
2026年 4月 7日 VOL.259
コダック 35mmフィルム × ビスタビジョンで描く『嵐が丘』 ― 撮影監督リヌス・サンドグレンが五感を揺さぶる映画体験を創出

『嵐が丘』より、キャサリン・アーンショウ役の俳優・プロデューサー、マーゴット・ロビー Photo courtesy of Warner Bros. Pictures. Ⓒ 2026 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
エメラルド・フェネルが脚本、監督、製作を務め、スウェーデン出身の撮影監督リヌス・サンドグレン(ASC、FSC)がコダック35mmフィルムとビスタビジョンフォーマットで撮影した『嵐が丘』は、禁じられた愛、激しい欲望、そして苦い復讐を情熱的に描いています。フェネルは本作を、観客を刺激し、強い感情を呼び起こすためにデザインされた「原始的なファンタジア」であると表現しています。
この作品は、エミリー・ブロンテによる1847年の同名の古典小説に着想を得ています。マーゴット・ロビーとジェイコブ・エロルディがそれぞれキャサリン・アーンショウ役とヒースクリフ役で主演を務め、ホン・チャウ、シャザド・ラティフ、アリソン・オリヴァー、マーティン・クルーンズ、ユアン・ミッチェルが脇を固めています。
物語は、ヨークシャーの荒野(ムーア)にある暗く素朴な農家、嵐が丘を舞台に、キャシーとアーンショウ家に引き取られた孤児の少年ヒースクリフの波乱に満ちた関係を描いています。2人は子供の頃から離れられない存在であり、深く情熱的な絆で結ばれていたにもかかわらず、キャシーは社会的地位のためにスラッシュクロス・グレンジの裕福な隣人エドガー・リントンとの結婚を決意します。ヒースクリフは失恋と裏切りに打ちのめされて嵐が丘を去りますが、数年後に洗練された富豪として戻ってきます。しかしその胸には、依然としてキャシーへの愛を宿しながらも、アーンショウ家とリントン家に対する容赦ない復讐心を抱いていました。
ワーナー・ブラザース製作の本作は、1億5,000万ドルを超える興行収入を記録しており、サンドグレンの魅惑的で絵画的な撮影手法による壮観な映像をはじめ、スージー・デイヴィーズによるスタイリッシュなプロダクション・デザインやジャクリーヌ・デュランによる衣装デザイン、そしてチャーリーXCXによる情緒的なサウンドトラックを通じて、疼くような欲望の本質を鮮やかに捉えた作品として批評家から賞賛されています。

『嵐が丘』の撮影現場でのエメラルド・フェネル監督・脚本・プロデューサー(左)と撮影監督リヌス・サンドグレン Photo courtesy of Warner Bros. Pictures. Ⓒ 2026 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
本作はフェネルとサンドグレンの2度目のコラボレーション作品となり、前作『Saltburn』(2023)と同じくコダックの35mmフィルムで撮影されました。サンドグレンは、アカデミー賞と英国アカデミー賞(BAFTA)を受賞した『ラ・ラ・ランド』(2016、デイミアン・チャゼル監督)、『くるみ割り人形と秘密の王国』(2018、ラッセ・ハルストレム&ジョー・ジョンストン監督)、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2021、キャリー・ジョージ・フクナガ監督)、そして『ジェイ・ケリー』(2025、ノア・バームバック監督)を含む、長編作品のほとんどをフィルムで撮影してきました。
「エメラルドにとって『嵐が丘』は、禁断の情熱、悲恋、嫉妬、執着、階級闘争、そして復讐をめぐる、史上最高のラブストーリーのひとつを象徴するものでした」と、サンドグレンは製作に関するフェネルとの初期の会話を振り返ります。
「この作品は彼女自身の個人的な解釈であり、主に10代の頃に原作小説を読んだ際に抱いた強烈な感情体験と、当時の彼女の心と想像力を満たしたイメージに端を発しています。原作を忠実に翻訳したり、そのまま語り直したりするのではなく、彼女はこの作品に素晴らしい衣装、プロダクション・デザイン、そして大胆な撮影手法を取り入れることで、キャシーとヒースクリフの破滅的な関係を様式化し、官能的に再構築したいと考えていたのです。また、彼女はこの作品が観客から強烈な感情反応を引き出すことも望んでいました」
サンドグレンはまた、こう明かしています。「スウェーデンの学校のカリキュラムで扱われるような小説ではなかったので、私はこの物語を知りませんでした。本作はエメラルドの個人的なビジョンであったため、私は原作をあえて読みませんでした。彼女のバージョンとは異なるかもしれないものに影響を受けるのを避け、そのビジョンを尊重することが重要だと感じたのです。ですから、私は脚本を読むことを優先し、撮影手法に限らず、彼女がこの作品について語るあらゆることに熱心に耳を傾けるようにしました」

