
2026年 9月 15日 VOL.270
コダックの65mmフィルム IMAXフォーマットで全編を撮影、撮影監督ホイテ・ヴァン・ホイテマがクリストファー・ノーラン監督の大ヒット作『オデュッセイア』に圧倒的な映像体験を創出

Photo by Melinda Sue Gordon. Ⓒ Universal Studios. All Rights Reserved.
クリストファー・ノーラン監督がホメロスの叙事詩を大スクリーン向けに映画化した『オデュッセイア』は、映画撮影史における画期的な作品となりました。全編がIMAXフィルムカメラで撮影され、すべてのフレームがコダックの65mmフィルム、15パーフォのIMAXフォーマットで撮影されています。これは、最初から最後まで同フォーマットを使用した初の長編劇映画となりました。
ノーラン監督と長年タッグを組んできた撮影監督ホイテ・ヴァン・ホイテマ(ASC、NSC、FSF)が撮影した本作は、伝統的な映画製作の手法とカメラおよび照明技術の進歩を組み合わせ、さらに世界興行収入でも桁外れの成功を収めています。こうした点から、2027年の賞レースでも有力候補として間違いなく名前が挙がることでしょう。
ストーリーは、3000年近く前に生まれたホメロスの時系列に沿わない物語構成を受け継いでいます。この作品では、戦いで傷ついたイタケの王オデュッセウスが、トロイア戦争後、神話上の怪物、巨人、セイレーン、魔女たちに遭遇しながら、10年にわたる危険な帰郷の旅を続けます。そして、妻ペネロペに求婚する者たちを策略で出し抜き、故郷を取り戻そうとします。

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マット・デイモン、トム・ホランド、アン・ハサウェイ、ロバート・パティンソン、ルピタ・ニョンゴ、サマンサ・モートン、ジョン・レグイザモに加え、ゼンデイヤとシャーリーズ・セロンが出演する本作は、没入感と度肝を抜くほどの野心的な映像表現が5つ星の評価を受け、プレミアからわずか3週間で興行収入10億ドルの大台を難なく突破しました。本作への熱狂ぶりはすさまじく、IMAXおよび70mmフィルムプリントによる特別上映や、未明の時間帯に行われる深夜上映の前売り券が、わずか数秒で完売しました。本作の影響で、ホメロスの関連書籍やオーディオブックの売り上げも増加しています。
『オデュッセイア』は、『インターステラー』(2014)、『ダンケルク』(2017)、『TENETテネット』(2020)、『オッペンハイマー』(2023)に続く、ヴァン・ホイテマにとってノーラン監督との5度目のコラボレーションとなります。これらの作品はすべて、コダックの65mmフィルムの5パーフォのフォーマットとIMAX(15パーフォ)フォーマットをさまざまに組み合わせて撮影されています。『オッペンハイマー』は、IMAXおよびパナビジョンのSystem 65mmフィルムカメラ用に特別に製造されたダブル-X ネガティブフィルム 5222を使用し、65mmでモノクロ撮影された初の作品となりました。また、作品賞、監督賞、撮影賞を含む7部門でアカデミー賞を受賞しました。
「クリスは、プリプロダクションに入る約1年前まで、このプロジェクトのことを私には徹底して伏せていたんですよ」とヴァン・ホイテマは打ち明けます。「彼の家に招かれ、文字どおり脚本を渡される1秒前に、“そういえば、『オデュッセイア』なんだ”と告げられました」

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ヴァン・ホイテマは、学生時代からギリシャ神話や伝説について多少の知識があったことを認める一方で、こう言います。「『オッペンハイマー』の時と同じように、その題材に深く入り込むんですよ。ホメロスの『オデュッセイア』は豊かで神秘的な作品です。クリスの脚色には、ホラー、陰謀、危険、ロマンスが含まれていて、スリリングな長編映画になるだろうとすぐに分かりました」
「作品全編を65mmフィルムのIMAX(15パーフォ)フォーマットで撮影することは、クリスが長年抱いてきた夢でした。でも、これまでの作品を通じて、カメラが重いために機動性が制限されることや、カメラの動作音が大きく同時録音が難しいことが分かっていたんです。そこで私たちは基本的に、セリフの撮影には65mm(5パーフォ)を使い、(観客に状況を説明する)エスタブリッシング・ショット、アクションシーン、大規模なスペクタクルシーンには65mmのIMAX(15パーフォ)フォーマットに切り替えるという方法を採用していました」
「私が初めて脚本を読んだ時点で、クリスはすでに『オデュッセイア』を全編IMAXで撮影すると決めていました。彼は早い段階から私をプロジェクトに加えました。クローズアップのシーンを含むクリスのアプローチでは、IMAXカメラを使った技術的な設計や製作、さまざまな課題の解決に時間を要することが分かっていました。それは主に、作品全編をIMAXフォーマットで撮影するうえで、セリフの同時録音が最大の障壁となっていたからです」

