2021年 2月 15日 VOL.171

コダック 35mm、65mm、65mm IMAXのフィルムフォーマットで撮影された『ワンダーウーマン 1984』が、純然たる女性ヒーローの姿を描き出す!

ワンダーウーマン 1984』より、ガル・ガドット演じる主人公ダイアナ=ワンダーウーマン (C)2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics

コダック 35mm、65mm、IMAXの各フォーマットで撮影された『ワンダーウーマン 1984』は、冷戦時代のアメリカの行き過ぎた消費者主義を描いており、投げ縄を操るアマゾン族の戦う女神、ダイアナが持つ温もり、愛、生まれ持った善良さを発しながら、純然たる女性ヒーローの姿を描いています。

この活気とアクションに満ちた冒険は、第一次世界大戦を舞台にした2017年の『ワンダーウーマン』の続編になります。『ワンダーウーマン』は、パティ・ジェンキンスが監督を務め、撮影監督のマシュー・ジェンセン(ASC)が35mmフィルムで撮影し、見事、8億2100万ドルという興行収入を上げました。

新作のためにジェンキンスとジェンセンは再びタッグを組み、今回もガル・ガドットがダイアナ・プリンス/ワンダーウーマン役を演じました。『ワンダーウーマン 1984』には、クリス・パイン、クリステン・ウィグ、ペドロ・パスカル、ロビン・ライト、コニー・ニールセンも出演しており、劇場と配信で公開された後、最初の2週間で1億3000万ドル以上を売り上げました。また、噂によると、ワーナー・ブラザースはすでにシリーズ3作目の企画を進めているそうです。

『ワンダーウーマン 1984』より、ダイアナ役のガル・ガドット(左)とバーバラ役のクリステン・ウィグ (C)2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics

舞台は1984年、ダイアナ・プリンスはワシントンD.C.のスミソニアン博物館で文化人類学者として働き、目立たない生活を送る傍らで、正体を隠しつつ、ワンダーウーマンとしてひそかに犯罪と戦っていました。

しかし彼女は、熱核による世界的な大災害を引き起こしかねない計画を阻止するために、自らの内なる強さ、知恵、勇気を奮い立たせなければならなくなる一方、凶悪な敵、チーターとも戦いを繰り広げます。混乱の中でダイアナがまったく予期していなかったことが、、、驚いたことに、かつて死に別れた恋人、スティーブ・トレバーが戻ってきたのです。彼は1作目の終わりで吹き飛ばされた、第一次世界大戦時の優秀なスパイです。

前作と同様、『ワンダーウーマン 1984』は全編35mmフィルムで撮影されましたが、さらに壮大な効果を出すために、65mm 15パーフォレーションのIMAXで撮影された素晴らしいシーンが2つあります。ダイアナが幼少期に過ごしたのどかな故郷である伝説の島、セミッシラでの高揚感ある冒頭のアクションシーンと、映画を締めくくる冬のラストシーンです。

『ワンダーウーマン 1984』の撮影監督 マシュー・ジェンセン(ASC) Photo by Clay Enos. (C) 2018 Warner Bros. Entertainment Inc.

「『ワンダーウーマン』がこれほど大きな商業的成功を収めるところを見られて心が躍りましたし、とても驚くべきことでした」とジェンセンは言います。ことの始まりは、35mmフィルム作品『フィルス』(2013年、監督:ジョン・S・ベアード)での彼の仕事ぶりがジェンキンス監督の目を引いたことでした。

「ですが、興行の数字以上に、1作目の文化的影響と人々の共感の声が一番目を見張ったうれしい驚きでしたね。これこそ、パティと私が『ワンダーウーマン 1984』の計算に組み込んだことでした」

ジェンセンはこう続けます。「パティは初めからその点を明確にさせつつ、ワンダーウーマンは真実と誠実さの砦なのだという大きな視野と本質的な精神にこだわっていました。まったく違った見え方、感じ方がする美が彼女の希望であり、あまり皮肉っぽくなく、そして最近の多くのアクション大作映画のようにそれ自体を意識していないものを生み出したいと考えていたんです。彼女は色鮮やかで楽しいものを求めていました。1970年代や1980年代初めの大ヒット映画のような感じの楽しい体験をね」

