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2025年 7月 31日 VOL.247

撮影監督ジョヴァンニ・リビシが、スリル満点のストーリー展開が魅力のJT・モルナー監督作『ストレンジ・ダーリン』をコダック 35mmカラーフィルムで鮮やかに捉える

『ストレンジ・ダーリン』の主人公レディ役を務めるウィラ・フィッツジェラルド Ⓒ Miramax. All rights reserved.

JT・モルナーが脚本・監督を務め、撮影監督ジョヴァンニ・リビシがコダック 35mmフィルムで撮影した『ストレンジ・ダーリン』は、人間同士のつながりや関係性が持つ複雑さに迫ります。時系列が交錯する非線形の全6章からなる物語は、主人公のレディ(ウィラ・フィッツジェラルド)と、彼女と敵対するデーモン(カイル・ガルナー)の一風変わった行きずりの一夜と、それを取り巻く出来事を通じて2人の姿を描き出していきます。

本作は第3章の追跡シーンから衝撃的な幕を開けます。モノクロから徐々にカラーに切り替わる中で、連続殺人犯が逃走中であることが示唆され、次に何が起こるかわからない期待感とキャラクターが物語を動かします。緊迫感と巧みなどんでん返しによって、本作は章ごとにゾクゾク感と不安を増幅させていきます。モルナーの演出とリビシの撮影技術によって、観客はまるで見慣れた道を歩んでいるかのような錯覚をおぼえ、そして見事に裏切られるのです。

『ストレンジ・ダーリン』の変則的なストーリー展開や色彩の操り方について、モルナー監督はこう語っています。「この作品のテーマは人間の行動における例外です。ルール通りではなく、例外こそが物事を面白く予測不能にします。キャラクターを何とか現実的に保ちながら、観客の思い込みをあえて覆す手法を取りました。常に物語のゴールはスリルのある鑑賞体験であり、観客の予想を裏切り続けることでした」

『ストレンジ・ダーリン』の撮影現場にて、監督のJT・モルナー Ⓒ Miramax. All rights reserved.

本作は、俳優でもあるリビシが初めて撮影監督を務めた長編作品であり、脚本・監督のモルナーにとっては長編2作目となります。彼らのキャリアに対する期待や想定を覆すように、『ストレンジ・ダーリン』制作の長い道のりは、準備やポストプロダクションに予想以上の時間がかかるなど、完成までに予期しない事態や困難もありました。それにもかかわらず、監督と撮影監督が共有する揺るぎないビジョンにより、観客にとって鮮烈かつ面白くてたまらない作品となっており、2023年のカメリメージ映画祭で撮影監督デビュー部門にノミネートされるなど、観客と批評家双方の注目を集め続けています。

友人を介して出会い、映画とアナログフィルムへの情熱という共通項を通じて親交を深めたモルナーとリビシは、お互いのフィルムメーカーの好みが似通っていたことがインスピレーションとなり、『ストレンジ・ダーリン』の視覚的アプローチを練りながら独自のルックを追求していきました。Panavision Bシリーズのルックを備えた1960〜70年代のイギリス映画に傾倒するリビシは、フレディ・フランシス、デヴィッド・ワトキン、ダグラス・スローカム、ジョセフ・ロージーなどのフィルムメーカーに引き付けられるといい、とりわけ『召使』(1963、監督:ジョセフ・ロージー)について言及しました。

「結局のところ、それは何か変わったことに挑戦して、ある特定の時代精神を画一化したスタイルから脱却するということについてでした」とモルナーは語ります。彼は『赤い靴』(1948、監督:マイケル・パウエル、エメリック・プレスバーガー)や『叫びとささやき』(1972、監督:イングマール・ベルイマン)、『悪魔の臓殖/ザ・デビル』(1981、監督:チャング・リュー・チャット)、『戦慄の絆』(1988、監督:デヴィッド・クローネンバーグ)、『ブルーベルベット』(1986、監督:デヴィッド・リンチ)といった作品をヒントに色彩をコントロールするアプローチを探っていきました。「僕たちのミッションステートメントは、“the blood on the flower bed(花壇の上の血)”でした。さまざまな影響を取り込みながらも、自分たち独自の美学を注ぎ込む…。そうやって僕たちなりのルックを築いていったんです。これは、リビシが撮ってモルナーが監督した作品だということが分かるものにしたいと思っていました」

撮影監督ジョヴァンニ・リビシ(左)とJT・モルナー監督 Ⓒ Miramax. All rights reserved.