『嵐が丘』の撮影現場にて、(左から)エメラルド・フェネル監督・脚本・プロデューサー、撮影監督リヌス・サンドグレン、俳優・プロデューサーのマーゴット・ロビー、ジェイコブ・エロルディ Photo courtesy of Warner Bros. Pictures. Ⓒ 2026 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
「以前『Saltburn』で一緒に仕事をした経験から、映像の語り手としてのエメラルドは、演劇的な演出や装飾的なディテールを通じて五感に訴えかけ、感情を表現するという点で、極めて“バロック的”であることを知っていました。彼女は美を愛すると同時に、それが醜さとどのように衝突するかということにも関心を持っています。彼女は多くの視覚的な参照資料を用意していましたが、中には楽しくて刺激的なものもあれば、ひどくグロテスクなものもありました」
「しかし、エメラルドは常にアイデアに対してオープンで、構図やライティングを通じた視覚的な表現力という点において、この作品にはほとんど制約がありませんでした。むしろ彼女が目指していたのは、現代的なルック(映像の見た目)を持ちながらも、昔のハリウッド映画のような、スターの魅力に満ちた作品を作ることでした。同時に、絵画のように美しく、表現主義的なスタイルも取り入れたかったのです。視覚的アプローチの基本となったのは、嵐が丘の暗く激しい世界と、スラッシュクロス・グレンジの魅惑的な上流社会を象徴する世界とのコントラストを作り出すことであり、その二つを隔てる風景として、荒涼とした野生のムーア(荒野)が存在します」
このことを念頭に置き、サンドグレンは、1939年のモノクロ版『嵐が丘』(ウィリアム・ワイラー監督、グレッグ・トーランド撮影監督 (ASC))を鑑賞したと語ります。この作品は、感情豊かなロマンティシズムの傑作と評され、ドラマチックな光と影の使用や、ヨークシャーのムーア(荒野)の荒々しい美しさを想起させる雰囲気豊かなスタジオ撮影のセットで知られています。
その他に参考にした作品には、『風と共に去りぬ』(1939、ヴィクター・フレミング監督、アーネスト・ホーラー撮影監督)が挙げられます。パステル調の艶やかな色彩、描き割りの背景、シルエット、そして広がりのある風景描写を取り入れた豪華絢爛なビジュアルスタイルによって、“ハリウッド黄金時代”の美学を切り拓いたと広く認められている作品です。

『嵐が丘』の撮影現場にて、(左から)俳優・プロデューサーのマーゴット・ロビー、ジェイコブ・エロルディ、エメラルド・フェネル監督・脚本・プロデューサー Photo courtesy of Warner Bros. Pictures. Ⓒ 2026 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
さらにインスピレーションを受けた作品には、『叫びとささやき』(1972、イングマール・ベルイマン監督、スヴェン・ニクヴィスト撮影監督)があり、全編を支配する赤の色彩設計、自然主義的ながらも象徴的な照明、そして息苦しいほど濃密なメロドラマ的室内劇の空気感が特徴の作品です。
数多くの芸術的なリファレンスの中で、サンドグレンは、ムーア(荒野)の陰鬱な情感を表現するため、カスパー・ダーヴィト・フリードリヒやヨハン・クリスチャン・ダールといったロマン派画家の作品を参照し、スラッシュクロス・グレンジのルックの参考として、ジャン・オノレ・フラゴナールによるロココ様式の《ぶらんこ》(1767)を取り入れました。
『嵐が丘』の撮影は、2025年1月中旬から3月末にかけて50日以上の日数をかけて行われました。嵐が丘とスラッシュクロス・グレンジの内装および外観は、デイヴィスの監修のもと、スカイ・エルスツリー・スタジオに建設されたセットで撮影されました。
馬車や馬が通るための走路に加え、厩舎や農家そのものを含めた巨大な嵐が丘のセットは、霧や豪雨のエフェクトを用いた撮影を可能にするために建設され、周囲はSoftDrop®と呼ばれる荒れ地を描いたRosco社製の巨大なプリント背景幕で囲まれていました。本作の屋外シーンは、スウェイルデール渓谷やロー・ロウの村を含め、ヨークシャー・デイルズ国立公園で撮影されました。

