2021年 6月 21日 VOL.177

『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』で、美しく、ゾッとするような映像をコダック35mmフィルムで作り上げる

『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』の1シーン (C) 2019 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

撮影監督のポリー・モーガン(BSC、ASC)がパラマウント・ピクチャーズの『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』でフィルムに戻ってきます。

モーガンは、フィルムで撮影をするのは久しぶりだったのですが、パラマウント・ピクチャーズの『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』でのフィルムへの回帰は「素晴らしい喜びだった」と語っています。

モーガンはこう明かしています。「実用面で言うと、露出計を持ってセットを歩き回り、DITテントにこもってモニターで露出を確認しなくてもいいのは非常にすがすがしかったですね」。彼女が撮影監督を務めた最近の作品には、FX/マーベル・テレビジョンの『レギオン』シリーズやノア・ホーリー監督作『ルーシー・イン・ザ・スカイ』などがありますが、最後に35mmフィルムで撮影したのは、FXの『アメリカン・ホラー・ストーリー』シリーズの追加撮影を行った2016年でした。

「フィルム撮影のリズムと秩序によって、キャストとスタッフにとても健全な集中力が生まれるんです」と彼女は言います。「そして、その結果として、『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』はホラーでありながら、デジタルでは実現しにくいノスタルジックなルックで美しく魅力的な映像になっています」

『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』の撮影監督 ポリー・モーガン(BSC、ASC、左) Photo by Jonny Cournoyer. (C) 2019 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

ジョン・クラシンスキーが監督を務め、シャルロッテ・ブルース・クリステンセン(DFF)が35mmフィルム撮影した『クワイエット・プレイス』(2018年)の続編については、1作目の興行的成功を受けて2018年4月に話が持ち上がりました。『クワイエット・プレイス』は約2,000万ドルの予算で3億4,090万ドルという驚異的な興行成績を収めました。

今回の続編は、クラシンスキー監督が脚本と監督を担当しており、エミリー・ブラント、ミリセント・シモンズ、ノア・ジュプらが前作から引き続き出演し、キリアン・マーフィとジャイモン・フンスーが新たにキャストに加わりました。クラシンスキー監督はフラッシュバックのシーンで少しだけ出演しており、再びリーを演じています。

2018年にヒットした『クワイエット・プレイス』は、親について、そして親は子供たちを守るために何をするのかについての息をのむドラマ作品でしたが、『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』では、エヴリン一家が外の世界の恐怖に直面し、沈黙の中で生き残りをかけて戦う姿を描いています。未知の世界に踏み出すことを余儀なくされた彼女たちは、間もなく、砂の道の向こうに潜む脅威は、音で狩りをする目の見えない爬虫類のような生物たちだけではないことに気づくのでした。

『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』の撮影現場にて Photo by Jonny Cournoyer. (C) 2019 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

「重要な課題は、続編が1作目と同じように視覚的に魅力あるものに見え、感じられるようにすることでした。2本立てで見る人がいても、すべての要素が流れるような1つの作品だという感じにするためです」とモーガンは言います。「しかしこの映画では、一家の世界を広げること、特に彼女たちと共にダイナミックかつスリルある数々のアクションシーンを経ていくことにも重点を置きました」

広範囲にわたるテストの後、モーガンはTシリーズのアナモフィックレンズを使い、パナビジョンのミレニアムXL2 35mmカメラで撮影しました。このレンズは1作目で使用したCシリーズのレンズに合わせるため、また、低照度での性能とクローズフォーカスの能力を最適化するために調整されていました。

彼女は、夜のシーンやステージでの撮影など、上映時間の約75%を占める本作の大部分の低照度のシーンにはコダック VISION3 500T カラーネガティブ フィルム 5219を選び、日中の屋外や一部の屋内のシーンでは250D 5207を使用しました。フィルムの現像はロサンゼルスのフォトケムで行われました。

(左から)マーカス(ノア・ジュプ)、リーガン(ミリセント・シモンズ)、エヴリン(エミリー・ブラント)の3人が『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』で未知の世界に挑む Photo by Jonny Cournoyer. (C) 2019 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

「本作において、500Tと250Dの組み合わせは非常に相性が良く、2つの作品を自然に繋いでくれました」とモーガンは語ります。「500Tが暗闇の中で捉える映像は目を見張るものがあります。皆さんが思っているよりはるかに広いラチチュードがあり、暗部を深く掘り下げて映すことができるのです。”足“に充分なレンジがあり、ハイライトが美しく収まります。フィルムならではですね」

『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』の撮影セットにて、主役を務めるエミリー・ブラント (C) 2019 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

例として、照明と撮影で最も困難だった状況の1つが「死のチューブ」というあだ名で呼ばれた炉のセットです。「棺桶のようなものでした。中に座ると、頭が天井に当たるんです」とモーガンは声を大にして言います。「5人の俳優とカメラが中に入ると、照明を当てるのがとても難しく、私の露出計は大抵0.7を指していました。しかし、500Tは光が当たっている前景の俳優たちを見事に捉え、その捉え方も人間の目のように非常に自然でした。他のあらゆるデジタルのセンサーにも負けていません」

彼女はこう続けます。「デジタルはフィルムよりもラチチュードが広いといった技術的な発言がよく聞かれますが、それは決して真実ではありません。かなり暗い状況で撮影を行なって、限界までネガを増感したのですが、フィルムはきれいに映し出してくれました。6段以上ハイライトが飛んだ状況が何度かありましたが、心配する必要はまったくなかったのです。ハイライトは収まり、ディテールを保ってくれたので、素晴らしい仕上がりになりました」

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『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』の撮影現場 Photo by Jonny Cournoyer. (C) 2019 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

モーガンは250Dを「とてもきれい」と評しています。「自然に見えますし、特にグリーンの色再現が美しいんです。デジタルカメラで撮影すると、映したものが人工的なクロマキーグリーンに見えてしまいますが、250Dは違います。製鋼所から暑い夏の日の木漏れ日の中に一家が出てくるシーンでは、250Dは木の葉の色や強い日差しを忠実に再現して捉えてくれました」

前作から進化した点は、カメラがアクションを追う方法にあります。「脚本にはダイナミックな動きとアクションがふんだんに盛り込まれていました。ジョンは常にカメラを動かし続け、長い“一発撮り”を作ることでリズムと緊張感を表現し、普通の生活が突如としてまったく違う危険なものになる様をすべて同じショットの中で見せたいと考えていました」

モーガンは、“たくさんの複雑な演出”と彼女が表現するものでカメラに活力を与えたのですが、数台の追跡車両を用意し、ジブ、クレーン、ステディカムなどさまざまなものに取り付けたカメラを搭載して全速力で走行しました。街の中心部で起きた、生物による最初の襲撃がフラッシュバックされる始めの20秒ほどのアクションシーンでは、ボルボのルーフを外し、モーションコントロールアームとミニリモートヘッドを備えたスライディングリグを設置しました。これにより、カメラは車のフロントガラスとリアガラスの間の風景を自由にパンしたりチルトしたりすることができ、同時に俳優の恐怖に満ちた演技を撮影することもできました。

「『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』の制作は簡単ではなく、冒険でもありましたが、最終的にはとても楽しかったです」とモーガンは締めくくります。「フィルムでの撮影は大好きですし、フィルムが現実離れした冒険的なストーリーテリングを支えてくれたと思います」

(2020年3月9日発信 Kodakウェブサイトより)

クワイエット・プレイス 破られた沈黙

   2021年6月18日より全国公開

 製作年: 2021年

 製作国: ​アメリカ

 原 題: A Quiet Place Part II

​ 公式サイト: https://quietplace.jp/