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ヴァン・ホイテマはこう付け加えます。「クリスと私が、撮影・上映フォーマットとしてIMAX(15パーフォ)のフィルムを愛していることは周知の事実です。他のどのフィルムやデジタルフォーマットも、その解像度と深度には及ばないんです。IMAXは観客により強烈な体験をもたらし、まるで登場人物のすぐそばにいて、本当にアクションの中に入り込んでいるような没入感を味わわせてくれます。とはいえ、目標は最初から最後までIMAXで撮影することでしたが、この作品の製作を開始した時点では、それを実現できるという確信はまだ持てていませんでした」
ヴァン・ホイテマは、彼とノーランがアンドレイ・タルコフスキーの『アンドレイ・ルブリョフ 動乱そして沈黙(第一部) 試練そして復活(第二部)(1966年、撮影監督ワジーム・ユーソフ)や黒澤明の『乱』(1985年、撮影監督 斎藤孝雄、上田正治、中井朝一)といった歴史大作に加え、レイ・ハリーハウゼンによる特殊効果を取り入れたギリシャ神話映画を鑑賞したことを振り返ります。
「私たちは、自分たちの作品が参考作品の映像をそのままなぞったり、他の映画製作者の特定の映像スタイルを模倣したりすべきだとは決して考えていません。むしろ大事なのは、映像が感情的にどう感じられるかということです」とヴァン・ホイテマは語ります。「私たちが常に目指してきたのは、幅広い古典的・伝統的な映画制作技法を用い、CGIやデジタル処理を最小限に抑えながら、映像を世界観の中に根付かせ、リアリティーのあるものにすることです。こうした観点から、『アンドレイ・ルブリョフ』は、その途方もない野心と、それを限られたアナログ技術でどのように実現したかという点で、私たちにとって興味深い作品でした。『乱』は、壮大な家族の物語であり、そのスケール、広がり、戦闘描写に私たちは刺激を受けました」
「私たちは基本的に、絵画や写真などの静止画を参考にすることはありません。そうしたものには、多くの場合、強い解釈が伴っているからです。私たちが目指しているのは、知的にではなく、体験として映像と結びついてもらうことです。まさに観客を私たちの世界に引き込み、その世界を信じてもらうことなのです」

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『オデュッセイア』の製作では、モロッコ、ギリシャ、イタリア、スコットランド、アイスランド、そしてアメリカを舞台に、6ヶ月にわたり91日間の撮影が行われました。ノーランは、神話の物語を表現するとともに、オデュッセウスの旅がどれほど困難なものだったかを伝えるため、実在するロケーションが持つ物質感と、肌で感じられるようなリアリズムを積極的に取り入れようとしました。ロケーション撮影で実現できなかったものは、カリフォルニアのサウンドステージにセットを建てて撮影しました。
本作の画期的な取り組みの中心となったカメラは、引き続き実績と信頼のあるIMAX MSM 9802でしたが、ノーランとヴァン・ホイテマは、その動作音の問題を克服しなければなりませんでした。通常、IMAXカメラは耳障りになるほど音が大きく、撮影現場での大がかりな防音対策や、ポストプロダクションでのADR(アフレコ)を行わなければ、セリフシーンを同時録音で撮影することはほぼ不可能です。
音量を許容できるレベルまで下げ、撮影現場でのセリフの同時録音を阻む音の壁を打ち破るため、IMAX社はカメラ用の遮音性を備えた「ブリンプ」を特注で製作しました。