『嵐が丘』の撮影現場にて、撮影監督リヌス・サンドグレン(左)とエメラルド・フェネル監督・脚本・プロデューサー Photo courtesy of Warner Bros. Pictures. Ⓒ 2026 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
サンドグレンは『嵐が丘』を 1:1.85 のアスペクト比でフレーミングし、メインカメラとして35mm/3パーフォレーションのアトーン・ペネロープを使用しました。さらに、ワイドショットや風景用として8パーフォレーションのボーモント・ビスタビジョンカメラを2台使用しましたが、どちらもパナビジョン・プリモレンズを装着できるように改造されていました。カメラパッケージはロンドンのパナビジョン社が提供しました。
「エメラルドと私は、『Saltburn』の時のように 1:1.33 での撮影を検討しましたが、大スクリーンにはもっと横長の画像の方が良いと感じました」とサンドグレンは語ります。「1:1.85 はクラシックなハリウッド映画を想起させるアスペクト比で、室内や風景の絵画的なフレームを構成するのに適していました」
「私にとってペネロープは無敵です。小型かつ現場でも非常に静かなので、同時録音に適しています。さらに、明るく高品質なファインダーと優れたビデオタップを備えています。加えて、マガジンの交換が簡単で効率的に作業できます。400フィートのマガジンをわずか数秒で簡単に交換できるのです。ペネロープを使用したことで、エメラルドとキャストは私たちの作業を待つことなく、すぐに次のテイクに入ることができました。彼らは私たちがフィルムを再装填していることさえ気づかなかったのです」
映像作りのレシピにおけるビスタビジョンの使用について、サンドグレンは次のように説明しています。「エメラルドは35mm/3パーフォレーションの粒子を非常に高く評価していました。実のところ、当初は65mm/5パーフォレーションでもテストしたのですが、粒子があまりにも細かすぎたのです」
「しかし、俳優たちが画面に小さく映る広大な景観シーンを構成した際にはビスタビジョンを使用しました。というのも、人間の目はフレームの小さな部分に焦点を合わせるため、8パーフォレーションのビスタビジョンのネガの粒子の方がはるかに好ましかったからです。また、ボーモント・カメラはノイズが大きいのですが、そのようなワイドショットではカメラと俳優の距離が離れているため、録音の邪魔になることはありませんでした」

『嵐が丘』より、ヒースクリフ役のジェイコブ・エロルディ Photo courtesy of Warner Bros. Pictures. Ⓒ 2026 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
レンズの選択について彼はこう述べています。「パナビジョン・プリモは以前、『くるみ割り人形と秘密の王国』や『Saltburn』、『ジェイ・ケリー』で使用したことがあるのでよく知っています。シャープでフィルムとの相性も良く、素晴らしいコントラストと奥行き、さらに豊かな色彩を映像にもたらしてくれるのです。微調整やカスタマイズすることもできましたが、もともと自然な美しさと絵画的なルックを備えているので、手を加えずにそのまま使いました」
サンドグレンが選んだ35mmのフィルムストックは、低照度や夜間の屋内、屋外撮影用のコダック VISION3 500T カラーネガティブフィルム 5219と、日中の屋外および一部の屋内用の200T 5213でした。露光されたネガは、イギリスのシネラボ社で現像および4Kスキャンされました。デイリーはドイチン・マルゴエフスキーが統括し、最終的なDIグレーディングはCompany3のマット・ウォーラックによって行われました。
「コダック VISION3シリーズのすべてのストックをテストしました」とサンドグレンは言います。「それらがどのような結果をもたらすかを確認し、物語に最も適したものは何かを柔軟に考えることは重要であり、常に興味深いプロセスです。また、標準現像に対し、ラボでの増感/減感現像の効果も検証しましたが、最終的にその手法を採用することはありませんでした」
「私はコダックの200Tと500Tのタングステンタイプのストックを好む傾向があります。どちらも素晴らしい自然なルックを提供し、互いの相性も良いからです。200Tは500Tよりも少しコントラストが強く、屋内のシーンでうまく機能しました。非常に暗い夜や、炎やキャンドルの光で照らされたシーンはすべて500Tで撮影しました。私の定番ストックです。私は大抵、両方のストックを1段露出オーバーで撮影しました。200Tを100ASA、500Tを250ASAとして設定しましたが、ラボでは通常の現像を行いました。これにより、4Kスキャンに最も適した理想的な状態になり、DIグレーディングに持ち込むことができました」
自分好みのワークフローについて掘り下げながら、サンドグレンは次のように説明します。「現場でカメラに収めた作品のルックは、日ごとに調整され、維持されました。私のデイリーのカラリストを務めるドイチンは、各シーンのスチールを複数送ってくれて、私が変更する必要があると感じた箇所に極めてシンプルなプリンターライトやプライマリーカラーでの補正を施し、より暖かく/冷たくしたり、より暗く/明るくしたりしてくれました」

