2020年 6月 27日 VOL.164

全米を揺るがした実際の巨額横領事件の全貌を描く『バッド・エデュケーション(2019)』

アスペクト比2.39:1のワイドスクリーンで撮影されたヒュー・ジャックマン主演のダークコメディ、『バッド・エデュケーション(2019)』 Image courtesy of HBO.

コリー・フィンリー監督は、長編監督デビュー作『サラブレッド』に続き、『バッド・エデュケーション(2019)』で撮影監督のライル・ヴィンセントと再会を果たしました。このコメディー・ドラマ作品は、元教育長のフランク・タソーン(ヒュー・ジャックマン)が関与していたニューヨークの公立学校における実際に起きた巨額横領事件から発想を得て、マイク・マコウスキーが脚本を担当しました。彼は、ロズリン・ミドル・スクール在学中に本人と会ったことがあります。

ヴィンセントはこう述べています。「『サラブレッド』は大胆な色と風変わりなカメラアングルを使ってノワール作品を再現したいと思っていたので、様式的な鋭さがありました。『バッド・エデュケーション』は、より明快で、演技を重視しました」。当初から本作は、アスペクト比2.39:1のワイドスクリーンになる予定でした。「その時は劇場公開を目指していたのです。また、それによってフレーム全体に助演のキャストを配置することが可能となりました」
 

フィルムでの撮影は、この企画のプロデューサーたちが後押ししてくれたアイデアでした。「フレッド・バーガーは『ラ・ラ・ランド』を手がけたことがあり、フィルムの愛好家で、その価値をよく理解しています」とヴィンセントは語ります。「監督のコリーはフィルムで撮影した経験がなかったのですが、そのアイデアを気に入りました。CineStillのコダック VISION3 500T カラーネガティブ フィルム 5219を入れた中判カメラとライカ35mmでスチル写真のテストをいくつか撮影しました。これらのフィルムはあらかじめレムジェット層が除去してあるので、C-41現像が可能だったのです。本作のオフィスでメイクをした俳優たちのテスト写真を何枚か撮り、何カ所かのロケーションに行ってスチル写真を撮影することにしました。私はそれらを自宅で自家現像しました。ヨーボの現像機で現像し、スキャンしたのです。コリーは本当に喜んでくれました」。目標は、自然な映像にすることでした。「私はフィルムから撮影のキャリアを始めたのですが、その後、この映画を撮るまでの9年間くらいはフィルム撮影をしていませんでした。デジタルの撮影にかなり慣れていたんです。でもすぐに分かりますよ。間違いなく、肌のトーンをフィルムのように再現することはデジタルではできません。色の深さ、コントラスト、粒子の立体感に何かがあるのです」

過去9年間デジタルでの映画制作に注力した後、フィルムで撮影する機会を楽しんだ撮影監督のライル・ヴィンセント Image courtesy of HBO.

さらにヴィンセントはこう続けます。「『バッド・エデュケーション(2019)』の大部分は5219での撮影です。陽があるところでは250D 5207で撮影することもありました」。本作は3パーフォレーションで撮影し、基本的に画に加工を施すことはありませんでした。「夜のシーンは効果を足すために増感しても良かったかも知れません。ノーマル現像ですが、やや露出オーバーにしました。全編ISO感度400の設定です。レンズはすべて、クリーンなパナビジョン・プリモプライムレンズで、フィルターは足さず、ズームもまったく使用しませんでした。14mm、20mm、27mmを多用しました」。2台のパナビジョン ミレニアム XL2カメラが、ほぼ毎日セットに置かれていました。「どちらかと言うと、現場は1台のカメラによるアプローチでしたが、分かれて作業する時や、最少人数のスタッフによる作業が必要な場合に備えて、2台目のカメラを用意していたのです」。ニュース映像は別のフォーマットで撮影されました。「再現するのは難しいので、当時の実際のカメラとメディアを使うことを信条としているんです。2002年頃のニュース用カメラ(eBayで見つけました)を使って、miniDVで撮影しました」