リビシは、「JTが言ったように基本的なコンセプトは“花壇の上の血”でしたが、それと同時におとぎ話も意識していました」と説明します。「モルナー監督とは孤独を抱える2人のキャラクターが出会うという設定について話し合いました。彼らは独りぼっちなのです。デーモンは妻とうまくつながれず、レディもまた孤立した人間です。アイデアの1つは、そんな2人をまるでブラックホールの中にいるかのような構図と照明で撮影することでした。黒いトラックの中で彼らは一緒に闇の中にいて、そこで初めて心を通わせます。そして2人がホテルの部屋に入った瞬間、一気に温かみや色彩、人肌の色合いを感じさせるというわけです」

リビシは続けます。「カメラワークもとてもやりがいがありました。(あのシーンは)2人の俳優の生き生きとした関係性がすべてで、2人ともとてもうまく演じてくれました。僕にとっては物語が展開する文脈、すなわち、それがいつ、どこで起こるのかということが重要でした。編集も設定も脚本もすべてが本当に見事でした。(トラックの)エンジンルームをチェーンソーで取り外して、青い美しい光に照らされる2人をワイドな構図で捉えられるようにしようとも考えていましたが、最終的には彼らの邪魔にならないようにする方法を見つけられたと思います。僕は“フレンチオーバー”のようなショットが好きなんです。肩越しにカメラを向けて、ネオンの光が人物のシルエットを照らすような画です」

『ストレンジ・ダーリン』の1シーン Ⓒ Miramax. All rights reserved.

本作のルックのひとつの特徴はもちろん、コダック VISION3の50D、250D、500Tフィルムを使用している点です。Arricam LT、Arricam ST、Aliflex 235&435といったカメラに、Atlas のOrionやCookeのアナモフィックレンズを合わせて撮影した撮影監督のリビシは、フィルムで撮ることに迷いは一切なく、『ストレンジ・ダーリン』にとってそれ以外の選択肢はなかったと語ります。リビシによれば、フィルム撮影はコストがかかると指摘されることがあるものの、実際にはそれほどでもなく、近年デジタルよりフィルムを好むプロデューサーが増えているのだと言います。さらに、フィルム撮影が制作全体に与えた影響についてはこのように語りました。「限られた制作スケジュールの中で映画を撮るという極限状態では、準備不足だとついありふれた選択に走ってしまうんです」

『ストレンジ・ダーリン』より、バーバラ・ハーシー(左)とエド・ベグリー・Jr. Ⓒ Miramax. All rights reserved.

「フィルムで撮るということは、映画を撮る準備をし、目的意識を持って現場に臨むという姿勢そのものであり、駆け引き的なプロセスや不便さに左右されるのとは対極にあると思います」

モルナーも監督の視点からこのように付け加えます。「(フィルムによる撮影は)制作プロセスにとってポジティブな制約を生み出します。僕自身も規律を持って準備し、臨機応変な対応をしなければうまくいかない環境に身を置くことが求められます。それは、現場にいる全員の意識を高めます。彼らがフィルムの回る音を聞き、匂いを嗅ぎ、目の前にあるカメラを見てその存在を認識することで何か尊敬の念のようなものが生まれ、制作プロセス全体に重要性がもたらされます。それはただデジタルカメラで漫然と撮っているときには決して生まれない感覚です」

(2024年10月8日発信 Kodakウェブサイトより)

『ストレンジ・ダーリン』

 (7月11日より全国公開中)

 製作年: 2023年

 製作国: ​アメリカ

 原 題: Strange Darling

 配 給: KADOKAWA

​ 公式サイト:  https://movies.kadokawa.co.jp/strangedarling/

予告篇

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