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「私たちは『TENET テネット』でIMAX社と騒音低減技術の開発を始めましたが、結局十分に完成することはなく、必要としていたレベルでは機能しませんでした」とヴァン・ホイテマは説明します。「その理由を理解するには、双方で多少の分析が必要でした。そこで今回は、ブリンプについてもっとシンプルな指示を出し、少し異なるアプローチを取ることにしました。私たちは彼らに、カメラの操作性や撮影でどう使うかについては一切気にせず、必要なこと、つまりカメラの音を除去することだけに徹したものを作ってほしいと頼みました。操作性や実際の撮影現場でどう使うかは、私たちの側で考えるべきことでした」
結果的にこのアプローチが功を奏し、IMAX社は数ヶ月かけて3つのブリンプのプロトタイプを開発しました。そのうちの1台が最終的に採用されました。
「IMAXカメラは様々な周波数の音を発します」とヴァン・ホイテマは説明します。「重くて厚い素材に吸収させて除去する必要がある音もあれば、反射させて除去する必要がある音もあります。そこで、いわばサンドイッチケーキのように層を重ねる原理を取り入れたデザインに行き着き、彼らはほぼ完全に防音されたボックスを製作してくれました。これによって初めて、クローズアップでのセリフの同時録音が可能になったのです。私たちはこのブリンプを主にIMAX MSM 9802カメラに使用しましたが、まさに画期的なものでした」

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ブリンプは騒音の問題を解消するのに役立った一方、そのかさばる大きさによって、カメラの近くに立つ俳優同士の自然な目線のやり取りが妨げられたり、遮られたりしました。この問題を解決するため、カメラクルーはカメラの両側に精密な鏡を角度をつけて取り付けました。これにより、俳優たちはかさばるブリンプの周りからのぞき込んだり、テープの目印や物を目標にして演技したりする代わりに、鏡を見て、レンズの光軸近くに映る共演者の姿を確認できるようになったのです。
「俳優に、テープの印や物に向かって表情や感情を向けるよう求めるのは酷なことです」とヴァン・ホイテマは振り返ります。「鏡を設置したことで、俳優たちは本当に目と目を合わせることができ、それによって演技の流れと深みを保つことができました」
注目すべき点として、『オデュッセイア』は、IMAX社で長年にわたり最高品質責任者を務め、数十年にわたるIMAXの開発で重要な役割を果たしたデイヴィッド・キーリー(1948~2025年)に捧げられています。また、本作での彼の具体的な協力により、Keighley(キーリー)IMAXカメラが使用されることになりました。従来機より軽量かつコンパクトなKeighley IMAXカメラは、再設計されたフィルム搬送システムを採用し、従来のモデルより大幅に静かな動作を実現しました。
「悲しいことに、デイヴィッドは撮影終了後にこの世を去りました」とヴァン・ホイテマは悼みます。「彼は完成した作品を観ることはできませんでしたが、妻のパトリシアとともに、私たちが『オデュッセイア』で撮影したフィルムの一コマ一コマを見届けてくれました。ラージフォーマット映画製作の擁護者として、彼はこれからも人々の記憶に残り、惜しまれ続けることでしょう」

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撮影用のレンズは、カリフォルニア州ウッドランドヒルズにあるパナビジョンで、ダン・ササキが特別に開発しました。
「ダンは私たちがいつも頼りにしているレンズ開発の第一人者です」とヴァン・ホイテマは熱く語ります。「彼は長年にわたり何度も、撮影で直面する具体的かつ実際的な問題の解決に力を貸してくれ、私たちがIMAXで撮影するための機能的で美しいレンズを作り上げてきました。しかし、このフォーマットで撮影する場合、レンズが美しいかどうか、あるいはフォールオフなどについて議論するというより、いかに光学的な妨げを減らすかが重要になります」
「例えばクリスと私は、従来は被写体に近づけなかったレンズでも、もっと俳優に寄って撮りたいと常に考えています。また私は、実際の炎を使って撮影するときには常にTストップを開けたいですし、暗闇で撮影したいときには明るいレンズが必要です。ダンは常に、こうしたニーズを念頭に置いてレンズを設計してきました」

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レンズの光学的な特性についてさらに詳しく、ヴァン・ホイテマはこう明かします。「私たちが使用するレンズセットの焦点距離は限られています。それは開発が難しいからではなく、私たちが好むレンズや、IMAXフォーマットで最もよく機能するレンズが分かってきたからです」
「例えば、非常に長いレンズでは鮮明な映像を作ることはできますが、映画館で観る位置からすると、その遠近感には納得感がありません。すべてが非常に圧縮され、没入感が損なわれることがあるからです。いくつかのワイドレンズでも同じで、むしろ金魚鉢の中をのぞいているような感覚になります。ですから、私たちが何度も繰り返し使っているお気に入りは50mmと80mmで、35mm、40mm、110mmといった焦点距離も、これらのレンズのルック・アンド・フィール(見た目や印象)をベースにしています」
IMAX上映館の映写室にあるプラッターに載せられた『オデュッセイア』のきつく巻かれたプリントは、重さ約600ポンド(約272kg)、コダック 70mmフィルムの長さにして約11マイル(約17.7km)に及びます。また、本作の製作では、15パーフォの65mmネガフィルムを200万フィート(379マイル/約610km)以上使用し、これらのフィルムはバーバンクのフォトケムで現像・処理されました。