『ワンダーウーマン 1984』より、スティーブ・トレバー役のガクリス・パイン (C)2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics

インスピレーションを得るため、ジェンセンは多数のスティーヴン・スピルバーグ作品や、『9時から5時まで』(1980年、監督:コリン・ヒギンズ、撮影:レイナルド・ヴィラロボス(ASC))、『天国から来たチャンピオン』(1978年、監督:ウォーレン・ベイティ/バック・ヘンリー、撮影:ウィリアム・A・フレイカー(ASC))といった作品など、当時の映画を参考にしました。

加えて、ジェンセンとジェンキンス監督は、美術デザイナーのアリーヌ・ボネットと衣装デザイナーのリンディ・ヘミングと共に、当時のファッションの写真を調べました。アリーヌ・ボネットとリンディ・ヘミングは、2人とも1作目に続いて本作にも参加しています。「ネオンを取り込んだ豊かなパレットを持つ映像で、色彩の点でそういったルック(映像の見た目)がどう作用するのかを見られるのです」とジェンセンは言います。

「1作目では、もっと冷たく、彩度の低いルックを維持することが課題で、時には照明や最終的なグレーディングで映像の色味を引き出すよう試行錯誤しなければならないこともありました」と彼は振り返ります。「でも今回はまったく逆でした。アリーヌもリンディも非常に才能ある人たちで、素晴らしいセンスと目の持ち主なんです。私は2人の方針に従い、セットや衣裳デザインの鮮やかで明るい質感や素材が、まばゆくカラフルな背景の照明で引き立つようにしました。その背景照明は、たびたび本作の他のロケーションやステージの照明の配置と組み合わされました」

『ワンダーウーマン 1984』より、バーバラ役のクリステン・ウィグ (C)2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics

「実際、背景と衣装に色を差し込ませたおかげで、私は本作のスターたちを美しく照らすことに集中でき、彼女たちを可能な限り魅力的に見せることができたのです。ですが、本当にガルやクリステンという天性の輝きを持つ主役がいれば、これは難しいことではありません」

『ワンダーウーマン 1984』の35mmの主要な撮影は2018年6月13日に始まり、ワシントンD.C.や、バージニア州北部のアレクサンドリアのランドマーク・モールで4週間行われました。ランドマーク・モールは取り壊しのために閉鎖したショッピングモールで、今は店舗がほぼ見られず、本作で62店舗が当時の世界に蘇りました。

7月中旬には大西洋を渡り、ワーナー・ブラザースのリーブスデン・スタジオに建てられたセットとロンドンのロケーションで4週間撮影を行いました。2018年9月から10月にかけ、スペイン南部のアルメリア、さらにカナリア諸島のフエルテベントゥラ島、テネリフェ島でも撮影が行われました。ここでは映画冒頭のセミッシラでのアクションシーンが、65mm IMAXフィルムフォーマットで撮影されました。

『ワンダーウーマン 1984』の撮影現場にて、IMAXカメラを構える撮影監督 マシュー・ジェンセン(ASC) Photo by Clay Enos. (C) 2018 Warner Bros. Entertainment Inc.

「『ワンダーウーマン 1984』がアナログフィルムでの制作になるのは疑いようがなく、確実なことでした」とジェンセンは断言します。「パティはフィルムの力を信じているのです。フィルムは今もなお、信じられないほど素晴らしい質感を持つ力強いメディアです。フィルムの映像は美しく、俳優たちの見栄えもよくなりますし、時代物の映画にはデジタルよりもはるかにマッチしています」

「ワイドスクリーンの35mm映像は間違いなく、壮大な視覚的インパクトをもたらします。でも、65mm IMAXフィルムフォーマットも組み入れて1段レベルを上げることになった経緯は、進化の過程の一部だったんです。『ワンダーウーマン』では70mmのプリントを作ったのですが、これは部分的には『ダンケルク』(2017年、監督:クリストファー・ノーラン)に向けて劇場に準備を整えておいてもらうためでもありました。『ダンケルク』では、ホイテ・ヴァン・ホイテマ(FSF、NSC、ASC)が65mm IMAX(15パーフォレーション)と65mm(5パーフォレーション)のラージフォーマットフィルムのカメラを使って撮影しています」

