・シラノの才能、そしてフォーカスアシストシステムの「プレストン ライトレンジャー」を使用したことだとコンジは付け加えます。「マセオとクリスがいなければ、あれほど自由に撮影をすることはできなかったでしょう。2人とも見事でした。そして「ライトレンジャー」は、フィルムのルック(映像の見た目」における素晴らしい“強み”であることが分かりました」

アダム・サンドラー(左)とジュリア・フォックス Photo by Julieta Cervantes. Image courtesy of A24.

コダック VISION3 500T カラーネガティブ フィルム 5219というフィルムの選択について、コンジはこう言います。「一定のペースでかなり精力的に撮影していくことは分かっていたので、使うのは1タイプのフィルムだけにして、できるだけシンプルにすることにしたのです。500Tは、日中の屋外という一番明るい時から、夜間の屋内という一番暗い時まで何にでも使えますし、作品全体を通して一貫したルックにできるのが素晴らしいです」

日中の屋外以外のすべてのシーンが補正なしで撮影されました。日中の屋外は、812フィルターを使い、500Tのカラーネガティブに若干補正をかけました。

美的観点から言えば、本作の映画的言語において重要だったのは粒子でした。「映像がクリーンすぎるのはストーリーテリングという目的にかなっていないため、私自身は好まないのですが、ジョシュとベニーも同じ気持ちだったんです」とコンジは言い切ります。「我々は全員、粒子からの質感を求めていました。テストで屋内と屋外を撮影し、ラボで増感および減感現像のいろんな種類を試して1段増感するのが質感の点で一番いい結果をもたらすやり方だったんです。本作では、全編を1段増感して撮影しました」

(左から)ジョシュ・サフディ監督、ベニー・サフディ監督、アダム・サンドラー Photo by Wally McGrady. Image courtesy of A24.

現実的な理由により、コンジはいくつかのショットにデジタルを使わなければなりませんでした。そこで、統一の取れたルックにするために2種類の映像をアナログのフィルムに違和感なく合わせるという作業が、ザ・ミル・ニューヨークのカラリスト、ダミアン・ファン・デル・クライセンに委ねられました。35mmフィルムのネガはすべてARRIスキャンを使って4Kでスキャンされ、彼がカスタムLUTを作り、デジタルの映像を、スキャンしたフィルムの映像に混ぜ合わせました。また、カラリストである彼は、カメラクルーに35mmフィルムで粒子感のある素材を追加撮影するよう依頼しました。繋ぎ目の分からない仕上がりにするため、それも同様に4Kでスキャンして、デジタルのシーンに重ねたのです。

本作の色のパレット、特にハワードの店について、コンジはこう述べています。「マンハッタンの47丁目に並ぶ宝石店はそもそもが非常に明るく、キラキラした環境で、恐ろしいほど派手な色をしています。我々は、スポットライトや特別なクオーツの照明といった現場の灯りと、天井のタイルに入れ込んだ頭上のスカイパネルを用い、その全部を調光器で調整して、本作の店のセットの照明を作りました。これにより、異なる色やレベルの照明でいろいろと試してみることができました。フィルムに元々備わっている階調と色の分離はとても独特です。同様のレベル、精度はデジタルでは見たことがなく、これらのシーンは実に見事です」

実はコンジは、普段は完成後に自分が撮影した作品をもう一度見ることはないそうですが、『アンカット・ダイヤモンド』は別物だということが分かっていました。

「制作中、サフディ兄弟は、私にとって撮影を非常に興味深く、高揚感のある体験としてくれました。彼らは、私が楽に感じる範囲から連れ出し、新しい領域へ連れ出してくれました。仕上がった作品は独特のルックをしていて大変気に入っていますし、今まで仕事をしてきた他のどの作品ともまったく違います。また、この作品は、フィルムに何ができるのかを伝えるすばらしい広告でもあります。私は本作の仕上がりをとても誇りに思っています」

(2020年2月5日発信 Kodakウェブサイトより)

『アンカット・ダイヤモンド』

 Netflixで2020年1月31日から配信

 原 題: Uncut Gems
 製作国: アメリカ
 配 給: Netflix

 公式サイト: https://www.netflix.com/jp/title/80990663

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