LEDは、HMIが窓の外で使われる照明セットの中で重要な役割を果たしました。「LEDは薄くて目立たないので隠すのが簡単でした」とヴィンセントは説明します。「その空間にはすでにたくさん蛍光灯があったのですが、それらを新しく、色の合った電球に交換してもらったのです。若干緑色にしたかったので、既存のものを残すこともありました。それらに合うように、ジェルフィルター付きのLEDを追加しました」。主人公のフランク・タソーンのオフィスはサウンドステージに作られました。「まったく同じにするためにHMIを使いました」。夜のシーンでは月光を作らなければなりませんでした。「LEDのLiteMatの付いた20×20のボックスを1つ用意しました。LiteMatは薄くて軽量で動かしやすく、その場で色を変えることが可能でした。その点が非常に使いやすかったですね」

オスカー女優のアリソン・ジャネイ(左)と主演のヒュー・ジャックマン Image courtesy of HBO.

準備と主要な撮影には6~7週間を費やしました。撮影地は、ロングアイランドとブロンクスです。「実際にこの事件が起こった場所で撮影することはできませんでした。先方が本作に関わることを望まなかったためです」とヴィンセントは振り返ります。「私たちは管理事務所、廊下、入り口、屋外を、それぞれ異なる学校で撮影しました。プロダクションデザイナーのメレディス・リッピンコットと衣装デザイナーのアレックス・ボベールにとっては大変な作業でした。メレディスはスウェーデンのスチル写真家、ラーシュ・ツンビヨルクを私たちに紹介してくれて、私は彼の作品を照明の参考にするようになりました。彼には『オフィス』というシリーズがあるのですが、これは上部から照明を当てており、すべてがオフホワイトなのです。こういう簡素な美しさがあります。ツンビヨルクは、世界中のこういったいろいろなオフィスをハイキーのフラッシュで撮影したのです。私たちはそこまで強い照明にしませんでした」。天候は大きな問題ではありませんでした。「ラスベガスでのシーンが1つあり、ロングアイランドで良い場所を見つけて、何本かヤシの木を足しました」

主要なスタッフは、照明担当のジェラード・モルケンシン、キーグリップのロブ・ハーロウ、Aカメラ・ステディカムのオペレーターのマシュー・フライシュマン、Bカメラのオペレーターのアイリーン・タイラーとトシロー・ヤマグチ、第1カメラアシスタントのケビン・エイカーズとダグラス・デュラン、第2カメラアシスタントのコーネリア・クラッパーとクリストファー・カファロ、フィルムローダーのジョシュア・ボーテとジェームズ・ディーン・ドラモンド、そしてカラリストのCompany 3のティム・プールでした。

「そのままの映像は青みがあったので、自然な肌のトーンに戻すために少し調整しました」とヴィンセントは説明します。「影と背景は青いトーンのままにしました。ラーシュ・ツンビヨルクの写真はすべて冷たくて簡素なので、それに合わせたのです」。主要なシーンのいくつかはストーリーボードが用意されました。「事前にショットリストを用意し、幸運なハプニングのために固めないままにしておきました。アリソン・ジャネイとヒュー・ジャックマンと一緒に仕事をして素晴らしかったのは、2人が常に登場人物になりきっており、テイクのたびに毎回新しいものを吹き込んでくれることでした」

ヒュー・ジャックマン主演のダークコメディ、『バッド・エデュケーション(2019)』 Image courtesy of HBO.

ヴィンセントが個人的に気に入っているのは冒頭のショットです。「フランク・タソーンがトイレから出てきて廊下を通り、ステージ裏を抜けてステージに行くまでを追う長いステディカムでの移動です。群集が彼に歓声を上げるところが映り、カメラがさっと回って彼を映します。かつてよりもフィルムで撮影される映画が多くないため、独特の感じがして、ストーリーを語ることができるフィルムがもたらす印象は素晴らしいものでした。特に、本作のような映画は、キャラクターとその表情が肝心です。フィルムはその点、完璧です。私はフィルムを存続させ、尊重し、視覚的なストーリーテリングのツールとして使用することに非常に関心を持っています。できる限りサポートしたいですね」

(2020年5月1日発信 Kodakウェブサイトより)

『バッド・エデュケーション(2019)』

 Amazon Prime Videoチャンネル「スターチャンネルEX DRAMA&CLASSICS」にて配信中

​ 製作年: 2019年

 製作国: アメリカ

 原 題: Bad Education

​ 公式サイト: https://www.star-ch.jp/channel/detail.php?movie_id=28836

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