「第1作での、35mmのDIグレーディングで仕上げた70mmプリントの出来栄えを振り返って、パティと私はより大きなフィルムフォーマットで『ワンダーウーマン 1984』を撮影すれば面白いのではと思い、全編を65mm 5パーフォレーションで撮影することを検討しました」

「ですが、いろんな国の様々なロケーションでの撮影という物流面での複雑さ、そしてすでに『TENET テネット』のホイテと『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』のリヌス・サンドグレン(FSF、ASC)で共有されている、存在する少数の65mmフィルムカメラの取り合いになってしまうという現実があったため、私たちがラージフォーマットフィルムを使って全編を撮影するのは難しかったんです」

『ワンダーウーマン 1984』の1シーン (C)2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics

しかし、ジェンセンの説明の通り、代替案がありました。「プロデューサーのチャールズ・ローヴェンが、本作の一部を65mm 15パーフォレーションのIMAXカメラで撮影してみるのはどうかと提案してくれたのです。彼は過去に『ダークナイト』(2008年)、『ダークナイト ライジング』(2012年)(共にIMAXカメラを用いてウォーリー・フィスター(ASC)が撮影)に携わっており、IMAX社の人々と良好な関係を築いていました。そこで、私たちはロサンゼルスのワーナー・ブラザース・スタジオのバックロットでIMAXのテスト撮影を行ったのです。非常に壮大で素晴らしい仕上がりになったので、IMAXで撮影したいシーンの選別に取りかかりました」

この創造的かつ協力的な組み合わせの結果、ジェンセンとジェンキンス監督は、『ワンダーウーマン 1984』のアクション満載のセミッシラの冒頭シーンとラストの冬のシーンを65mm IMAXに1.90:1のアスペクト比で撮影し、それ以外のストーリーは35mmにワイドスクリーン2.39:1で撮影することになりました。

IMAX MSM 9802カメラ、さらに、ジェンセンが駆使する50mmおよび80mmプライムレンズといった様々な専用レンズがIMAXから提供されました。パナビジョンが本作の35mmパートのためにパナフレックス・ミレニアムXL2カメラと多種のプリモレンズを用意し、ジェンセンは27mm、40mm、65mmをメインのレンズとして使用しました。また、パナビジョンはジェンセンに、IMAXシーン中の会話部分用にパナビジョンSphero 65レンズを装着した65mm 5パーフォレーションカメラを提供しました。パナビジョンレンズの第一人者であるダン・ササキ氏が、均一なルックと雰囲気を出せるように3セットのレンズを個々に調整しました。

『ワンダーウーマン 1984』のIMAX撮影現場にて、撮影監督 マシュー・ジェンセン(ASC)(左)とパティ・ジェンキンス監督 Photo by Clay Enos. (C) 2018 Warner Bros. Entertainment Inc.

「IMAXの撮影は初めてで、短期間で覚えていかねばなりませんでした」とジェンセンは認めます。「IMAXのチームとの広範囲にわたるやり取りに加え、ラリー・フォン(ASC)、そして、ザック・スナイダーとデボラ・スナイダーにも『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(2016年)でIMAXフィルムフォーマットを使った際の経験について話を聞きました。さらに、ホイテは親切に、重量のあるカメラの最適な移動のさせ方、フィルムマガジンのランタイムの短さ、技術上の厄介な様々な問題、そしてお気に入りのレンズなど、65mm IMAXの撮影に関する自身の見解を助言してくれました。また、IMAX MSMのカメラはガタガタとミシンのような音を立てる可能性があるので、同録のシーンを撮影することなど考えないこと、そういった会話のシーンには65mm 5パーフォレーションの方が向いていることをアドバイスしてくれたのです」