『嵐が丘』より、キャサリン・アーンショウ役の俳優・プロデューサー、マーゴット・ロビー Photo courtesy of Warner Bros. Pictures. Ⓒ 2026 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
「基本的に、作品のルックは現場で決まっていたので、製作中に全員が安心感を持つことができました。また、スタート地点がまさに私の期待通りだったので、DIをよりスムーズに進めるのにも役立ちました。あとは、所々でパワーウィンドウを使い、顔や物体、あるいは背景に対してよりターゲットを絞った色補正を施し、全体のバランスを整えるだけでよかったのです」
『嵐が丘』は主にシングルカメラで撮影され、オジー・マクリーンがAカメラとステディカムを操作し、ホルヘ・サンチェスが第1アシスタントカメラとしてサポートしました。グループシーンでのリアクションを捉える際など2台目のカメラが必要な時は、サンドグレンがBカメラを操作し、クロエ・ハーウッドがフォーカスを担当しました。撮影監督のジョー・エケン・トルプは第2班を率い、製作全体を通じてインサートショットを撮影しました。使用したのはペネロープとボーモントのビスタビジョンカメラで、第1アシスタントカメラのハリー・ギャンブルがサポートしました。デイヴィッド・アップルビーがキーグリップを務め、ジャック・フレミングがAカメラのドリーグリップとして貢献しました。
「親密なシーンでは長焦点レンズを使用することもありました。それらのシーンは感情の機微が重要だったため、エメラルドはリハーサルから撮影するのが最善だと強く感じていました。“ダンスフロア”ドリー(地面に板を敷いた上に載せたドリー)でカメラを動かすこともあり、150mmのレンズをT2に設定して撮影することはフォーカスプラーにとって非常に困難な挑戦でしたが、彼らは見事にそれをやり遂げてくれて、そのかげで撮影はとても順調に進みました」
ライティングに関して、サンドグレンは兄弟の照明技師、デイヴィッドとイアン・シンフィールドと再びチームを組みました。「私は以前、デイヴィッドと『くるみ割り人形と秘密の王国』、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』、『ジェイ・ケリー』で一緒に仕事をしました。そして『Saltburn』ではデイヴィッドとイアンの両方と仕事をしました。彼らは非常に知識が豊富な素晴らしい照明技師であり、緊密に連携しながら仕事を進め、しかも彼らの背後には非常に優れたチームがついていました」
「準備期間中、デイヴィッドが中心となって照明プランの立案を支えてくれました。照明グリッドを整理し、すべてが正しくセットアップされているかを確認してくれたのです。彼は、以前から決まっていた別作品の仕事のために撮影の中盤で現場を離れなければなりませんでしたが、イアンが照明技師として私を支えてくれました。その引き継ぎは完璧なものでした」

『嵐が丘』より、キャサリン・アーンショウ役の俳優・プロデューサー、マーゴット・ロビー(左)とヒースクリフ役のジェイコブ・エロルディ Photo courtesy of Warner Bros. Pictures. Ⓒ 2026 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
嵐が丘の農家と敷地の広大なセットに加え、本製作の注目すべき特徴は、荒野の背景と空の景色にRosco社の巨大なコットン製のプリント背景幕SoftDrop®を使用したことです。背景幕は前面と背面から照明を当てられるように慎重に吊り下げられ、サンドグレンの特別なリクエストで、下端の広い部分に隙間が設けられていました。彼はこの隙間から雰囲気のある照明効果を追加して、地平線の燃えるような夕焼けなどを再現しました。
より不穏で荒れた天候の雰囲気を醸し出し、空と背景幕を継ぎ目なく融合させるために、サンドグレンはステージ上部に従来の白いシルクではなく、グレーのシルクを使用しました。雨や霧のエフェクトとあいまって、グレーのシルクを使うことにより、セット全体の上部にあるスタジオのガントリーから放たれる照明器具の光に回折による光沢が加わりました。
「Rosco社のSoftDrop®とグレーのシルクを、照明や雰囲気を演出するエフェクトと組み合わせて使うのが本当に気に入りました。通常は背景幕の上に白いシルクを張りますが、しっくりきませんでした。そこで、Rosco社のSoftDrop®の上部と色が一致するグレーのシルクを使ったらどうなるかと考えたのです。照明を調整し、シーンを霧で満たすと、一種のインカメラVFXの手法のようになり、その結果はとてつもなく良いものでした」
照明への基本的なアプローチについて、サンドグレンは次のように述べています。「この作品は、情熱や執着がどのように感じられるものなのか、そして人がいかにして圧倒されるのかということを表現しなければなりませんでした。ですから重要だったのは、様々な場面に合わせて異なるムードを確実に作り出せるようにすることにありました」