撮影に際して、ヴァン・ホイテマは、日中の屋外と明るい屋内のシーンにはコダック VISION3 250D 5207を、低照度のシーンや夜のシーンには500T 5219を選びました。
「250Dと500Tは、私にとってスイートスポットにあたるフィルムストックです。私はその粒状構造が大好きで、実用面ではまさに私の主力となるフィルムです。レンズ、NDフィルター、デーライト、そして夜のシーンでの照明の使い方は、どちらのフィルムストックの感度特性の範囲内に収まります。どちらのストックも汎用性があります。例えば、250Dならマジックアワーにもう少し長く撮影を続けることができ、すぐにASA感度を上げる必要もありません」
『オデュッセイア』は、アクションシークエンスで2台目のカメラが導入された場合を除き、主にシングルカメラで撮影されました。ヴァン・ホイテマは、製作期間中の90%は自身でカメラを操作したと見積もっています。肩に担いで撮影するほか、さまざまなカメラ移動機材やグリップ機材を使用し、キース・デイヴィスがフォーカスを担当しました。ジェームズ・ゴールドマンはステディカムのオペレーターを務め、アクションシーンや格闘シーンではBカメラも担当しました。カイル・カーデンがグリップチームを率い、スコット・スミスがIMAXカメラの技術者を務めました。
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「IMAXカメラは、既製品ではないという点でF1レーシングカーのようなものです」とヴァン・ホイテマは語ります。「多くの負荷や負担にさらされるため、常に最高の動作状態を保つには、継続的なメンテナンスが必要です」
「私たちは、あらかじめ撮影用のセットアップを施した6台のIMAXカメラ本体を、常に使用できる状態にしていました。内訳は、セリフシーン用のAカメラとして優先的に使用するブリンプ付きのIMAX MSM 9802、Keighley IMAXカメラ、ステディカム用に1台、ハイスピード撮影用にMk IVを1台、そして残る2台は、異なるリグやクレーンに搭載してVFXやアクションショットに使用しました」
もちろん、ブリンプ自体は大きいだけでなく、約300ポンド(約136kg)と重く、カメラを含む機材一式は400ポンド(約181kg)弱になりました。ヴァン・ホイテマはこう指摘します。「IMAXフォーマットでは誤魔化しがききません。大スクリーン上で目立ってしまう可能性のある振動からカメラを隔離するため、頑丈なグリップ機材やカメラ支持機材が必要でした。例えば、カメラのバランスを取り、しっかりと固定するために特別に設計された、ヘビーデューティー仕様のCartoni社Magnum HPなどです」

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「巨大なカメラとブリンプを持ち運んでいるからといって、カメラの動きが硬い作品にはしたくありませんでした。むしろその逆で、カメラは軽やかで、自由に動き、ダイナミックに感じられるものにしたかったんです」
「クリスと私は、長年にわたって数々の作品をともに手がける中で、さまざまな状況でIMAXカメラを運用する方法を学んできました。その過程で、解決策やさまざまな工夫を見つけ、肩に担いだり、ステディカム、ドリー、クレーン、テクノクレーン、アーム、ジブを使ったりしながら、陸上、海上、そして空中でもIMAXカメラを実用的に使えるようにしてきました」
「いくつかの水上シーンでは、ロシアンアームを備えた特殊な船を使用しました。この船は、石油掘削装置への物資供給や洋上風力タービンの保守に使われる非常に強力な船で、おかげで私たちは非常に機動的に動くことができ、狙ったアングルから撮影することができました。また、『ダンケルク』の水上シークエンス用に私たちが開発したHydroFlex社のスプラッシュバッグとスプラッシュハウジングも使用し、水中撮影のスペシャリストであるスコット・ホフマンがカメラ操作を担当しました」