フィルムの感光乳剤選びについて、ジェンセンは『ワンダーウーマン』で使用したのと同じ、3種類のコダック VISION3フィルムを使いました。

「私はフィルムの質感が本当に好きで、俳優の顔を撮影するのも容易です。デジタルよりも寛容なんですよ」と彼は言います。「その高い感度と柔軟性をもたらすダイナミックレンジから、暗めの屋内の大部分と夜の屋外の全シーンはコダック VISION3 500T カラーネガティブ フィルム 5219で撮影しました。500Tは肌のトーンをきれいに表現してくれますし、全体的な彩度に温かな鮮やかさがあります。日中のシーンは、50D 5203と250D 5207の2タイプのデーライトフィルムに分けました」

『ワンダーウーマン 1984』より、ダイアナの少女時代を演じるリリー・アスペル (C)2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics

ジェンセンは、映画冒頭のダイアナの故郷、セミッシラの65mm IMAXのシーンの50Dの質感を特に意識したそうです。「このパートは大胆でカラフルなものにして、肌のトーンを美しく表現したい、フエルテベントゥラ島の自然光を最大限活用したい、と考えました。IMAXでの50Dは、その細かな粒子感と豊かな色彩によって、本当に鮮やかで華麗な映像を生み出してくれました。また、50Dは感度が低いフィルムですが、これはつまり、NDフィルターを装着とか、アシスタントたちがあれこれ触る過程を減らし、それによってIMAXカメラに機械的な問題が生じるリスクも減らせるということなのです」

「250Dはより感度が高いため、イギリスの屋外での撮影中に空が灰色で曇っている時や、撤収直前に撮影を延長しなければならなかった時など、ピンチの状況で役立ちました。50Dと同様、250Dも色を大事にしてくれて、フレーム内のHMIとタングステンのどちらの照明にもうまく反応します。このフィルムが大活躍したので、仕上がりにとても満足できました」

イギリス、スラウに拠点を置くシネラボが35mmのネガの現像を行い、Company 3が4Kスキャンとデイリーのグレーディングを行いました。65mm IMAX 15パーフォレーション、および65mm 5パーフォレーション素材の現像は、ロサンゼルスのフォトケムで行われました。最初のIMAXフィルムの2Kデイリーのスキャン、それに続く選別した素材の8Kスキャンは、素材量が多いため、フォトケムとIMAXで分担しました。

『ワンダーウーマン 1984』より、ダイアナ役のガル・ガドット(左)とスティーブ・トレバー役のガクリス・パイン (C)2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics

アナログフィルムによるプロダクションでの経験について、ジェンセンはこう言います。「セットの空気が引き締まるので、フィルムでの撮影は楽しいですね。カメラの中で動いているフィルムはとても貴重なものなのだという感覚があるんです。だから全員がベストを尽くします。スタッフからキャストまで、カメラが回ると独特の集中した雰囲気が生まれます。テイクを撮り、休憩し、リセットして、必要であればやり直す。私が思うに、セットでカメラがただ作動しているだけのデジタルは、現場での作業慣行にいくらかずさんさを生んでいます。良い仕事に繋がるとは思えません」

「それに、大抵セットから離れたところにあるモニターでいろいろと判断するのではなく、自分の目でシーンがどう照らされているかを確かめ、レンズを通して照明を感じる方が好きなんです。デジタルの撮影だと、どれだけ最善を尽くしても、気が付けば必ずモニターやビデオ・ビレッジに駆け戻っています。フィルムで撮影している時の方が、現場にいること、プロセスに関わっていることをより実感できます」

本作で一番大変だったことを尋ねると、ジェンセンはきっぱりと言いました。「全てですね。長期間のスケジュール、4カ国での撮影、IMAXカメラの扱いの難しさ、終盤のワークフロー。この作品全てが挑戦でした」

「続編なので、この作品にいろんなものが懸かっており、今回はさらなる成功を収めなければならないことは誰もが分かっていました。でも、みんなとても楽しんでいましたし、私はスクリーンに映った出来栄えが気に入っています。続編の制作が進むことになったら、3作目も当てたいですね」

(2021年1月14日発信 Kodakウェブサイトより)

ワンダーウーマン 1984

   製作年: 2020年

 製作国: ​アメリカ

 原 題: Wonder Woman 1984

​ 配 給: ワーナー・ブラザース映画

​ 公式サイト: https://wwws.warnerbros.co.jp/wonderwoman/