『嵐が丘』より、イザベラ・リントン役のアリソン・オリヴァー(左)とキャサリン・アーンショウ役の俳優・プロデューサー、マーゴット・ロビー Photo courtesy of Warner Bros. Pictures. Ⓒ 2026 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
「例えば、嵐が丘のセット周辺では、カメラが向く可能性のある全方向にあらかじめ照明を当てておきました。LEDと従来の照明器具を併用しましたが、主に、Creamsource VortexやCineo Quantum Studioを用い、キーライトとして5K、10KのHMI、さらに12K Maxi Bruteのオープンフェースのタングステンパーライトを組み合わせました。さらにグレーのシルクの上にも多くのライトを配置しました」
「どのライトでも調光卓から調光や消灯を行うことができ、各シーンに合わせて寒色または暖色の光を使い分けながら、光の形を整え、彫刻するようにコントロールできました。スラッシュクロス・グレンジの日中の屋外や屋内シーンでは、レールに乗せた2台の100K SoftSunをステージの両側に配置しました。これにより、単一の光源からセット全体を照らしつつ、正確な太陽の角度を簡単に調整することができました。大抵はSoftSunにフルCTSのジェルを貼り、色味をタングステン電球に合わせました」
「また、可能な限り本物の火やキャンドルの光を使って照らしました。私は本物の燃える炎を好みます。なぜなら、LEDは本物の火の光が持つ色域、特に赤を完全には再現できないからです。より強烈な効果が必要な時は、多数の小型タングステン電球を調光卓から個別に点滅させて補いました」
サンドグレンは映画製作が環境に与える影響を常に意識していると語り、『Saltburn』の時と同様に、排出量を抑えるためにサステナブルな電力を導入しました。多くのロケ地の電力供給にGreen Voltage社の機材を活用しています。

『嵐が丘』より、キャサリン・アーンショウ役の俳優・プロデューサー、マーゴット・ロビー(左)とエドガー・リントン役のシャザド・ラティフ Photo courtesy of Warner Bros. Pictures. Ⓒ 2026 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
プロダクション・デザイナーのスージー・デイヴィーズとの協業について、サンドグレンは次のように述べています。「彼女が設計した嵐が丘の中庭、厩舎、農家などのセットは実に素晴らしいものでした。雨の日も晴れの日も、セットの中や周囲をカメラで動き回れたことは、視覚的なストーリーテリングに真の力強さをもたらしました。また、スージーが低い天井、狭い部屋、そして可動式の壁が無いなど、現実的な制約を踏まえて農家を設計しようとしてくれたことを嬉しく思いました。そうすることで、リアルな閉塞感のある空間にいる感覚が得られることが分かっていたからです」
「また、スラッシュクロス・グレンジの壁の光沢や、豚の血と尿が飛び散った嵐が丘の石畳など、異なる質感や表面に光がどのように反射するかについて、彼女と一緒に探っていくのも実に興味深い経験でした。さらに、私が光源を計画しやすいように窓の位置を調整してくれたり、暖炉から雰囲気のある光を反射させるために光沢のある金属製ミラーを用意してくれたりと、スージーの柔軟な対応に感謝しています」
サンドグレンはこう締めくくります。「『嵐が丘』の制作もまた、エメラルドとの素晴らしい協働の機会となりました。この作品では、視覚的に感情を表現することにおいて制約がありませんでした。フレーミング、構図、ライティングの面で自由度がとても高く、創造性を存分に発揮できました」
「このような物語は、フィルムでこそ撮ることができるのだと思います。フィルム特有の粒子や質感、ハイライトやシャドウのディテール、そして色彩の美しい表現力など、映像に特別な魔法をもたらしてくれます。そして今回もまた、本当に魅力的な映画体験を観客に届けてくれました」
『嵐が丘』
製作年: 2026年
製作国: アメリカ
原 題: Wuthering Heights
配 給: 東和ピクチャーズ/東宝
公式サイト: https://wutheringheights-movie.jp/