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『オデュッセイア』では、照明にも新たな展開がありました。それが、ガファーのアダム・チェンバース(ICLS)とヴァン・ホイテマの専門R&D企業、Honeycomb Modular社が共同で設計、開発、製造したPyrahedron(ピラヘドロン)LEDライトタイルです。
PyrahedronタイルにはLEDセルが密に配置されており、六角形のモジュール式であるため、組み合わせることでさまざまなサイズの半球状ドームを構成することができました。照明卓プログラマー兼調光卓オペレーターのノア・シェインが、本物の炎の光が持つ色合いやランダムな揺らぎを再現した特別なメディアを用意し、それをタイルに流すことで、Pyrahedronドームはノーランとヴァン・ホイテマに、トロイア陥落のシーンのような夜のシーンや、360度のカメラワークを実現する新たな可能性をもたらしました。
「本物の炎の光を大規模に使用することは不可能だったでしょう。まして、俳優やスタントエキストラ、SFXチーム、その他のスタッフの安全衛生に及ぼす影響を考えれば、なおさらです。また、市販の既製品として手軽に入手できる適切な照明器具もありませんでした」とヴァン・ホイテマは語ります。

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「Pyrahedronタイルで作ったドームは軽量で、簡単に移動でき、カメラ内で立体的に配置・構成することも容易でした。クリスと私が非常に大きな利点だと感じたのは、360度撮影できるセットを作れたことでした。ライトを丘の上に設置したり、木々の下に置いたり、あちこちに燃える火を配置したりすることで、画にスケール、広がり、奥行きを与えることができました。それでいて、実際の火を撮影したときに生まれる質感やリアリティーを失うこともありませんでした。ノア・シェインは、windy、mellow、gentleなど、さまざまなモードを開発しました。Pyrahedronが生み出す影は、光が踊るように揺らめく様子まで非常にリアルに見えました。また、ライトは本物の炎の光とも非常に自然に融合し、私たちはその人工的な演出をリアルなものとして受け入れることができました」
デイリー、カラータイミング、編集といったポストプロダクションのワークフローにも、アナログの工程が取り入れられました。編集チーム向けにはデジタルスキャンが行われた一方、映写による確認のため、コダックの35mmフィルムにプリントされたデイリーも制作されました。
「私たちは常に、プリントされたフィルムのデイリーを映写して確認し、ラボで従来のカラータイミングを行って、最終マスターを完成させました」とヴァン・ホイテマは語ります。「DCPは、ラボでフォトケミカル処理によってカラータイミングされたフィルムプリントから作られています。DIグレーディングの作業では、シニア・デジタルカラーリストのコスタス・セオドシウとともに、右側にアナログのプリントフィルムを映写し、そのルックを左側のデジタル版に再現していきました。文字どおり、アナログ技術がもたらしたものを模倣したのです」

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「一般的にはDIを使って、映像を極めて均一な仕上がりにすることができます。でも、クリスと私は、何もかもが均一であることには一度も興味を持ったことがありません。本来、フォトケミカルのグレーディングは、その場でカラータイミングを行わざるを得ないため、容赦がなく、誤魔化しの利かないプロセスです。撮影現場で生じた露出のミスを、ウィンドウやセカンダリー、その他の見た目を整えるための小細工を使って覆い隠すことはできません。私にとっては、そのプロセスが当たり前だった数十年前の時代に戻るようなものです。当時の撮影監督たちが、どのように撮影技術を極めていたのかを本当によく理解できます。私はそこがとても気に入っています」
『オデュッセイア』の撮影経験を振り返り、ヴァン・ホイテマは次のように締めくくります。「すべての瞬間を楽しみました。クリスとともに映画制作の限界を押し広げ続けられることは、私にとって光栄であり、幸せです。IMAX、パナビジョン、そして創意工夫に富んだ私のチームとともにブリンプの製作に取り組み、ボックスやカメラに必要なさまざまな機材を組み付けていく作業は、信じられないほど刺激的でした。しかし、撮影ユニットの移動は、特に遠隔地やアクセスが困難な場所では、ロジスティック面で非常に大がかりな作業でした」
「世界中でこれほど多くの人々がこの作品を観て、私たちが意図した通りの体験を楽しんでくれたことを大変嬉しく思います。私はキャリアのすべてを通じて、フィルムでの撮影を続けるために闘ってきました。フィルムは私が最も愛するメディアであり、観るうえでも本当に最も美しいものです」
『オデュッセイア』
(9月11日より全国公開中)
製作年: 2026年
製作国: アメリカ
原 題: The Odyssey
配 給: ビターズ・エンド/ユニバーサル映画
公式サイト: https://odyssey-film.jp/




